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第六章 【涼子と安西】 その1

「彼の今の生き方は、全て私の為に選んだ道です。 何かトラブルがあったら……それは私の所為でもあるんです」



そう話す涼子を見ながら俺はその男がボブの言うような只のタチの悪いヒモでは無い気がした。


「どう生きるかは全て本人次第だ。誰の責任でもないよ」


俺の言葉が届かなかった様に涼子は話しだした。


「きっかけは1年程前、私達が付き合い始めて間もない頃でした。 私の親に彼との交際を知られて、酷く反対されたんです」


「何が原因で?」



「地元の……二人とも県北の同じ温泉町の出身なんです…… 彼はそこの中学のイッコ上で当時グレてた事を私の親は知ってましたし、 その上、彼の家庭環境まで批判して……」



「まぁ親だから心配するのは仕方ないとして、理解して貰うには時間が必要だろうな」


「時間を掛けても無駄だったと思います。 父は家族と彼のどちらかを選べって、その一点張り。 私には答える事は出来ませんでした。 どちらかと縁を切るなんて、考えられなかったから……」



涼子の意識は恐らくその瞬間に戻ってる。


まるで今、詰め寄られているように苦悶の表情を浮かべていた。


辛かった瞬間に感情を戻させた事に俺は少しばかりの罪悪感を感じた。


「結局私は勘当されて、親の援助は一切なくなり、それ以来電話の一本もありません。通っていた音大も学費が払えなくて休学しました。 彼は今でもその事を負い目に感じてるようです」



「その頃の彼は真面目に働いてたんだね」


「はい。愚痴一つ言わずに……」 そして言い難そうに言葉を続けた。


「彼、お母さんの仕事が嫌で……辞めるように何度もお願いしてました。 楽が出来るようにと毎月給料の半分を送ってたんです。 そこに私の問題が持ち上がって学費も捻出しようと…… その事が彼を追い詰めたんだと思います」



俺はラークに火を点けた。


ぼんやりとだがこの純粋な心を持つ涼子の優しいがゆえに犯す過ちが見えてきたような気がする。


「それで金を稼ぐために危ない橋を渡ってるって訳だ」



「自分は世の中からつま弾きにされてる。 必要なモノは力で奪うしかないって、彼口癖のようにそう言ってます。
私はそれを聞く度にすごく不安になるんです」



「力で奪ったものは、必ず奪われる。彼が選んだのはそういう生き方だ」




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