原核細胞と真核細胞その2 -真核細胞の種類と起源- | はし3の独り言

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 真核細胞は皆、大型で細胞小器官が発達しており、この点で細菌などの原核細胞と区別されます。動物細胞と植物細胞、そして菌類(真菌)細胞がこれにあたります。

 

  「生物基礎」では。今いる真核細胞の種類について、共生説に基づいて説明しています。共生説とは、真核細胞のもとになった生物がバクテリアを細胞内に取り込んで細胞小器官として定着させたという考えです。

 

 さて、「生物基礎」では真核細胞のうち、動物と植物細胞について構造と働きを学ぶのですが、なぜか取り上げられていない菌類細胞もここで一緒に覚えておくことがお奨めです。キノコやカビなどが菌類にあたりますが、名前が細菌と似ているので、あとで細菌が話題に出てきたとき、一緒にしてしまう恐れがあるからです。

 

 

 そこで、真核細胞3兄弟という呼び名を作りました。光学顕微鏡レベルの細胞模式図では、菌類細胞まで含め、ほとんど同じなのです。真核細胞の構造を覚えるときには違いに注目したほうが良さそうですね。

 

 今では動物細胞から植物細胞と菌類細胞が派生したことが分かっているので、長男は動物細胞です。次男、三男の関係は不明です。

 

 

  並べてみると一番単純なのは動物細胞です。まず周囲に細胞壁がありません。細胞壁なんて、原核細胞のバクテリア(真正細菌)にもアーキア(古細菌)にもあるのに。

 

 私はかつて、「植物細胞には細胞壁がある」、と教わり、そのように理解し、生徒にもそう教えて来ましたけど、どうやら的外れでした。「動物細胞は細胞壁を持たない」、という理解の方が正しいですな。

 

 ちなみに植物細胞の細胞壁と菌類細胞のそれとは化学組成が全然違いますので、後から派生的に作られるようになったと見るのが一般的です。

 

 

 一方で3兄弟に共通しているものもあります。呼吸をしてATPをたくさん作ることで有名なミトコンドリアです。元々は寄生性の好気性細菌だったと噂のミトコンドリアです。この世に真核細胞が出来たときからいたので、今でも全ての真核細胞に広く存在すると思われます。

 

 ミトコンドリアは動物細胞だけでなく、植物細胞にも菌類細胞にもある。この認識は、生物基礎を学んで行く上でとても重要になります。

 

 こいつが一緒にいるおかげで、使えるエネルギー(ATP)が増え、複雑で多様なタンパク質を合成する代謝経路を構築する余力が生まれたようで、多細胞生物になることが出来た生物は皆、真核細胞からできています。 

 

 

 

  植物細胞で見られる葉緑体ですが、これもまた元々は独立したラン細菌(シアノバクテリア)の一種が原始的な動物細胞に取り込まれたと目されており、様々な状況証拠から疑う人はいません。

 

 真核細胞のうち、植物細胞にしかないから、植物は動物より後で現れたという説明になります。

 

 ちなみに、ラン細菌はいろいろなところで引っ張りだこのモテキャラです。

 

 ラン細菌を細胞内に住まわせている生きものは多く、地衣類(菌類の一種)にも共生しています。樹木の表面で青カビみたいに生えているウメノキゴケがその例です。他にもウミウシの仲間に、食べた藻類の葉緑体を略奪して自分の細胞内に取り込み、有機物のご相伴にあずかるものがいます。ミドリムシ(動物)など原生生物でも同様なたくさん例が見られます。

 

 そもそも細胞の世界では、取り込んだ細胞と共生すること自体、珍しいことではないのですね。そのうちヒトの細胞も葉緑体を宿せるようになるのでしょうか。

 

 

 

 僕らの先祖は細菌のようなものだったんだという考えを受け入れ、共生説のあらすじを押さえると、なんとなく今ある真核細胞のキャラクターがイメージできるようになります。そうなればしめたものです。細胞の種類を理解したことになりますから。