前回の蓮華寺池に続き、栃山川で調査を行いました。最初に断っておきますが、調査の許可を得て実施しております。みだりに生き物を採集することは法律によって禁止されています。
講師はもちろん静岡大学の加藤英明先生、今回も大活躍です。
栃山川自然公園は、かつて蛇行していた河川の名残を利用して作られています。焼津市が頑張って作った自然公園なんですが、あんまり手入れが行き届いているとは言えず、調査をしてみると、外来種が日本の固有種の存在を脅かしていることを象徴する状況がありました。
ジャンボタニシは通称で、和名はスクミリンゴガイといいます。はるか南アメリカのラプラタ川の出身で、例によって食用として輸入されたけれど、煮ても焼いても食えないくらいまずいので、捨てられ、やがて野生化しました。
話だけ聞けば悲劇的な生物なんですけれども、世界の侵略的外来種ワースト100にランクインする強者です。情けは禁物。
外来種だけでなく、日本の昔懐かしい生物もいました。最近はめっきり見かけることが少なくなったトノサマガエルです。
昔はカエルと言えばアマガエル、イボガエル、そしてこのトノサマガエルだったんだけど、市街化が進んだためか、身近から姿を消していました。今日は感動の再会です。久しぶりだね。
他にも、かつて遊んだ懐かしい仲間に会うことができました。メダカやオイカワ、ギンブナにドジョウなどです。40代のおじさんが少年だった頃は、近くの川でたくさん捕まえました。
ウナギもいてびっくり。少年の頃なら家に持って帰りますが、日本の固有種は数を数えた後、採集した地点でリリースします。
茂みではアオダイショウのきれいな抜け殻を発見。よく見ると、めんどくさい時に脱いだ靴下みたいに表裏になっています。
また、大きなスッポンも捕獲。ジャンボタニシを食べてくれる希有な存在です。スッポンは甲羅が柔らかいので軽量で、カメのくせに俊敏に動きます。加藤先生がいなかったら、とても捕まえることはできなかったことでしょう。
蓮華寺池でもスッポンを見たんですけど、他のカメとちがって可愛く思いません。むしろ恐怖の対象です。
首が長いので、うっかり手でつかまえたりしたら、ろくろ首のように頭が伸びてきて確実に噛まれます。そうしたらシャレになりません。噛んだものは放さないことで有名ですから、指は持ってかれる怖れが大きいです。
調査していて分かったんですが、現れる生物種数が少なく、豊かな生態系とはとても言えません。例えば、ヤゴが一匹も見つかりません。
原因と考えられる生物がいます。アメリカザリガニです。特定外来生物にこそ指定されていませんが、侵略的外来種にはちがいありません。
栃山川自然公園では、このアメリカザリガニが大量発生して優占していました。これじゃあ、ヤゴは生き残れないかなってくらいいました。
今回の調査で、ある程度の数が間引かれましたから、栃山川自然公園の川の生態系は少しだけ回復するかもしれません。
もとはといえば、人為的に持ち込まれたものなんですけど、日本中に蔓延し、もはや駆除が不可能なくらいに定着しました。小さい頃は考えもしませんでしたが、この種のおかげで、どれだけ日本の生態系が壊されたかわかりません。
生物に関する無責任と、生態系に対する無知と無関心を、なんとか変えていかないと。すでに日本は、「外来種のるつぼ」、と化しつつあるのです。
自然が次世代に引き継ぐべき財産であるという価値観をみんなで共有した世の中に、早くなるといいですね。