ゲイリー・マーシャル監督
M&A(企業の合併買収)を行なう実業家とフッカー(娼婦)が,ひょんなことから出会い,お互いに惹かれ合っていくお話
「ペリカン文書」とのつながりはもちろんジュリア・ロバーツ1) です
最初の場面,パーティで主人公のエドワード(リチャード・ギア)が電話でつきあっている彼女と別れるということが説明されます。そして顧問弁護士のロータス・エスプリ(マニュアル車)をむりやり借りてハリウッドに向かいます。
ロータス・エスプリ,一度は乗ってみたい車ですね。
プロダクト・プレイスメントといって映画やTVドラマに商品を提供して宣伝に使う方法がありますが,ロータス・エスプリはこれをやって売上が1990年から1991年にかけて3倍に伸びたそうです。フェラーリとポルシェ社も候補でしたが断ったそうです。残念でした!
ハリウッドでは男が,"Welcome to Hollywood! Everybody comes to Hollywood got a dream. What’s your dream?" と叫んでいました。
後で振り返るとこの映画の結末を予言するようなシーンでした。
フッカー(娼婦)のヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)がエドワードに声をかけビバリーウィルシャー・ホテルまでエスプリを運転して届けます。
このホテル,現在もフォーシーズンズホテルとして営業していますが,超高級ホテルでスペシャルスイートルームは1番安価な部屋でも1泊 100万円以上,ビバリープレジデンシャルスイートは 250万円以上します。ペントハウススイートはいくらなのかホームページでは分かりませんでした。
ヴィヴィアンが,故郷のジョージアにはカーマニアの男の子がたくさんいたと言っていましたが,実際にジュリア・ロバーツはジョージア出身です。ジョージアなまりがあったため,そのように設定したようです。
エドワードがルームサービスでシャンパンとイチゴを注文していました。
エドワード Why don’t you try a strawberry. イチゴ食べてみたら?
ヴィヴィアン Why? どうして?
エドワード It brings out the flavor in the champagne. シャンパンの風味が引き立つよ
ヴィヴィアン Oh Groovy オシャレ
このシーンとても好きです。
現実の世界でエドワードのセリフを言ってみたかったです。
フッカーの値段,1時間100ドル,泊まりは300ドルの提示にOKしてヴィヴィアンがホテルで一晩過ごします。
ヴィヴィアンがバスルームで後ろ手に隠したものを見てドラッグだと思ったエドワードが取り上げたものはデンタルフロス
エドワード It’s just that very few people surprise me. 君にはびっくりさせられる
ヴィヴィアン Most of ‘em shock the hell out of me. 私はいつも客に驚かされる
そのあとヴィヴィアンが寝っ転がりながらみるテレビ番組は1950年代に放送された ”I Love Lucy”というテレビドラマ
ここで大笑いしていましたが,監督が足をくすぐって撮影していました。
翌朝,泡だらけの風呂に入ったヴィヴィアンがヘッドフォンをつけて歌っていたのはプリンスの"Kiss"
1986/04,Billboard Hot 100で1位になった曲です。
エドワードが買収しようとしている会社の社長(モース氏)と高級レストランで面会しますが,顧問弁護士に1人ではダメだ,女性を連れて行けと言われたためヴィヴィアンを1週,3000ドルで雇います。
この映画の元々のシナリオの題名は,この「3000ドル」でしたが,製作会社のトップが題名「プリティ・ウーマン」を押したそうです。
製作会社はタッチストーン・ピクチャーズで「ウォルト・ディズニー・カンパニー」の映画部門の会社です。ディズニー本人の意見かと思いましたがその頃にはすでに故人でした。
さて,ヴィヴィアンはレストランに行くための服を買えと金を渡され,ロデオドライブに出かけます。
ロデオドライブは店の名前ではなく,このホテルから続いているショッピングストリ-トのことです。
高級なブランドショップがひしめき合っています。
とあるショップに入って服を見ていると,売る服はないと言われますが,さもありなんでしょう。
確かにここにフッカーファッションで入っていったんじゃ,いやな顔されますね。
人を見た目で判断してはいけないと言いますが,分かっているつもりでも難しい
ホテルに帰ると,支配人(へクター・エリゾンド2) )が,エドワード・ルイスはこのホテルの特別なお客さま(Special customer)だと言い,つれのヴィヴィアンにも親切に対応します。
イブニングドレスを選ぶ店を紹介したり,ディナーのマナーを教えたり・・・
待ち合わせたヴィヴィアンを見てビックリ。美しい。フッカーファッションとはえらい違い
レストランでの食事。エドワードとモース氏は,会社に手を出すなといったバチバチの 言い合いをしていましたが,ヴィヴィアンの食事が和ませてくれます。
エスカルゴを食べるシーン
ヴィヴィアン Slippery little suckers. 滑るのね
ウエイター It happens all the time. 字幕は「良く飛びます」でしたが「よくあることです」が正確な訳
監督はこの場面を納得するまで何度も取り直し,しかもプリティ・プリンセス(2001)でも同じ俳優で,同じセリフを言わせています。
話し合いが決裂して,モース氏が帰り,ふたりきりになると,ヴィヴィアンは高級料理に持参のケチャップをかけるという暴挙に出ます。
高級料理にケチャップは他人が見るとせっかくのソースを台無しにしているように見えますが,人の好みは様々ですから好きにしたらいい。
ちょっと高い寿司屋で気取った味付けされ,このまま食べてくださいと握りを出されることがあります。
ボクは醤油をつけて食べたいんだけど・・・,でも言えないんだよね。
その夜,ヴィヴィアンは映画オードリー・ヘップバーン主演のシャレード(1963)を見ていましたが,エドワードはロビーで1人ピアノを演奏していました。リチャード・ギア本人が弾いています。
エンド・クレジットにも"Written and Performed by Richard Gere" の文字。Writtenなので作曲も本人?
エドワードは,意地悪されるからイヤだと言うヴィヴィアンをつれてロデオドライブに買い物に行きます。
ブランド店の店長に「金に糸目はつけないからサービスしてくれ,露骨にしてくれ」と言う場面。イイですね。
ここで流れるOh, Pretty Woman(1964)3)
さんざん服を買ったあげく,昨日コケにされた店に行き,逃がした魚は大きいと言う。気持ちいいね。
ドレスアップして25万ドルのネックレス
このネックレスは本物です,25万ドル。撮影中,監督の後ろには銃を持った宝石店の警備員が常に立っていました。
関係ありませんが,ヴィヴィアンが見ていたシャレード(1963)の最後のお宝の値段も25万ドルでした。
プライベートジェット(?)でサンフランシスコ
オペラを鑑賞します。
演目はヴェルディ作曲の「椿姫」,裕福な男性と恋に落ちる娼婦を描いたオペラです。
これも映画の内容を考えて選んだのかな。
ヴィヴィアンは商売では唇へのキスはしないと言っていましたが,自らキスをしてしまいます。本気で惚れたってことですね。
それでも,愛人になることは良しとしません。
フッカー仲間の友達に会うと,姿格好を見て「洗練されたわね」と言われました。
そう言われた珊瑚色のブレザーとロングショーツ,白いブラウスは,Lew Magramという通販カタログで全部で100ドルくらいだったようです。モデルがきれいだと身につけているものも高級に見えます。
その友達曰く,「金持ちの男に惚れて奇跡が起きたのは・・・」,考えた末に出てきた人物は「シンデレラ」
ヴィヴィアンは変わりました。愛人にはならない,高校を卒業すると言ってエドワードの元から去ります。
エドワードも変わりました。冷酷無残な企業戦士だったのにヴィヴィアンと出会いモース氏の会社を買収することはやめます。
10年来のつきあいだった顧問弁護士を殴り,最後は高所恐怖症なのに建物の外にある非常階段を上ってヴィヴィアンにキス。
ここはウエストサイド物語(1961)を意識しての場面でしょうか。
白馬に乗った騎士が幽閉されたお姫様を助けに来ました。メデタシメデタシ
この映画は1400万ドルの製作費で作られましたが,日本だけでこの2倍以上の興行収入がありました。
全世界では製作費の30倍以上の収入があったようで,史上最高の興行収入を記録したロマンティック・コメディのひとつになっています。
この映画はアカデミー賞には縁なく,ジュリア・ロバーツが主演女優賞にノミネートされているだけでした。
AFI(アメリカ映画協会)が選ぶ情熱的な映画ベスト100(2002)の21位に選ばれています。
エドワードの役にはジョン・トラボルタ,クリトファー・リーブらが候補にあがったようです。
リチャード・ギアはこの役を引き受けるつもりはなく断ろうとしていたとき,ロバーツが「イエスと言ってください」と書かれたメモを彼に渡し,それを見たギアは速攻で役を引き受けたそうです。
またヴィヴィアンの役にはダイアン・レーンなどが候補だったそうですが,ディズニー側はメグ・ライアンを押したそうです。
でもリチャード・ギアとジュリア・ロバーツだったからこの映画がここまでヒットしたんでしょうね。
ちなみにこのふたり年の差12歳です。
1) ジュリア・ロバーツ
ハーバート・ロス監督のマグノリアの花たち(1989)で注目され,アカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。
翌年の「プリティ・ウーマン」の大ヒットで,人気女優としての地位を確立しています。
フック(1991),ペリカン文書(1993)などに出演し,プリティ・ブライド(1999)では,再度,ゲイリー・マーシャル,リチャード・ギアと組んでいます。この映画には支配人役だったヘクター・エリゾンドも共演しています。
エリン・ブロコビッチ(2000)でアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。エリン・ブロコビッチはAFI(アメリカ映画協会)が選ぶヒーローと悪役ベスト100(2003)で31位に選ばれていました。
21世紀になってからはオーシャンズ11(2001)シリーズに出演しており,彼女の映画はアメリカで20億ドル以上の興行収入をあげ史上最大の女性映画スターとなっています。
またピープル誌の「世界で最も美しい50人」にも複数年にわたり選ばれています。背も高くてモデル体型です。ポスターを見るとヒールのせいもあってリチャード・ギアと同じ背丈に見えます。
そしてこの映画の中でもデンタルフロスを使っていましたが,歯並びが良いことでも有名です。
2004年にブルガリアで発掘された古代の女性骨格,考古学者たちはその完璧な歯並びから "ジュリア・ロバーツ"と呼んだそうです。
2) ヘクター・エリゾンド
リチャード・ギアとはアメリカン・ジゴロ(1980)でも共演しており,警察署長を演じていました。
何といっても「プリティ・ウーマン」のホテル支配人役はすごく良かった。ヴィヴィアンがフッカーだと言うことを承知で1人のレディとして接するところは役どころとはいえ,素晴らしい。ヴィヴィアンが別れを告げる時に言った "Stay cool" という言葉の通りでした。クールってのは冷たいってことではないですよ。冷静で感情に流されない強い意思を持っている,カッコイイという感じ。
さて,この俳優はゲイリー・マーシャル監督のプリティ・ブライド(1999),プリティ・プリンセス(2001),プリティ・プリンセス2(2004)すべてに出演しています。プリティだらけですが原題にプリティがついているのは「プリティ・ウーマン」だけです。
3) オー・プリティ・ウーマン
ロイ・オービソンの曲で1964年,Billboard Hot 100で1位になっています。
この曲をカバーしたヴァン・ヘイレンの ”Oh Pretty Woman” も1982/04,Billboard Hot 100 12位になっています。
一説では,ヴァン・ヘイレンの ”Oh Pretty Woman”を映画に使いたかったけれど著作権の問題でできなかったと聞きました。
ヴァン・ヘイレン,好きですけどこの映画にはロイ・オービソンの曲が正解だったと思います。