評価:90点/作者:村上春樹/ジャンル:文学/出版:2017年

 

『騎士団長殺し』は、村上春樹の長編小説の第十四作。

 2023年時点において、村上春樹の最新の長編小説である。

 本作は、二部構成で、「顕れるイデア編」、「遷ろうメタファー編」のタイトルが付いているが、出版時の二巻後世のタイトルである。

 文庫化の際に、各巻は、上下巻の二冊に分割され、全部で、四冊の後世となっている。

 本作は、村上春樹の他の多くの作品と同様、主人公は、「私」で、本名は、登場しない。

 しかし、主人公以外の登場人物は、全員、名前を付けられている。

 ただし、主人公の妻は、「柚」、主人公の死んだ、妹は、「小径」と下の名のみで、名字は、登場しない。

 本作の主人公の「私」は、三十六歳の画家である。

 美術大学を卒業し、生活のために、仕事として、肖像画を描いていた。

 人の顔の特徴を、一目で捉えて、脳裏に焼き付けると、デッサン、または、クロッキーの絵として表現することができる。

 また、物の位置関係等を詳細に記憶可能であるため、視角記憶能力に優れている。

 本作の年代設定は、明確ではないが、本作の最後の数年後に、2011年の東日本大震災が、発生しており、更に、携帯電話があるため、2000年代と思われる。

 本作は、ある年の三月、主人公が、妻の柚から、離婚を切り出されるところから、物語が始まり、翌年明けには、物語が終焉する、数カ月間の物語で、ラストでは、数年後が、描かれる。

 柚は、ある日、「私」に、「あなたと一緒に暮らすことは、これ以上、できそうにない」と告げる。

 主人公の妻の柚は、建築事務所に勤める、二級建築士で、三十三歳。

 夫である、主人公の「私」以外に好きな男ができ、その男と寝ていた。

 柚は、自分が、家を出て行こうとするが、「私」は、その夜には、自分が家を出て行った。

 そして、数カ月間、古いプジョーを運転して、東北と北海道を当てもなく、走り廻った。

 五月に入ると、プジョーが壊れ、東京に戻ることになる。

 主人公の「私」には、美術大学以来の友人、二歳年上の雨田政彦がいた。

 政彦の父は、雨田具彦という、高名な日本画家であった。

 政彦には、高名な父に対し、芸術家の才能は、乏しかったが、要領が良く、広告代理店のグラフィックデザイナーをしていた。

 「私」は、柚と一緒に住んでいた、家を出たために、行くところがなく、雨田政彦は、父のアトリエであった、小田原の郊外の別荘に、管理を兼ねて、住むように勧めてくれた。

 雨田具彦は、既に、九十二歳で、認知症を患っており、伊豆高原の養護施設に入っていた。

 政彦の表現では、認知症により、「オペラとフライパンの区別が付かない」状態である。

 「私」は、生活のために、一定の収入が必要なため、政彦は、小田原の絵画教室の講師の仕事を紹介した。

 本作の主人公は、正直、友人の政彦がいなければ、生活できなかった。

 「私」は、絵画教室の生徒の人妻、二人と肉体関係を持った。

 その内の一人は、長期間、登場しているが、二人共、本名は、登場しなかった。

 

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