月組公演『グレート・ギャツビー』3回は泣ける文句なしの名作! 〜「グレート Great」の意味〜 | 西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

鍼灸師、保育士、JAPAN MENSA(メンサ)会員/IQ149(WAIS-Ⅲ)、日本抗加齢医学会指導士、実用イタリア語検定3級。趣味は読書、芸術鑑賞、小説執筆(2019年神戸新聞文芸年間賞受賞)、スイーツめぐり、香水づくり。

 

宝塚大劇場で、宝塚歌劇団・月組公演

 

三井住友VISAカード ミュージカル

『グレート・ギャツビー』

-F・スコット・フィッツジェラルド作“The Great Gatsby”より-

脚本・演出/小池 修一郎

 

を鑑賞しました。

 

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宝塚歌劇のサイトより

 

20世紀アメリカ文学の最高峰と言われる「グレート・ギャツビー」。1991年雪組で『華麗なるギャツビー』として世界初のミュージカル化に成功。2008年には月組が日生劇場で再演し好評を博しました。

宝塚歌劇として3度目の上演となる今回、永遠の主人公ジェイ・ギャツビーを演じるのは、傑出した演技力を誇る月城かなと。新たなる大劇場一本立て公演として、月組の魅力溢れるキャストが、豪華なミュージカル作品をお届け致します。

名曲「朝日の昇る前に」はそのままに、更にバージョン・アップした2022年版『グレート・ギャツビー』に、ご期待ください。

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『グレート・ギャツビー』、そもそも原作のフィッツジェラルド(Francis Scott Key Fitzgerald, 1896- 1940)の小説(” The Great Gatsby ” 1925)が、もう号泣するくらい傑作なんです。

ジェイがグレート(大した男)なのは、派手な金持ちだからでなく、デイジーへの純粋な愛に生き、愛に死んだ、「ひとを愛しきる素晴らしさ」を体現した男だから。

 

個人的に、

デイジーを「アメリカン・ドリームの象徴」

ジェイ・ギャツビーを「アメリカン・ドリームの夢追い人(ドリーマー)の象徴」

トムを「既得権益のある富裕層=アメリカの現実の象徴」

として読むアプローチもあるのではないかと思うのですが、それはさておき、この20世紀アメリカ文学の傑作を、ミュージカル(宝塚歌劇)版で見るのは、きょうが初めてです。

 

で、感想。

 

3回泣きました。

 

●第1幕でデイジー・ブキャナン(海乃美月さん)が「女の子はバカな方がいい」を歌うところ

●第1幕最終場(射殺される運命も知らずに)でジェイ・ギャツビー(月城かなとさん)が「朝日の昇る前に」を歌うところ

●第2幕でジェイ・ギャツビー(月城かなとさん)がデイジー・ブキャナン(海乃美月さん)の罪をかぶるところ

 

もう

「朝日の昇る前に」のフレーズを聴いたら条件反射で泣いてしまいそう

です。

 

かわいそうな青年にかわいそうな美女……英語のpoorには「かわいそうな、気の毒な」という意味がありますが、たとえばイタリア語のpoverino(女性だとpoverina)の方がわたしの中ではしっくりきます。救われることのない、どうすることもできない感じというのでしょうか。

 

それくらい感情移入してしまう卓越した役作りでした。

もちろん小池修一郎さんの脚本もいいのだけれど、やっぱり、芝居巧者の月城かなと&海乃美月の卓越した演技のゆえ。

やられました。

抜群の安定感。

バリ島で、バリタクシーの助手席に乗っているときのような安心感。

 

もちろん脇役も素晴らしい。

 

大富豪のトム・ブキャナン役の鳳月杏さん。

正直、個人的にはもっと傲慢に、自己顕示欲丸出しで演じてもよかったと思うのですが、エリート・上流階級特有のイノセント(無邪気)な傲慢さ(当人は全く意識していないけれど気がつけばみんなから傲慢な奴だと思われていた、みたいな)に新味があり、これはこれでありだと思いました。説得力のある存在感は健在

 

ジェイとデイジーの運命の出会いを実現させるニック・キャラウェイ役の風間柚乃さん。

原作よりは自分を出さない控えめな演技で、逆にそれが「グレート・ギャツビー」のグレート(great) と呼ばれるゆえんを際立たせていたように思います。

主人公を「立たせる」のが本当に上手です。

 

主要登場人物を演じられている方(ポスターに名前が載っている方)は、やはり、一流の役者でした。

 

二流の役者は自分を際立たせる。

自己表現、自分の役作りは上手です。_

これとても、なかなかできないことですが。

大抵は「演出家の言われた通りに動いてセリフを間違えずに言える」のレベルですから。

 

一流の役者は芝居全体を際立たせる。

自分は今立っている舞台、今演じているシーンでどんな役割を求められているか考えて動ける。
ひとり芝居であったとしても、演劇が本質的にグループワークであることを理解している。

 

月組の皆様、本当にお疲れ様でした。

 

もう一点。専科の輝月ゆうまさん(月組卒業生)がものすごく生き生きと演じられていたのが、嬉しかった。

月組現役時代よりも生彩があるんじゃないかという演技と佇まいでした。

無一文時代のジェイ・ギャツビーを救った大悪党、マイヤー・ウルフシェイムを演じられています。

「農園の管理人(マイヤー←ドイツ語)」+「狼(ウルフ)の恥(シェイム)」という名前がまたいい。

 

素晴らしい舞台を見せていただきました。ありがとうございます。

 

【おまけ】

劇場内のショップですみれとラムレーズンのジェラートをいただきました。

すみれ味、珍しい。もちろん美味しい。おすすめします。