環境教育の大切さが叫ばれるようになって久しいのですが、まだまだ世間に浸透しているとは言えません。
環境保全の最大の障害は、生態系についての無知と無関心です。
日本人の悪い癖だと思うんですけど、有名だったり珍しいものはありがたがるくせに、身近なものに価値を見いだしません。おかげで、ちょっとあたりを見渡すだけで、海の向こうから渡ってきた外来種に、日本の固有種達が居場所を奪われることを許してしまっています。
今回は、蓮華寺池の調査を通して、生徒達に環境保全について考えて貰うための活動を企画しました。
講師としてお呼びしたのは、我らが静大の加藤英明先生。環境教育に取り組んでいます。この先生に有名になってもらえば、日本の姿は変わってくるんだろうな。応援しましょう。
今回は一日かけて加藤先生の活動を見学させていただきました。
加藤先生が狙いを定めてタモを一度入れると、中にはおびただしい数のオタマジャクシがいっぱい。
みんなウシガエルのオタマジャクシです。
ウシガエルは夜になるとモーモー鳴くので、みなさん声だけは聴いたことがあるんじゃないでしょうか。愛らしいといえば愛らしいのですが、実は特定外来生物 です。大型で、口に入るものはなんでも食べてしまうので、こいつが侵入した池では、日本のカエルやトンボなどの小動物が姿を消していきます。
かつては食用蛙として輸入されましたが、食用としての価値が下がると日本のいたるところで野に放たれたために定着してしまい、日本の環境に大きな負担になっています。いまは駆除の対象です。
日本には外来種についてかなり痛い歴史があって、官主導でわざわざ日本に引き入れてしまっております。その後、一般市民の生態系についての無知も手伝って放逐が後を絶たず、いまではいたるところで侵略的外来種を目にします。
今後、環境教育を充実させ、将来の日本の自然を守ることが、理科教育に携わる人間の責務です。頑張りましょう。
固有種の生存を脅かし、生態系を混乱に導く外来種を侵略的外来種と言いますが、例をあげると枚挙にいとまがありません。とりわけ有名なのはミシシッピアカミミガメです。
かつてお祭りやペットショップでミドリガメと呼ばれる幼体が大量に売られました(いったい国は何をやっていたのでしょう)。今でも売っているのかなあ。
小さいときは手のひらサイズでかわいらしくても、成長すると50~60cmになってしまい、一般の家庭では持てあまします。
当然のように川や池に放逐され野生化しました。今回の蓮華寺池の調査でもたくさん目にしましたが、日本の固有種達と競合するので、それだけ日本のカメが数を減らしていくことを意味しています。
ミシシッピアカミミガメは、特定外来生物より危険度が低いとされる要注意外来生物になっています。
本来は特定外来生物に指定されるべきレベルなんですが、ミシシッピアカミミガメが特定外来生物に指定されると許可なく飼うことが禁止されるので、全国津々浦々の家庭にいるミシシッピアカミミガメが処分に困り、一斉に放逐される怖れがあります。想像するだけでおそろしいです。
蓮華寺池には、日本固有の在来種も多く見られました。
下の写真はスッポンが罠にかかったところです。
このくらいの大きさだと、噛まれた日にはヒトの指なんて軽く持ってかれるそうです。くわばらくわばら。
そして、クサガメも見られました。日本の固有種が見つかったことは、蓮華寺池の環境が、まだ取り返しのつかないところまでは悪化していないことを示しています。
身近な環境に一般市民が目を向け、環境保全の意識が十分に高まるまで、頑張っていこうと思います。
活動に参加した生徒は、もうミシシッピアカミミガメを野に放つなんてことはしないことでしょう。少しだけどこの地域の生態系の保全に貢献できたでしょうか。
加藤先生、これからも頑張りましょう。今回は本当にありがとうございました。