いよいよ、窒素同化まできました。アンモニアなどの単純な物質を利用して窒素を含んだ有機化合物を合成すること、これが窒素同化です。
ここでは社会人として知っておくべき知識がメジロ押しです。
前回までの記事で、空気中の窒素分子(N2)が窒素固定と硝化とを経て硝酸イオン(NO3-)になり、ようやく植物に取り込まれたのち硝酸還元されてアンモニウムイオン(NH4+)になるまでを紹介しました。紆余曲折ありましたが、これで晴れて植物が利用する準備が整ったのです。
アンモニウムイオンはアミノ酸のアミノ基(-NH2)のもとになります。深い話は抜きにすると、アンモニウムイオンを有機物にくっつけてあげれば有機窒素化合物が出来上がります。
この話は教科書では植物の細胞内で起こる話として教わりますが、我々動物でも話は一緒です。特に肝細胞の中で同じようなことがおきています。
アンモニウムイオンはまず、アミノ基(-NH2)としてグルタミン酸に運ばれます。絵で描いて、やっと納得いったんですが、頭に載せて運ぶ感じです。
グルタミン酸とは、動物がひときわ「旨い!」、と、感じる、御存じ「味の素」の主成分となるアミノ酸です。うま味が強いということはそれだけ身体が欲していることを意味しているのですが、タンパク質を作るという働きの他にもアミノ基を運ぶという、重要な任務を任させているのです。
ATPの助けを借りてアミノ基を受け取ったグルタミン酸はグルタミンと言う別のアミノ酸になります。
グルタミンはグルタミン酸合成酵素の働きを受け、頭に載せたアミノ基を、αケトグルタル酸に渡します。
αケトグルタル酸はクエン酸回路を構成する化合物の一つです。グルタミン酸と比べると、なんと、アミノ基がないだだけです。カルボキシ基の部分は水溶液中で酸性を示すので、こうした物質は一般に有機酸と呼ばれます。呼吸の中間産物がアミノ基を受け取ってアミノ酸に変化することは、ある種のアミノ酸は糖代謝の中間産物を利用して、体内で合成できることを意味しています。
ここから、様々な有機酸にアミノ基が受け渡されて、様々な有機窒素化合物が作られることになります。アミノ基をリレーするときに働く酵素はアミノ基転移酵素(トランスアミナーゼ)と呼ばれています。
例として、ここでは、アラニンはピルビン酸から作られることを紹介しました。
ピルビン酸にアミノ基を転移させてアラニンに変える酵素は、アラニンアミノ基転移酵素Alanine transaminase(略してALT)、または、グルタミン酸ピルビン酸転移酵素Glutamic Pyruvic Transaminase(略してGPT)、と呼ばれています。
ALT(GPT)は、高校生にはまだ分からないけど、成人にとってはなじみの深い検査項目の名前になっております。我々の肝細胞にはALTが多量に含まれているため、血中のALT濃度が増加することは、肝細胞が破壊されていることを裏付けるのです。
まだ若い高校生もやがて成人になり、血液検査の数値に一喜一憂する大人に成り果てる運命です。そのとき、ALT(GPT)の数値を見て、「ああ、そういえば高校生の時に習った生物の教科書にのっていたあの酵素か…」、くらいは思い出せるようになって欲しいものです。
長かった、窒素固定から硝化、硝酸還元、窒素同化に至る説明も、ようやく終いです。
もし、ここまで読んでくれた人がいたら、お疲れ様です。
今日は一日中ブログを書いていましたのでいささか私も疲れました。下にまとめを載せて、今日はもう寝ます。ありがとうございました。