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第二章 【夜の街】 その3

「本当に今日もなにもしなくて良いんですか?」


「俺、涼ちゃんと話しが出来たらそれだけで満足なんだ」


ベニヤで仕切られただけの二畳程の個室には簡素なシャワーと 小さなベッドしかない。


「私の話しなんて、そんな価値ないですよ」


「充分あるよ。俺にとっては充分価値あるよ」


不自然に距離を保ちそのベッドに腰掛けているボブと涼子。


涼子は風俗で働く大半の女性特有の倦怠感は微塵もなく若々しい魅力に溢れていた。


「どんなに俺が癒されてるか……」


「じゃあ今日はボブさんの事、教えて下さい」


「俺の事?」


「私、実は話すより聞く方が得意なんです」


「俺の話なんて聞いたらブルーになるだけだよ、今までろくな人生じゃないし」


「今もですか?」


「今? ……今は……そうだな、幸せだ。 こうして涼ちゃんと知り合えたし、この街で友達も出来たし」


「じゃあその友達のコト教えて下さい」



話を振られて悪い気がする奴はそういない。


「タバコ吸って良い?」


ベッドの枕元から涼子が灰皿を持ってくるとボブはレイシに火を点けた。


紫煙を吐き、勿体をつけて話だす。


「俺さぁ、人ってだいたい二通りに分かれると思うんだ。
手を取って引き上げてくれる人と、足首掴んで引きずり込む人と…… 涼ちゃんはそんなの感じた事ない?」


「はぁ、そんな風には考えた事なかったです……」

「そうだな……元気にしてくれる人と、やる気を奪う人ってのは?」

「あっそれだったらなんとなく分かりますよ」

「俺の周りにはやる気を奪う種類の人間しかいなかった。 だから人と接すればその度に自信を失くしてた。
自分なりに努力して結果を出しても『それが一体何になる?』って一言でお終い」


「嫌な言葉ですね」


「悪魔の呪文さ。お蔭で俺は役立たずのチビって思い込まされた。 まっチビはチビなんだけどね」



「気になりませんよそんなコト」


「そんな俺が大学受かってコッチに出てきて、 最初に出会った人の言葉で救われたんだ。
『ネガティブな言葉や人の批判に耳を貸すな! 本当はお前が何者なのか、お前以外には解らないんだから』って」


「何者かってどういうコトですか?」


「何を成す人間かってコト。何かを成し遂げるって日頃の行動の積み重ねじゃない。 人は思考に基づいて行動する訳だから、どう考えるかがその人の未来を決めてるって言んだよ」



ボブの話にしっかり相槌を打ち目を輝かせる涼子。


「面白いですね。それって考え方次第で未来を変えられるって事ですよね」


「そう、今の自分も今までの思考の結果で、未来は今どう思考するかで決まるらしいよ」


「……もしそうだったら凄い事ですよね……」


「そう考えたら昔さんざん言われ続けたネガティブな言葉も気にならなくなったんだ。 高い志を抱いて努力を続けてれば誰に馬鹿にされても平気って訳」


「ボブさん凄いなぁ~。大きな目標があるんですね」


「……それが……偉そうな事言ったけど今はまだ目標探し中」


「じゃぁ私でも追いつけるかも」


「追いつける追いつける、俺なんかすぐ抜かしちゃうよ」


「その人、素敵なお友達ですね」


「そう、俺の手を取って引き上げてくれる人だ」




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