「KABRI_16」責任ある自由 | 針金師フーテンの日々☆スイス・チューリッヒ・ニーダードルフ物語

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ヨーロッパでスイスはチューリッヒでの路上テキ屋物語、ドロップアウトした青春ストーリー


ベンジー(Benjy)


 

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ニザン(Nizan)



責任ある自由。

午後のひととき、時々子供達のところに遊びに行きます。

子供達も、朝早くから勉強は始まります、そして役割仕事もあり、
忙しい毎日を過ごしています。

午後は、我々ボランティアも一部をのぞいて仕事はありません。
子供達も自由時間になるようです。

このところ、子供達から私へのインビテーションがとても盛んです。
子供達の住み家は子供達が管理しておりまして、どんな客を子供が呼ぼうが
大人達は口を出しません、といいますか、そこに大人の先生、あるいは
指導者、そんな立場の人がおりません。

もし居るとすれば、彼らのお兄ちゃん、お姉ちゃん世代です。

そこにはキッチンもありますし、冷蔵庫もあります。
夜でも何か作って食べれられる、大食堂では夜の時間は食事は出来ません、
しかし、子供達の住み家に行きますと、なにやら食料にありつけるのは嬉しい。
こうした特権を得ているのはボランティアの中で私一人でした。

夜は凄い賑やかです、しかし「うるさーい!」などと言う人は誰もいません。
そして何時が食事とか、何時から何時までがテレビの時間、何時になったら
静かにしなくてはいけない、そんな規則はありません。

何時に寝なくてはいけない。
遊びは夜9時まで。
黒板に落書きはいけません。
夜、クラスルームに入ってはいけません。
夜、ピアノを弾いてはいけません。

そんな、「しては、いけません」って規則がなにもないのです。
なにをしてもいいわけですが、そんな自由な中に子供達同士の約束と言いますか
法律と言いますか、あります。
そして、それを守る、守らなければいけない、これは彼ら同士でも厳しい。

食器を洗う当番、動物に休みの日に餌を与える当番、そう、休みの日にも
だれか、仕事をしなくてはならない子供もいるわけです。

休みだから全ての子供は休めて、大人がそんな時だけは手助けしてやる、そんな
甘くはありません、もしそんなふうに甘くされたら、子供の自治権はここには
確立されていないと思うのです、子供に出来ることは全て子供に任せる。
「責任ある自由」を身をもって教える。

中学クラスの子供達の中から、英語の先生を見つけた。

名前はベンジー(Benjy)、そして彼は今日10月26日が誕生日、それを聞いた私、
ネームを作ってプレザントしてあげようと思った。
そしたら、もう一人ニザン(Nizan)、彼も今日が誕生日だと名乗り出た、
ハイ、今日は二つ作らなくてはなりません、バースデイ・カードと共に。

ベンジーはとても英語が上手い、アメリカはアラバマ州の英語です、彼の
英語はとてもいい、きれいなのです、文法的にもしっかりしてます。
多分……親の躾けなのか、家柄なのかと、おとなしいけど賢そうで場のリーダー。

彼は13歳までアメリカで育ち、ここキブツ「KABRI」に来て2年が経つそうだ、
来たとき全然話せなかったヘブライ語も今ではペラペラです。
今でも特にヘブライ語は勉強していると言ってました、子供達との会話は
ベンジーが英語をヘブライ語にし通訳します、私の英語もさほどではないのです、
時々、そういうときはこういうふうに言うのだよ、とアドバイスしてくれる。

他の子供達の私に対する質問は無限にある、とにかく彼らの東洋人に対する
興味は尽きない、競い合って私に質問を浴びせる。

ここに来ると、時間がいくらあっても足りません……

 

――つづく――