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第五章 【追い込み】 その3

「ボブ、ちょっと席外してるんで、呼んで来るからソコ掛けて楽にしてて」


「呼ばなくて良いです。戻ってくるまで待ちますから。もし邪魔じゃなかったら」

「今、特に仕事ないから大丈夫だよ。全然邪魔じゃない」


ソファに腰を下ろす涼子。

「ボブさんから堀渕さんの事、色々伺いました」

「俺の事?」 徐に席を立ち。 「涼子さん、珈琲と紅茶どっちが良い? インスタントだけど」

「あっ気は遣わないで下さいね」

「気ィ遣ってる訳じゃなくて俺、珈琲飲みたいから付き合ってよ」

「ありがとうございます。じゃ私も珈琲で」


「アイツ、ロクな事言わないでしょ」 俺は珈琲を入れながら声をかけた。

「堀渕さんの事、凄く尊敬してるのが伝わってきますよ、ボブさんと話してると」


ソファから立ち上がり本棚を見上げる涼子の姿が見えた。

「本、沢山あるんですね」

「自由に読んで良いよ。気になるのがあったら貸したげる」


俺はマグカップを両手に持ってテーブルに置いた。


それを見て涼子はソファに座る。

「本は……ちょっと難しそうですね」

「読みはじめたらそうでもないよ。 あの中には人生を豊かにしてくれる言葉が沢山詰まってる」


マグカップを両手で持ち、何かを考えている涼子。

「堀渕さん、本当に考え方次第で人生って変わるんですか?」

「ボブから聞いたの?」

「昨日ボブさんからその話を聞いて…… もしかして私達今の生活から抜け出せるかもって……」

「私達?」

「私と恋人です。昨日、彼がボブさんに酷い事して、それも謝りたくて来ました」

「君が代わりに謝るの? だったらボブは余計惨めになると思うけどな」

「本人です。もしボブさんが良いって言ってくれたら、直接会って謝りたいって」

「それは良い事だ。誰でも間違いは犯すし、時には人を傷付ける事もある」

「でも不安です。本当に酷い事したからボブさん許してくれるだろうかって……」

「彼氏がボブに何をしたにせよ、怒りや後悔を引き擦るのは良くない。 その事自体よりネガティブな思いを引き擦る方が更にタチが悪いんだから。 そこからは決して良い結果は生まれない。だから一刻も早く手放すべきだ。 許す事は彼氏の為だけじゃなく、ボブ自身の為にも必要な事なんだよ」


涼子は呆然と俺を見詰め、少し間を置いて喋りだした。

「不思議ですね……」

「何が?」

「堀渕さんは今まで聞き慣れた言葉に別の意味合いを与えてくれる。 昨日までは消え入りそうだった未来が少しづつ拓けていくみたい……」




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