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第二章 【夜の街】 その5

黒塗りのセダンの運転席で安西は30メートル先の煙草屋を見据えている。


2本目のマルボロに火を点けると煙草屋から出てくる武藤の姿が目に入った。

辺りを気にしながら小走りにセダンに近づく武藤。

オートロックを開錠すると助手席に滑り込み、安西の膝にヨレた封筒を投げる。

「あのジジィ、渋いわ」


封筒の中の一万円札を指先で数える安西。

「こんなもんしょ。時給にしたら結構な稼ぎだ」

「まぁな。それからさっきの売人、やっぱフカシだわ」

「だろ?」

「今この界隈でシャブ撒いてんのは篤誠会の木庭っていう男らしい」

「木庭って、こないだ飲み屋で酔っ払いの耳削ぎ落としたっていうあのジャンキーかよ」

「そうそう。切った耳にスピリタスかけて燃やしたって話だ。 出来れば関わりたくない相手だね」

「心配ねえって篤誠会クラスならトラブっても伏谷さんが何とかしてくれるよ」

「好き勝手やってんのコッチだぜ。ホントに助けてくれんのかよ」

「自分の女風俗で働かせてまでご機嫌とってんだ。使える時は使わなきゃな。まあ相手が剋友会の堀渕じゃなくて良かったよ」

「あっ堀渕は2、3年前に死んだって話だ」

「死んだ?」

「内部抗争で堀渕いれて3人が行方不明だってさ。恐らく沈められたんじゃないかって」

「ヤーコは怖いねぇ。俺らも下手うったら沈められんな」

「勘弁してくれよ。木庭もヤバイんじゃないの?」

「最悪伏谷さんが駄目でもシャブ中のサイコ野郎なんか俺がカタはめてやるよ。
武藤、パケ1個残してっから景気付けにベイロンでもキメようや」


そして静かに走りだした黒塗りのセダンは夜の闇に溶け込んだ。



その頃、風俗店の立ち並ぶ繁華街の路地裏で今日2二箱目のレイシに火を点けるボブ……


一人佇み通用門と腕時計を見比べている。




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