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第二章 【夜の街】 その4

「ボブの野郎、地獄に落ちればいんだ」



就職情報HAPPYWORK-龍や



結局串揚げは諦めて俺の友達のキンちゃんのラーメン屋での食事会。
全く普通の食事じゃん。


「駄目でしょ堀渕さん、そんな事言っちゃ」


「サキ、お前は優しいなぁ。折角のお祝いがラーメンに餃子だよ」


「悪かたね、ゼンチャン」


「いたのキンちゃん」


「ボクの店、ボクいてあたりまえよ」


「サイッコーキンちゃん、このラーメンサイッコー」


「サキちゃんおめでと。このギョーザボクからお祝い」


「ありがとうございます」



この店は場末のラーメン屋って雰囲気だけど、味とキンちゃんの人柄でいつも繁盛してる。


「ハセプ、喰ってばっかじゃなくてキンちゃんいるならいるって言えよ」


「聞かれて困る事言うのが悪い」


正論だけに腹が立つな。話題を変えよう。


「それにしても良かったなサキ。今度担当の編集者が付くんだって?」


「たいしたことないよ。やっとスタートラインに並んだってとこかな」


「いや凄いと思うよ。ホントお前、絵上手いし、たいしたもんだよ」


微笑むサキの表情がなぜか寂しそうに見える。



「どうしたサキ。めでたい席でなにそんな辛気臭い顔してんだ? 」


サキは躊躇いがちに話しだした。


「ウチ正直言って自信ないんだ、プロでやってく」


「自信ないってどう言うコトよ?」


「子供の頃から絵が大好きで、漫画家目指して精一杯頑張ってきたけど……
やっぱ好きだけでやっていけるような甘い世界じゃないんだよね……」


「大変だよ漫画家は」


おっ今日はじめてハセプが自発的に喋った。


「大変だけど好きだから頑張れるんじゃないの?」


「頑張るよ、そりゃ。でもなんせタイムリミットがさ……ウチ来年の末で30(歳)でしょ。
親と約束しててそれまでに芽が出ない時は実家帰って家業手伝う事になってんだ」


「芽が出ないじゃなくて出すんだ。自分から求めないと何も手に入いんないよ」


「求めても手に入らないものもあるでしょ」


「いいかサキ、求めるって事は神頼みでもなんでもなくて具体的な行動だ。 『それに相応しい存在を目指して努力する』っていう。 そしてどんな目標でも達成すんのに一番大切なのは『諦めず求め続ける事』。 結果は全て自分次第だ。自分を信じて手に入るまで求め続けろよ」



「堀渕さんの言う事は良く解るけど…… 保証のないモノにあと何年も打ち込める程、若くないだけの話」

「年なんか関係ねえよ。 目標変えても同じ事『保証がないから努力しない』じゃ悪くなる一方だ」


『努力しない』ってフレーズがサキを傷付けたのが彼女の紅潮した顔と空気で解った。


今まで常に努力を続けたコを相手に失礼極まりない失言だ。


「勿論努力はするけど……」


「ごめんサキ、お前は良くやってるよ。だからこうして結果が出てるんだ。 素直に喜んで自信持てばいんだよ」

「ウチの方こそごめんね。折角お祝いしてくれてるのに……」 といってサキは席を立った。


「どこ行くの?」

トイレを指さすサキ。歩いていく後姿を見ながら俺はラークに火を点けた。

トイレのドアが閉まるのを確認するとハセプが小声で喋りだす。

「あんな事いっちゃサキが可哀想だろ、善ちゃん」

「ホントの事じゃねぇか、何が可哀想なんだよ」

「サキの不安な気持ちも解ってやれよ」

「不安なんて大事に抱えててもロクなことねぇよ」

「不安がなけりゃただのノーテンキだろ。 上手くいかなかった事も前もって考えてるサキのどこが悪りんだよ」


サキは全く悪くない。むしろそれは堅実といえる生き方だろう。

ただ堅実とは、眼に見えるものへの信頼だ。

俺は見えないものを確信する事が、夢の実現には不可欠だと思う。


「俺の言い方にも問題あるかもしんねぇけど。 ハセプ、お前の言う事はサキの夢を遠ざける」

「言ってる意味が解んないんですけど?」

「今のサキに必要なのは逃げ道じゃねえ。不安の原因と向き合う事だ」

「じゃぁ不安と向き合えば問題は解決すんのかよ」

「あぁ。自信を損なう原因から目をそらすから不安なんだ。 見据えて向き合う事が人を成長させる。夢はその向こう側だ」


ハセプは何か言いかけて言葉をのんだ。

「強い意志で遣り抜けば、俺はどんな夢でも叶うと思うよ」





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