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第五章 【追い込み】 その2

「何寝てんの?」


サキの声で意識か戻った。

「寝てねぇよ」

「座ったままよく寝れるね。いびきかいてたよ」


事務所に入ってきてソファに座るサキ。

「だから寝てねぇって。瞑想だよ瞑想。ノックぐらいしろよ」

「したよ何回も。やっぱり寝てんじゃん。 もうお昼前なのにボブ出勤してないんだね」


「あいつこそ寝てんじゃないの? 昨日、あのあとひどかったんだよ」

「気になるけどウチこれからバイトなんだ。帰ったら聞きにくる」

「なにしに覗いたんだよ。人の安眠を妨害すんじゃねぇよ」

「ほら寝てんじゃん。 昨日の堀渕さんの話し思い出して、あの後マンガのストーリー練ったんだ。 凄く新鮮で結局4時頃までやってた。お礼言おうと思って覗いたの」


「礼なんか良いよ。若い子の為になる良い作品描いてくれればそれで良い」


「そうだね。どうせなら今の時代が少しでも明るくなるような良いメッセージを伝えるつもりだよ」


「上出来だサキ」 俺は思わず軽く手を叩いた。「お前なら出来るよ」


「堀渕さん、ホントに有難う。描けたら真っ先に見せにくるね」


「期待して待ってるよ」


「じゃぁはりきってバイト行ってきます」


そして軽い足取りで事務所をあとにした。



やっぱまだ眠い。


俺は机に足を投げ出し引出しから取り出したアイマスクをした。


こうするといつも数10秒で眠りにつけるがその前にノックが聞こえた。


「忘れものか? サキ」 そのまま俺は言った。「因みにこれは瞑想のポーズだ」


ゆっくりドアが開く気配がして



「堀渕さんですか?」


と聞き慣れない女性の声。



アイマスクを捲り確かめるとドアを背に若い女の子が立っている。


「はい。俺が堀渕ですけど……」


「昨日ボブさんに紹介して頂いて……厚かましく来てしまいました」


その子のはにかんだ笑顔は内面の素朴さを垣間見せる。


俺はアイマスクを外し座りなおした。


「涼子さん?」


「はい。はじめまして」


反り返るほど開いた右手を差し出しながら笑顔で近づいて来る涼子。


俺は机越しにその手を握った。



「ハッピーワークの堀渕です。よろしく」


素朴な行動はどれも自然に身に付いていて嫌味はなく、 その笑顔は若い魅力に溢れていた。


そらボブなら間違いなくイチコロだ。





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