ジョン・ランディス監督

 

 

自分たちが育った養護施設の危機を救うために,解散していた自分たちのバンド「ブルース・ブラザーズ」で資金を集めようとするお話。抱腹絶倒のミュージカルコメディです。

 

 

夜の大捜査線(1967)We are the World(1984)とはレイ・チャールズつながりですが,We are the Worldとはもうひとり,

つながりがあります。ダン・エイクロイドですね。

 

題名通り,二人の兄弟が主人公です。

兄のジェイク(ジョン・ベルーシ)が仮釈放され,弟エルウッド(ダン・エイクロイド)が刑務所に迎えに行くところから物語が始まります。

二人が育った養護施設に挨拶に行くと,ペンギンと呼ばれるシスター兼院長から5000ドルの税金が払えないために養護施設は閉鎖されると告げられます。

 

施設の管理人(キャブ・キャロウェイ)に相談に行くと教会に行って神父の話を聞けと言われます。

 

 

トリプルロック教会というふざけた名前の教会の神父を演じているのが何とジェームス・ブラウン

 

 

 

説教が始まり,ピアノ演奏が流れると集団で踊りが始まります。

こんな教会なら行ってみたいですね。

ここでジェイクに神の啓示がおります。「バンド」

 

二人は昔のバンドメンバーに声をかけ,その演奏で5000ドルを捻出しようとしますが,バンドメンバーは既に自分たちの生活を送っていますので無理やりのリクルートです。

このハチャメチャ具合がヨロシイ

 

シカゴ下町のソウル・フード・レストランでコックをしていたギター奏者はバンドをやるといったら女房に反対されますがその女房がアレサ・フランクリン

この映画がアレサ・フランクリンの映画デビュー作だそうです。

 

 

 

 

ちなみに線路わきのエルウッドの部屋に若き日のアレサ・フランクリンのポスターがあったと思いますが良く確認できませんでした。どうでしょうか。

 

 

 

ナンヤカンヤでバンドが結成され,ツアーに出かけます。

「オールドボーイズ」というバンドになりすまして,カントリーパブ(アメリカにはこんな感じの店があるんですね)で演奏するところもおもしろかった。

自分たちの音楽(ブルース,R&B,ロック)を演奏するとブーイングを浴びていろんなものが投げ込まれました。

ステージにあった金網の意味がわかりましたね。

撮影ではランディス監督がカメラの外に立って金網に向かって砂糖でできた瓶を投げていたそうです。

 

 

ジャンル違いのカントリー・ミュージック「ローハイド」では大うけ。楽しいですねぇ。

 

 

ジェイクとエルウッドは,免停中の運転,スピード違反で警察から追われ,オールドボーイズ,ミネソタナチからも追われます。パレスホテル,ホールで多くの観客相手に行なったステージは大成功

クラリオンレコードの社長から1万ドル契約を取り付け,税務署に向かいます。

 

シカゴまで170km,ガスは満タン,煙草半箱,暗闇にサングラス

ちなみに,このサングラス,レイバンのウェイファーラー・サングラスですが,1970年代半ばまで数千本だった売り上げが映画の影響もあって1981年には1万8000本にまで伸び,撤退寸前だったこのモデルを復活させました。

ベルーシはあるシーンの撮影後,次のシーンを撮る前にサングラスをなくしてしまい,100個以上のサングラスを使ったため「ブラック・ホール」というあだ名がついたそうです。

 

 

謎の女(キャリー・フィッシャー)の攻撃をかわして,オールドボーイズの車アクセルには接着剤で細工,警察車両とは派手なカーチェイス。

どこまでパトカーをつぶせばいいのって感じ

そしてワーグナーの「ワルキューレの騎行」で現れたミネソタナチの攻撃もすり抜けました。

ワルキューレは神話上の女性で馬に乗って空を駆け抜けますが,車に乗ったナチが空中に打ち上げられるシーンはそのパロディだそうです。でもぼくにはそんな知識はないので「ワルキューレの騎行」で思い浮かぶのは地獄の黙示録だけです。


そして税務署到着

 

税務署の署員はスティーブン・スピルバーグが演じています。

 

逮捕のシーン,200人の州兵,州警察官,市警察官,騎馬警察用の馬15頭(そして戦車3台,ヘリコプター3台,消防車3台)を含む500人以上のエキストラが使われたそうです。

 

 

 

 

最後は監獄からの「監獄ロック」で終了です

ノリノリですね。最初に立ち上がってテーブルの上に最初に乗る囚人はイーグルスのジョー・ウォルシュです。

 

エンドロールに二人の名前が載っていました。

 

監督のジョン・ランディスとスティーブン・スピルバーグは友人関係にあり,スピルバーグが監督した1941(1979)にはジョン・ベルーシ,ダン・エイクロイドが出演していました。

ジョー・ウォルシュはジョン・ベルーシの友人です。

 

 

ご機嫌な映画でした。

 

 

それにしてもいろんなものが破壊されていますね。でも死人は出ていないんですね。

103台の車をぶち壊し,この当時の世界記録になっています。

その後,マトリックス リローデッド(2003)では300台以上の車をおシャカにして記録更新しています。

 

 

ブルース・ブラザーズはもともとアメリカのテレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のコント・コーナーから誕生したものです。そのバンド演奏を発展させて映画化したのがこの作品です。

映画の中のバンド演奏は迫力を持っています。主役の二人の歌も良かったし,踊りもあの体でキレッキレ。

「サタデー・ナイト・ライブ」を見たことはありませんが,楽しそうなバラエティ番組だったんでしょうね。

黒装束でキメたふたりが,ブルースやソウルをバンドと共に生演奏する音楽コント・コーナーが好評でライブ収録した音源を「ブルースは絆(Briefcase Full of Blues)」というタイトルでレコードアルバムをリリースしましたが,なんとBillboard 200で1位を獲得しています。

ダン・エイクロイドがどうして USA for Africa に参加していたのかわかりませんでしたが,このアルバムでもボーカルとして参加していたのでちゃんと資格はあったということですね。

 

映画のタイトルが「ブルース」ブラザースですし映画の中でも数々のブルース,ソウル,ゴスペルが登場しています。

ジェームス・ブラウン,アレサ・フランクリン,レイ・チャールズ,キャブ・キャロウェイ,ビッグネームの人たちがパフォーマンスを披露していますが,良くこんな人たちを集められたなって感じです。

 

ほかにもリトル・リチャードに出演依頼をしていたようです。この映画が作られた当時,彼はゴスペルしか演奏していなかったため断ったそうです。

キャリー・フィッシャーが演じた謎の女役にオリビア・ニュートン・ジョンが検討されていました。しかしザナドゥ(1980)製作中のため実現しませんでした。

 

一方,ジェイクが刑務所を出所する際に,使用済みのスキンなどの私物を返した刑務官は スター・ウォーズ 帝国の逆襲(1980)でヨーダを演じているフランク・オズです。レイヤ姫のキャリー・フィッシャーも謎の女役で出演していましたが,この映画だって同じ時期に撮影されたと思います。

しかも両作品は同日公開でした。

スター・ウォーズ 帝国の逆襲が先行してヒットして,ブルース・ブラザースはBox-office bomb(興行的失敗)と思われていましたが,海外市場でblockbuster(大ヒット)となりました。最終的には製作費の4倍くらいの興行収入がありました。

 

文化的,歴史的,美学的に重要であるとして,アメリカの「国立フィルム保存委員会」が半永久的な保存を推奨している映画・動画作品のリスト,ナショナル・フィルム・レジストリ(アメリカ国立フィルム登録簿)にも選ばれました。監督兼共同脚本家のジョン・ランディスはこの映画は,リズム&ブルースに対するダン・エイクロイドとジョン・ベルーシの純粋な情熱と偉大なアフリカン・アメリカン・アーティストとシカゴの街に対する私たちの相互愛の賜物だと感激していました。

 

 

映画公開30周年を記念して,ローマ教皇庁の新聞 ”L'Osservatore Romano” (19世紀からある由緒正しい新聞です)は,この映画を「カトリックの古典」と呼び、カトリック信者の鑑賞に適した映画として推奨しています。

犯罪の宝庫なんですけどねぇ。ローマ教皇庁もやるなぁ

 

 

1)   レイ・チャールズ

子供の頃,緑内障で失明しています。ブルース,ジャズ,R&B,ゴスペル,ソウルミュージックのジャンルの一人者です。

2008年にアメリカの雑誌ローリング・ストーンが選出した歴史上最も偉大な100人のシンガーの第2位に選ばれています。

1960年代にヒット曲を連発しています。Billboard Hot 100にも1位になった曲が3曲あります。

 

Georgia On My Mind  1960/11

Hit The Road Jack         1961/10

I Can't Stop Loving You  1962/06,邦題は「愛さずにいられない」大好きな曲です

 

 

エルビス・プレスリーがカバーしたステージでのバージョンもいいです。

 

ついでにこの映画に出演しているアレサ・フランクリンローリング・ストーンが選出した歴史上最も偉大な100人のシンガー第1位,ジェームス・ブラウンが第10位に選出されています。ドンだけスゴイ人たちが出演していたのか,あらためて思いました。

 

 

2)   ダン・エイクロイド

ジョン・ベルーシとは売れない時からの親友でした。

シカゴの酒場で出会い「サタデー・ナイト・ライブ」に出演できないか話し合っている間,バックに流れるブルースのレコードを聴き,二人は意気投合し,ベルーシはそこからブルース・ミュージックに親しみを持ったということです。

ブルース・ブラザースのオリジナルの脚本はダン・エイクロイドが書きました。ものすごく長いため (324ページだそうです),冗談でロサンゼルスのイエローページの表紙に綴じさせたそうです。監督のジョン・ランディスがこれを削っていき実用的なサイズに仕上げたようです。

後に出演するゴーストバスターズ(1984)の脚本も書いています。

大逆転(1983),眠れぬ夜のために(1985),スパイ・ライク・アス(1985)といった作品ではジョン・ランディス監督と組み,ほかにもドライビング Miss デイジー(1989),スニーカーズ(1992)といった映画に出演しています。

最近になっても新たにゴーストバスターシリーズ(2016~)の製作総指揮となり活躍しています。

それにしても年とともに太って顔が丸くなり,ジョン・ベルーシに近づいてきました。