旦那ちゃんと結婚して、家を離れた。
家族との関係はしばらく良好だった。
虐待も昔のことだし、父から受けた性的な虐待も忘れかけていた。
水に、流そうとしていたのかも知れない。
母が死んで10年以上経った。
旦那ちゃんと結婚して、6、7年経って、旦那ちゃんが倒れた。
父は二度ほど見舞いに来てくれた。
旦那ちゃんと離婚する時に、父と兄が保証人になってくれた。
父は実印を押してくれて、兄は欠けた三文判を押して来た。
欠けた判子は無効になる。
他の三文判を使って、こちらで上手く処理をした。
欠けた、判子。
とある、判子屋さんがいて、人づてに聞いた話によると、
「欠けた判子を使っている家族は、必ず仲が悪い」とのこと。
その判子屋さんはとても変わっていて、判子を見ただけで占いのように、その人となりが分かってしまうそうだ。
まぁ、欠けた判子を平気で使うような人は・・ということになるんだと思う。
私が小学校の頃から、判子は欠けたままだ。欠けてない三文判の状態を知らない。
あんな安いものを買い換えたらいいのに、ずっと使い続けている。
そして、その判子屋さんの言う通り、仲が悪いままだ。
旦那ちゃんが倒れて数年経ち、家を出て行かなくてはいけなくなった。
年々、相続税の対象が引き下がって、母が亡くなった時は全く庶民には関係が無かった話だったけれど、
ここ最近では、少し関係ある話になって来ていた。
引っ越しにお金が必要だったのと、相続税の対象金額のことがあり、
生前贈与の話を、父に持ちかけた。
「家と土地と、父の貯金分の合計を出して、相続税の対象金額よりも超えるようだったら、生前贈与をして、財産を守りませんか?」
「国に取られるよりも、家族に残しませんか?」
という話をした。
兄が家を継いでいるので、父が死んだとき、家と土地の相続を放棄するように、相続で揉めないように、
というのが、母が死んだときの約束だった。