5月20日 明治座夜の部 | 歌舞伎好きの手帖

歌舞伎好きの手帖

主に歌舞伎観劇の感想

「三代猿之助四十八撰の内 御贔屓繋馬」

相馬太郎良門/女童熨斗美/小姓澤瀉/番新八重里/太鼓持彦平/傾城薄雲/実は土蜘蛛の精(中村隼人) 桔梗の前(中村米吉) 瀧夜叉姫(市川男寅) 御厨正頼/碓井貞光(中村福之助) 台屋の四郎/卜部季武(中村歌之助) 百足のお百実は藤原秀郷娘千晴(市川團子) 石蜘法印/坂田金時(市川青虎) 仲居お万(市川寿猿) 熊手のお爪(下村青) 猪熊入道(嘉島典俊) 金時女房八重菊(市川笑三郎) 貞光女房桐の谷(市川笑也) 伊賀寿太郎/平井保昌(市川猿弥) 渡辺綱(市川中車) 源頼光(市川門之助)他

 

 「金幣猿島内裏」のストーリーを思い浮かべながら劇場に行ったけど(;・∀・)、南北の原作を書き換えて昭和59年に初演されたものである。父の志を継ぎながら病に倒れた相馬良門を、千年生きた女郎蜘蛛の生血を使う秘術で蘇生させる奇怪なシーンから始まり、許嫁である桔梗の前とその家来伊賀寿太郎の犠牲、朝廷方との大立ち回りを経、殺された女郎蜘蛛の恨みの物語として所作事「蜘蛛絲宿直噺」を大詰めに演じる。

 あまりにも悲しく衝撃的な事件を受け、主役は隼人君が演じることとなった。当然と言えばそうなのかもしれないけれど、何も知らない人が見たら代役だと思わないレベルで勤めており、本当に立派だった。とにかく舞台を立派に勤めあげようという関係者の意気込みと覚悟が伝わり、プロの仕事ぶりに頭が下がった。なんといっても近頃の隼人君は腕が格段に上がっている。他、特に目についたのが米吉君と猿弥さん。團子さんも大変だったと思う。

 この日が93歳の誕生日だったらしい寿猿さんの心境を思うと胸が痛むが、よくとおるお声は頼もしかった。これからも御無理をなさらず、舞台に立つ姿を見せて頂きたい。澤瀉屋は不滅だと信じるし、今こそ我々観客が澤瀉屋を応援する時である。

 そうはいっても、段四郎さん―。このような形で旅立たれるとは思いもしなかった。御多分に漏れず私も大好きだった。御冥福をお祈り申し上げます。

 

※猿之助さんに非があるなら、改め、謝り、償いを続けてほしい。取材に応じた方々が守られてほしい。松竹も周囲もフォローを継続してほしい。