水素水は本当に健康にいいのか? 〜健康商法のインチキの見破り方〜 | 西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

鍼灸師、保育士、JAPAN MENSA(メンサ)会員/IQ149(WAIS-Ⅲ)、日本抗加齢医学会指導士、実用イタリア語検定3級。趣味は読書、芸術鑑賞、小説執筆(2019年神戸新聞文芸年間賞受賞)、スイーツめぐり、香水づくり。

きょうは

水素水 または 健康商法のインチキ

について。

ある患者さまから、次のような相談(質問)を受けました。

「知り合いが末期がんで、『水素水が効く』という噂を聞いてネットで水素水を買って飲んでいる。がんでなくても健康にいいなどといろいろ言われているようだけれど、水素水は本当にがんに効くのか? 健康にいいのか?」

わたしは即座に

「水素水に健康効果はありません。お金の無駄です」

と答えました。
なぜか?

実は、水素水が体にいいという論文は、いくつか発表されています。

【参考URL】水素水の研究~医療・健康分野の学術文献紹介

共通しているのは、水素の抗酸化能(過酸化物質の生成を抑制する能力)を医学的効果の根拠にしていることです。

過酸化物質による酸化ストレスが関与しているといわれる病気に

○アテローム動脈硬化症
○パーキンソン病
○狭心症
○心筋梗塞
○アルツハイマー病
○統合失調症
○双極性障害
○慢性疲労症候群


などがあり、過酸化物質の生成を抑制する
抗酸化物質には、これらの病気の予防や軽減を期待できそうです。

しかし、(以下
、わたしの反論

(1)(水素水に限らず)「抗酸化物質ががん細胞の増殖・転移を抑制する」という医学的根拠はありません。

(2)「水素水」中の水素分子が生体内(細胞内)で実際に過酸化物質を除去している物的/状況証拠はありません。

要するに、現時点では水素水の健康効果は仮説の域を出ていません。
(1)(2)の反論についてご意見ある方は、メッセージでもコメントでも構いません、お寄せください。

(3)仮に、水素水に過酸化物質の生成を抑制する効果がある証拠が見つかったとしましょう。
水素水の費用対効果を考えてみます。


ここでは、代表的な抗酸化物質であるビタミンCと比較してみます。
ビタミンCのサプリメントは、ドラッグストアやコンビニで手軽に入手できます。

■水素水の場合
【抗酸化物質(この場合水素分子)の量】
常温常圧の環境下で水に溶存する水素は0.00162g/ℓ。
水素分子の分子量(1mol=6.02*10^23個あたりの質量)は2(g/mol)。
物質量は0.00162(g)/2(g/mol)=
0.00081(mol)

【お値段】
ネットでざっと調べたところ、だいたい1ℓ1000円が水素水の相場のようです。


■ビタミンCの場合
【抗酸化物質(この場合ビタミンC=アスコルビン酸)の量】

※市販のビタミンCはアスコルビン酸とアスコルビン酸カルシウム塩の混合物ですが、
ここでは安定したL-アスコルビン酸カルシウム塩二水和物(C12H14CaO12・2H2O)として計算します。


L-アスコルビン酸カルシウム塩ニ水和物の分子量(1mol=6.02*10^23個あたりの質量)は426.35(g/mol)。
1000mg(1.0g)のL-アスコルビン酸カルシウム塩ニ水和物物質量は1.0(g)/426.35(g/mol)=0.00235(mol)

【お値段】
DHC「ビタミンCハードカプセル30日分」を例にとると、税込み270円。
ちなみにこのサプリメント1日分(2粒)でビタミンC
1000mgが摂取できるそうです。

ビタミンC1000mgには水素水1ℓの

0.00235/0.00081=2.90倍

の抗酸化能があります。
言い換えると、
ビタミンC1000mg分の抗酸化効果を水素水に求めるならば、2.9ℓーー約3ℓ必要です。

毎日3ℓの水をがぶがぶ飲めますか?

1日あたりの費用も

水素水2.9ℓ → 1000(円/ℓ)×2.9(ℓ/日)=2900(円/日)
ビタミンC1000mg →  270(円)/30(日)=9(円/日)

2900/9=322.222・・・なので

ビタミンCのサプリメントにかかる費用は、
水素水にかかる費用の、実に300分の1。

水素水を買うより、ビタミンCのサプリメントを飲む方がはるかに安上がりです。

このように、

たいていの健康商法(疑似科学)のインチキは、
中学高校レベルの理科・数学の知識で十分見破れます。
(専門用語さえクリアできれば、実は英検2級レベル=高卒程度の英語力で医学論文も読めます

あとは、学校で習った知識を実際に運用できるかどうかです。
(学生時代にちゃんと勉強して理解していることが前提ですがーー「物質量」を導入する経緯や理由が分かっているか? など)