『養生訓』 茶の効用(巻四54) | 春月の『ちょこっと健康術』

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『養生訓』も総論ばかりを読んでいると、養生の大切さはよくわかるものの、なんだか説教臭い感じもして、「じゃぁ、具体的にどうすればいいの?」なんていう気持ちがフツフツと。。。私だけかもしれないけど。ちょっと気分転換に、新茶の時季でもありますし、お茶の話などいかがでしょう。

茶、上代はなし。中世もろこしよりわたる。その後、玩賞して日用かくべからざる物とす。性冷にして気を下し、眠をさます。陳臓器は、久しくのめば痩てあぶらをもらすといへり。母炅、東坡、李時珍など、その性よからざることをそしれり。然ども今の世、朝より夕まで、日々茶を多くのむ人多し。のみ習へばやぶれなきにや。冷物なれば一時に多くのむべからず。

抹茶は用る時にのぞんでは、炊らず煮ず、故につよし。煎茶は、用る時炒て煮る故、やはらかなり。故につねには、煎茶を服すべし。飯後に熱茶少のんで食を消し、渇をやむべし。塩を入てのむべからず。腎をやぶる。空腹に茶を飲べからず。脾胃を損ず。濃茶は多く呑べからず。発生の気を損ず。唐茶は性つよし。製する時煮ざればなり。

虚人病人は、当年の新茶、のむべからず。眼病、上気、下血、泄瀉などの患あり。正月よりのむべし。 人により、当年九十月よりのむも害なし。新茶の毒にあたらば、香蘇散、不換金、正気散、症によりて用ゆ。或白梅、甘草、砂糖、黒豆、生薑など用ゆべし。

茶は太古にはなかったもので、中世になって中国から渡ってきた。その後、人々が賞味して日用に欠くことのできないものとなった。茶は元々冷性であり、気を下ろし、眠気をさます性質を持っている。陳蔵器(ちんぞうき)は、長く飲用すると痩せて脂肪をもらすと言った。母炅(ぼけい)、蘇東坡(そとうば)、李時珍(りじちん)らも、茶の性がよくないと言っている。しかし今の世では、朝から晩まで、毎日茶を多く飲む人が大勢いる。飲むことが習慣になると、身体をいためたりしないのだろうか。茶は冷物であるから、一度に多く飲んではいけない。

抹茶は、それを用いるときに、炒ったり煮たりしないので強い。煎茶は、使用するときに、炒ったり煮たりするのでやわらかい。だから、日頃は煎茶を飲むようにする。食事の後に、熱い茶を少し飲んで食物を消化させ、渇きをいやすのがよい。塩を入れて飲んではいけない。腎を悪くする。空腹のときに茶を飲んではいけない。脾胃を損ねる。濃い茶を多く飲んではいけない。新しく生じた気を損なう。唐茶は性が強い。製造するときに煮ないからである。

虚弱な人や病人は、今年の新茶を飲んではいけない。眼病、のぼせ、下血、下痢などの患いを起こしやすい。正月頃から飲み始めるとよい。人によっては、今年の九月か十月から飲んでも、害はない。新茶の毒に当たった場合は、香蘇散(こうそさん)、不換金(ふかんきん)、正気散(しょうきさん)などを、症状に応じて用いればよい。あるいは、白梅、甘草、砂糖、黒豆、生姜などを用いてもよい。

お茶は、本来冷やす性質であり、気を下げ、眠気をさます。確かに、濃い目のお煎茶をいただくと、顔のほてり感がおさまって、眠気もさめますね。現代科学で言えば、お茶に含まれるカフェインの働きということになりますけど。

そうした性質を考えると、空腹時には飲まないほうがいいし、また飲みすぎないようにしたほうがいいことも納得がいきます。お茶は食後に温かいものをいただくのが一番ですね。「新茶の毒」については、改めて後日考えてみたいと思います。

陳臓器は、唐代の医家で、『本草拾遺』十巻を編纂した人です。母炅については調べてみましたが、わかりませんでした。どなたかご存知でしたらご一報くださいませ。

蘇東坡は、「早起きの功」 にも登場していますが、北宋代の政治家であり詩人・書家であった蘇軾のことです。『黄州寒食詩巻』や『赤壁賦』などを残しています。中国料理の東坡肉は、蘇東坡が豚肉料理について書き遺した詩が元になっているとか。

李時珍は、「酒は天下の美禄」 に出てきました。明代の医家で、『本草綱目』52巻を編纂し、脈法の解説書である『瀕湖脉学』や奇経を考証した『奇経八脉考』などを書き残しています。

春月の『ちょこっと健康術』-すずらん

すずらんが咲きました。北海道でも桜が咲いたそうですね。