『養生訓』 酒は天の美禄(巻四44) | 春月の『ちょこっと健康術』

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今日あたり、お花見に出かけられている方も多いのではないでしょうか。花見の宴は楽しいものです。でも、飲み過ぎには注意してくださいね。


酒は天の美禄なり。少し飲めば陽気を助け、血気をやはらげ、食気をめぐらし、愁を去り、興を発して、はなはだ人に益あり。多く飲めば、又よく人を害する事、酒に過ぎたる物なし。水火の人をたすけて、又よく人に災いあるがごとし。


邵堯夫の詩に、「美酒を飲んで後微酔せしめ」といへるは、酒を飲むの妙を得たりと、時珍いへり。少し飲み、少し酔へるは、酒の禍なく、酒中の趣を得て、楽しみ多し。人の病、酒によって得るもの多し。酒を多く飲んで、飯を少なく食ふ人は、命短し。かくのごとく多く飲めば、天の美禄を以て、却て身をほろぼす也。かなしむべし。


酒は天から与えられた美禄(ごほうび)である。ほどよく飲めば、陽気を助け、血気をやわらげて、食物の消化をよくし、うれいを除き、興を生じて、人にとってはなはだ利益になる。しかし、飲み過ぎると、酒ほど人に害を与えるものもほかにない。水や火が、人をよく助けるが、災いをもたらすこともあるのと同じである。


北宋の学者、邵堯夫(しょうぎょうふ;邵雍)の詩に「美酒を飲んで後微酔せしめ」というのがあるが、これは酒の飲み方として妙をえたものだと時珍が言っている。少し飲んで、ほどよく酔えば、酒による禍もなく、酒のうまさと趣を得て、楽しみが多いものだ。人の病いは、酒によって生じるものが多い。酒を多く飲んで、飯を少ししか食べない者は、命が短い。このように、多く飲んでしまうと、天の美禄といっても、かえって身をほろぼしてしまう。悲しいことである。


どうやら、益軒先生もお酒はたしなまれたようですね。「酒の味と趣」を楽しむ姿勢が見て取れます。それも、『養生訓』の「宴の飲食もひかえめに」 でもおっしゃっていたように、「酒は微酔がよい」ということ。


時珍とは、明の本草学者の李時珍のことでしょう。時珍は、医師でもあり、本草学の集大成といわれる『本草綱目』52巻を27年かけて完成させました。この『本草綱目』、朝鮮・日本に伝わっただけでなく、ドイツ語やフランス語、ロシア語にまで翻訳されたそうです。ちなみに本草学は、漢方薬の原料となる植物を研究する学問。


ほろ酔いの気持ちよさ、そこを超えない程度に、花見酒を楽しみましょう。