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第三章 【事の発端】 その4

助手席の涼子は呆然と外の景色を眺めている。


「悪かったな涼子」


「悪かったって思うなら、私の友達には絶対乱暴しないって約束して」


「アイツは友達なんかじゃねぇぞ。只の客だ」


「ボブさんは只のお客さんじゃない」 安西を振り返る涼子。
「私の手も握らずに話をしてくれるの。 私を元気付ける話。ボブさんは私の友達よ」


どんな状況でも涼子の目には美しいものが映り、安西の目には醜いものが映った。


全てに悪意を見出す神に呪われた自分の目を疑わない事は、破滅への最短距離を示し、


全てに善意を見出す神に祝福された涼子の目を信じる事が豊かな明日をもたらす事だと安西自身、心の底では理解していた。


「解ったよ涼子。 あいつはお前の友達で、俺はお前の友達には乱暴しない。約束するよ」


「有難う義弘さん」


涼子の優しさに同調する度に、安西は胸の辺りが温かくなる気がする。


今回も自分の弱さが涼子の気持ちを裏切り、胸の辺りが乾くまでその感覚は続くだろう。




帰る道すがら一言も喋らないサキとハセプ。


知人が風俗嬢に熱上げてヒモにシメられるとこ目の当たりにしたら、 誰でも複雑な心境だろう。


「後味悪いモノ見たな」


その空気の中で俺の声には無神経な響きがあった。


「何も見なかった事で、いんじゃないかな?」


自信なさげにサキが提案した。


「俺もそう思うよ」


ハセプも同調し俺達は何も見なかった事になった。



その時なぜか昼にボブが言ってた『人の犠牲の上に立つ幸せな男』が あのヒモの事だと確信した。




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