フランソワ・トリュフォー1)監督

 

「未知との遭遇」とのつながりはフランソワ・トリュフォーです

 

フランソワ・トリュフォー演じるフェラン監督のもと映画を製作していく過程やその舞台裏を描いたお話。

 

 

フランス映画です。

「パメラを紹介します」という映画の撮影をしていますが,主役のパメラを演じるジュリー(ジャックリーン・ビセット)がハリウッドから到着していないためほかのシーンから撮影されています。最初は群衆シーンから始まりますが多数のエキストラに細かい指示を出し,何度も取り直しをしています

 

撮影の映画は,パメラが夫の父親と恋に落ちるという設定の恋愛映画です

 

登場人物がいろいろな問題を持っていました。

ややこしいので主な登場人物を書き出しておきます。

 

 

パメラの夫の父でパメラと恋に落ちる役 アレクサンドル

(ジャン=ピエール・オーモン)

20年前にハリウッドでパメラの夫の母役セヴリーヌと共演し,その時2人は恋愛関係になっていたらしく,“ヨーロッパの色事師”と呼ばれていました。映画女優だったジュリーの母親のこともよく知っていました。

空港に誰かを迎えに行きますが,どこの女子かと思っていたら若い男性でした。

LGBT2)なのかな。でも撮影には特に支障はないです。(死亡するまでは)

 

 

パメラの夫の母役セヴリーヌ 

(ヴァレンティナ・コルテーゼ)

たぶんアル中です。

飲酒しながら演技していますが,セリフを覚えられずにカメラから見えないところにカンペを貼りますがうまくいかず,何度も取り直しします。

この見えないところにカンペを貼る方法は,トリュフォー自身が「未知との遭遇」で英語のセリフを覚えるのに苦労して同じことを行なったそうです。

 

 

パメラの夫役アルフォンス 

(ジャン=ピエール・レオ)

こいつが一番やっかいなヤツです。

撮影隊のスタッフのリリアンとベッドをともにしており,アルフォンスは結婚する気でいました。リリアンにはその気はなくカメラマンと抱き合ったりしています。あとあとリリアンがスタントマンとともにイギリスに駆け落ちしてからは撮影が終わっていないのに部屋にこもってみんなを困らせます

 

 

パメラ役のジュリー 

(ジャックリーン・ビセット)

ジュリー自身も精神的な病からようやく立ち直り,映画界に復帰した背景があります。

その時の主治医だった年の離れた精神科医と結婚しています。

緑の瞳と指先が非常にきれいでした。

 

 

撮影が終わってもいないのに出て行くと言ってジュリーを困らせるアルフォンスを引き止めるためベッドを共にしてしまいます。

 

アルフォンスは撮影に戻りましたが,「奥さんと寝たので離婚してください」とジュリーの夫に電話をかけてします。なんてヤツだ。

今度はジュリーが部屋にこもります。泣きやむには大量のバターが必要だといって,プロデューサー自らがバターをこねます。撮影所に夫の精神科医が駆けつけようやく落ち着いて撮影が再開されます。

 

 

そういったゴタゴタの中,映画撮影は何とか進んでいきますが,今度は突然,アレクサンドルが交通事故で死亡してしまいます。

台本の書き直しを行い,雪の街頭でアレクサンドルの代役が射殺されるといった話に変更します。

 

泡で作った雪です

 

すべてが終了

 

マスコミのインタビューに答える大道具係

「撮影は手を焼いてみたいですがどうでしたか」

「順調そのもの」

「作ったわれわれも楽しかったから必ずお客さんも・・・」

 

見ているわれわれもこの映画の撮影は全く順調には進まなかったことを知っているわけでこのセリフには笑ってしまいます

 

 

 

 

この映画の最初の頃にトリュフォー演じるフェラン監督がこう言っていました。

「映画作りは駅馬車の旅に似ている。期待が消えていき,最後は目的地に着くことだけを考える」

最初はイメージする理想の映画を作るためにいろいろなプランを考えて希望にあふれてスタートするのでしょう。

製作過程に予定外のことがいろいろ起こり何とか完成だけを願うことになるということでしょね。

全部見終わると駅馬車の旅とはこういう意味だったのかとしみじみと理解できます。

 

「アメリカの夜」は撮影技術で明るい昼にカメラレンズにフィルターをかけると夜のシーンになるという擬似夜景のことです。英語の題名,Day for nightの方が直接的でわかりやすいかな。光量の少ない状態で撮影した場合,露出不足になり画面が真っ暗になるのでこういった技法が使われたようです。

つまり「アメリカの夜」で撮影際されたものは真実らしく見せていますが真実ではないということです。しかし実際に夜間に撮影するよりホンモノらしく見えるのだということです。

映画そのものを説明しているようですね。

ホンモノよりホンモノらしく見える

 

 

 

この映画の音楽はトリュフォー映画には欠かせないジョルジュ・ドルリューです

 

 

 

 

1)   フランソワ・トリュフォー

フランスの映画監督,俳優でヌーヴェルヴァーグ3)を代表する監督の一人

元々は映画評論家でしたが,短編映画撮影の後,初めて監督した長編映画,大人は判ってくれない(1959) がカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しています。この映画に出演したジャン=ピエール・レオとはその後も 夜霧の恋人たち(1968),恋のエチュード(1971)に出演しています。ほかに,突然炎のごとく(1962),アデルの恋の物語(1975)などがあります。

 

2)   LGBT

レズビアン (Lesbian)

ゲイ (Gay)

バイセクシュアル (Bisexual)

トランスジェンダー (Transgender) またはトランスセクシャル (Transsexual)

 

各単語の頭文字を組み合わせた頭字語で,特定の性的少数者を包括的に指す総称。

性的少数者への理解増進を図る法案が提出されそうです。

映画にはLGBTの人たちは良く出てきます。古くはウィリアム・フリードキン監督の真夜中のパーティー(1970),ルキノ・ヴィスコンティ監督のベニスに死す(1971)もゲイなのかな。ブロークバック・マウンテン(2005)はゲイ映画の金字塔といわれています。

 

3)  ヌーヴェルヴァーグ

それまで行なわれていた大型セットによるスタジオ撮影ではなく,ルールにとらわれないカメラワークでロケ撮影中心,即興性の演出などを特徴とした映画の革新運動です。

日本語に訳すと「新しい波」という意味です。

「カイエ・デュ・シネマ」という映画批評雑誌に革新的な見解を執筆していた若者らが自ら映画撮影をして広まっていきました。代表的な人物はフランソワ・トリュフォー以外では,勝手にしやがれ(1960)の監督,ジャン=リュック・ゴダールでしょうか。