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第三章 【事の発端】 その2

「善ちゃん、アレ」


ハセプが少し先の路地に向けて顎を突き出す。


その先には座り込んでいるボブの姿があった。


「あの馬鹿、電波の届かないとこってココか!」


ボブに突進しようとする俺の腕をサキが掴んだ。


「待って堀渕さん」


「なに?」


「ボブ、誰か待ってんだよ。見て」


ボブの首に下げた携帯灰皿はいっぱいで、 足元にもかなりの吸い殻が落ちている。


そして俺等の気配にも気付かず、向かいのビルの通用門を見詰めている。


「解った。ハセプ、ここシャク屋だろ?」


「あぁ、多分三好の伏谷さんが看てる店だと思うよ」


「風俗嬢が出てくんの待ってんだよアイツ」


「それって立派なストーキングよね」


「ヒクよな。サキなんか特にヒクよな」


「ウチのお祝い断ってストーキングって……ワケ解んない」


サキは明らかに嫌悪の表情を浮かべている。


ドアの開く音が響き、俺たちは慌てて物陰に隠れた。


物陰から覗いてると誰がストーカーだか解んなくなってくる。


通用門から出てきた小柄な女性にボブが歩み寄る。


「あっボブさん」


「涼ちゃん、お疲れ様」


「寒いのに待っててくれてたんですか?」


「これ渡そうと思って」 堀渕の名刺を渡すボブ。


「就職情報ハッピーワーク? 職安ですか?」


「それハローワーク。その堀渕って人がさっき話してた俺の友達」


「ボブさんを元気にしてくれる人ですね」


「俺そこでバイトしてんだ」


「どんなお仕事なんですか?」


「簡単に言えば仕事の斡旋だけど……堀渕さんは仕事を通して人生を取り戻す手伝いをするのが俺等の仕事だっていつも言ってる」



「何喋ってんだアイツ。聞こえるかハセプ」


「全然。女の子、嫌がってなさそうだしストーカーじゃないんじゃない。帰ろっか」


「いや新種のストーカーって事もあるぞ。もう少し様子見よう」



「時間あったら遊びに来てよ。明日とか」


「興味あるけど、良いんですか? 邪魔になりますよ」


「全然大丈夫、俺もいるし。何時頃来れる?」


「お昼過ぎなら私は大丈夫ですけど……」


「じゃあ約束な。絶対何かプラスになると思うよ」



その時、反対側の通りに乗り付ける黒のセダン。


不穏な空気が流れ安西が降りてくる。


「涼子、帰るぞ」



「安西だ」


「知ってんのかハセプ」


「ここいらで好き放題やってるチンピラだよ」


「チンピラ? ヤクザじゃなくて?」


「さっき言った伏谷さんの世話になってるみたいだけど杯は貰ってないと思う。 最近特に派手にやってっから本職にシメられんのも時間の問題だよ」


「じゃあヒモの登場って訳だ。ボブもやっかいな女に入れ込んでんなぁ」




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