ハーバート・ロス1) 監督

 

都会(シカゴ)から田舎の町に引っ越してきた高校生レン(ケヴィン・ベーコン)が,町で守られているダンスの禁止令を撤廃するために奮闘するお話

 

「フラッシュダンス」とはダンスつながり                       

ダンスを題材にした映画は数多くあります。「サタデー・ナイト・フィーバー」 につなげることも考えましたが,こっちはいずれ,またの機会に

 

 

 

ケニー・ロギンスの「フットルース」が流れ,脚の動きだけが映るオープニング・クレジットが印象的です。

 

このあと,神父の説教が映し出されます

この神父ジョン・ムーア(ジョン・リスゴー2) )が後にレンとイイ関係になるアリエル(ロリ・シンガー)の父であり,この小さな町のオピニオン・リ-ダーってところが話をおもしろくしています。

 

 

神父は卑猥なロックンロールが性の乱れを招き道徳観念を堕落に導いていると断言しています。

また大部分の大人たちはその意見に同調しています。

「スローターハウス53) 」は内容が健全ではなく,「トム・ソーヤ」は名作だと決めつけます。


 

ドライブインに集まってきた若者たちがラジカセからの音楽に合わせて踊っているところに,いきなり登場してラジカセを止めました。

 

ラジカセっていうところが時代を反映していますね。

1980年代は音楽のメディアとしてカセットテープ,ラジカセ,ウォークマンが普通だったのでしょう。

冒頭のポスターでもウォークマンを腰につけてヘッドフォンで音楽を聴いて踊っています。

現在,スマホが普及してからは音楽配信サイトからの直接ダウンロードして保存したり,ネット環境が整っていればストリーミングといった好きな時に聴きたい音楽を聴くことができます。

この映画の時代からは考えられない変化です。

 

 

 

さて,レンが,友達になったウィラードを車に乗せたところ,音楽とダンスが禁止されているのでラジオも聞かないと言われます

 

メン・アット・ワーク4) を知っている?労働者のことか?

ポリス5) は?聞いたことがあるか?知っている。後ろにいる(behind you) と言っていると,本当のポリス(警官)の職務質問を受けることになってしまいます

この二組のアーティストの名前が出ていることが,この映画の撮影された年1983年の音楽事情6) を良く表しています

 

 


映画は青春映画然とした展開を見せていき,トラクターのチキンゲームに勝ったレンにアリエルが惹かれていきます。

ここで流れる曲はボニー・タイラーの" Holding Out For A Hero"

この曲は日本ではだいぶヒットしたようですがBillboard Hot 100では34位どまりでした。TBSのドラマ「スクール☆ウォーズ」の主題歌としてカバー曲が使われたからヒットしたのでしょうか

 


レンのイライラがつのり,誰もいない工場のようなところで激しく踊る所はなかなか良かったです。

もちろん代役を立てています。ダンスや体操で計4名がレンを演じたということです。でも違和感なく見ていられました。

 

町の集会でダンスの許可を申請しますが,ここでもダンスは性的に興奮するし,酒と薬がつきものだとして否定されます。

レンはアリエルからの助言で聖書の一説を持ち出します

 

詩編149

主をたたえ,主のために新しい歌を歌い,主をたたえて踊ろう

ダビデ王も主の前で全身全霊をこめて踊った

 

それでもダンスの許可はおりませんでした。
 


このあと町の大人たちが有害だという書物を焼き払う行動に出ます。

いわゆる焚書ですね。これには神父も同意できませんでした。

 

そしてとうとう神父は教会で町の人たちの前でこう言いました。

卒業の記念パーティ-を開くそうです

どうか私と一緒に祈りを捧げてください

彼らの努力に主の導きがあるように。
 

 

無事,プロムが開かれます

 

 

ふたたびケニー・ロギンスの「フットルース」が流れる中,若者のダンスで幕を閉じます。

めでたしめでたし

 

ただしケニー・ロギンスによると実際にはこのプロムのシーンはChuck Berryの"Johnny B. Goode"にあわせて撮影されたそうであとで“Footlose”が「アフレコ」として追加され完成したそうです。

“Footlose”はAFI(アメリカ映画協会)が選ぶ アメリカ映画主題歌ベスト100(2004)の中で 98位に選ばれています。

Billboad Hot 100で1984/3,1位を記録しています。ちなみにトップガン(1986),ケニー・ロギンスの ”Danger Zone”は2位止まりでした。

 

またこの映画のサントラ盤からはもう一曲Billboard Hot 100で1位になった曲があります。Deniece Williamsの”Let's Hear It for the Boy”です。

 

 

この映画は「田舎の町のダンス禁止令に対する紛争を描いた,どうでもよさそうな青春映画であり,ミュージックビデオである。ティーンエイジャー向けの強力な餌,ゴミだ」と痛烈に批判した評論家がいました。

 

まあ1980年代の映画の特徴として音楽との強い関わり合いがあったのですからミュージックビデオといわれてもしょうがないかもしれません。ミュージックビデオでけっこうです。

ぼくはこういった1980年代の音楽とコラボした映画をたくさん見たから洋楽が好きになったのかもしれないと思っています。

 

 

話は全く変わって,ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)の一場面。

ガモーラのセリフ「私は戦士で殺し屋。ダンスは踊らない」 “I'm a warrior, an assassin. I don't dance.” に対して

クイルのセリフ「そうなのか?俺の生まれた星では,君みたいな人についての伝説がある。それはフットルースって呼ばれてるんだ。伝説ではケヴィン・ベーコンという名前の偉大なヒーローがケツに棒をおっ立てたようなヤツラでいっぱいの街全体で,ダンスは素晴らしいものなのだと教えるんだ」

“Really? Well, on my planet, we have a legend about people like you. It's called Footloose. And in it, a great hero, named Kevin Bacon, teaches an entire city full of people with sticks up their butts that, dancing, well, is the greatest thing there is.”

ボクはこの一場面だけでこの映画を好きになりました。

 

 

 

1)   ハーバート・ロス

チップス先生さようなら(1969),ボギー!俺も男だ(1972)などを監督後,グッバイ・ガール(1977),愛と喝采の日々(1977)を同年に監督しています。2作ともアカデミー賞作品賞にノミネートされています。監督賞も「愛と喝采の日々」でノミネートされました。グッバイ・ガールではリチャード・ドレイファスがアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。いい映画でした。

カリフォルニア・スイート(1978),摩天楼はバラ色に(1987)といったコメディタッチの映画もおもしろかったです。

 

2) ジョン・リスゴー

オール・ザット・ジャズ(1979),ミッドナイトクロス(1982)などの出演したあと,ガープの世界(1982)ではアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。

愛と追憶の日々(1983)ではほかの俳優の代役として急遽招集され,「フットルース」の撮影の合間に3日間で撮影されたそうです。しかもこの映画でもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。

なお「フットルース」で娘役を演じたロリ・シンガーとは実年齢は12歳しか違いません。

ついでにロリ・シンガーと母親役のダイアン・ウィーストとは実年齢,9歳しか違いません。

 

3)   スローターハウス5

第二次世界大戦で連合軍によるドレスデン爆撃の体験をもとにしたSF小説ですが,ジョージ・ロイ・ヒルが監督した同名の映画があります。確かにヴァレリー・ペリンの豊満な裸体が出てきたりして,映画はエロティックな部分はありました。

実際,反社会的,わいせつといった理由によって保守的な価値観を持つ人々から悪書として批判され,訴訟問題まで発展したようです。

「フットルース」の劇中で焚書の場面がありました。「スローターハウス5」がポルノと判断され焼却された事件も実際にあったようです。

 

4)  メン・アット・ワーク

オーストラリアのバンドです。「ワーク・ソングス」”Business as Usual”というアルバムからの ”Who Can It Be Now?”「ノックは夜中に」,”Down Under”はともにBillboard Hot 100で1位になっています。このアルバムBillboard Hot 200 (Billboardに掲載されている売り上げ上位200位までのアルバム)で1982/11から15週にわたって1位を記録しています。

メン・アット・ワークの次のアルバムからシングルカットされた ”Overkill”もBillboard Hot 100で3位とヒットしてます。

日本の洋楽ヒットチャートAll Japan Pop 20でもこの3曲はベスト5位以内に入っているヒット曲でした。

 

5)  ポリス

イギリスのバンドです。”Roxanne” 「ロクサーヌ」,”Message In A Bottle” 「孤独のメッセージ」,”Don't Stand So Close To Me” 「高校教師といったヒット曲がありますが,なんといっても”Every Breath You Take” 「見つめていたい」が最高でしょう。1983/07から8週にわたってBillboard Hot 100で1位でした。

この曲は1980年代の洋楽を特集したランキングでは必ず出てくる名曲です。

 

6) 1983年の音楽事情

1983年のBillboard Hot 200は2月までメン・アット・ワーク,その後はポリスとマイケル・ジャクソンは半々くらいで1位を占めていました。11月に1週だけ1位になったQuit RiotのMetal Healthは,この映画でレンが最初に車で学校に行った時にガンガン鳴らしていてみんなが振り返った時の曲です。

 

マイケル・ジャクソンの"Thriller"は1984年の4月までNo1woキープします。そのあとにこの映画のサントラ盤"Footloose が10週連続でNo1になりました。以下,ブルース・スプリングスティーンの"Born in the U.S.A.",プリンスの"Purple Rain"が続きました。