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第五章 【追い込み】 その4

武藤は意識を取り戻した。


ここは篤誠会の事務所。自分はソファの上に縛られて転がされている。


その状況を理解するのにさほど時間は掛からなかった。


自分を囲む5人の中にスタンガンを見舞ってくれた男の顔もある。


「目ぇ覚めたようです」


その男の声で、くわえ煙草に革ジャン姿の木庭が視界に入った。


「スタンガンて気ィ失うんだ。武藤君、良い勉強になったな」


「あんたが木庭か?」


木庭は薄笑みを浮かべ、まだくっきりとスタンガンの痕が浮かぶ武藤の首筋に煙草を押し付ける……思わず呻き声を上げる武藤。


「呼び捨てはねぇだろ。俺、礼儀知らずは嫌いなんだ」


武藤の目の前に椅子を手繰り寄せ、腰を下ろす木庭。


「ナメてんのか? 武藤」


武藤は肩で息をしながら苦悶の表情を浮かべている。


「説明なしでこの扱いかよ。礼儀知らずはお互い様だろ」


「俺をナメて許されるのはイイ女だけだ。 お前の場合、態度改めねぇと生きて帰れねぇぞ」


「俺が一体何したっつんだよ」


あきれ顔で仲間を見回す木庭。

「心当たりねぇのか?」

「昨日停めてあるチャリンコのカゴに空缶捨てたけど、もしかしてアンタのチャリだったとか?」


「それママチャリだろ?」 武藤の胸倉を掴む木庭。 「なんで俺が乗んだよ!」 頬を殴り付ける……。

「次は鼻潰すぞ」

「何もやってねぇつってんだろ!」


「煙草屋の伊藤知ってるか? お前等絶対世話なってるよな」


「……あぁ……」



「昨日お前、伊藤にウチの売人から奪ったシャブ流したろ」



「知らねぇよそんなの。あのオヤジきっとボケてんだよ」



溜息をつき仲間と目を見合わせる木庭。


目配せで一人がラップに包んだかたまりを木庭に手渡す。



「じゃあ本人に聞いてみな」


木庭はラップの中から切り取った耳を取り出し、武藤の目の前に落す。

「なんだよコレッ!」


「伊藤の耳だよ」 歯を見せて笑う木庭。


嘔吐する武藤。昨夜から胃に何も入れてない為血の混じった胃液を吐く。

「30万で許してやるつってんのに土壇場でウダウダ言ってっからアイツは片耳を失った。勿論金もしっかり支払わせた。お前も逆らうのは勝手だがその分失うものが増えるぞ。俺の要求には誠実に応える事をお勧めする」


「いいか。嘘つく度に体刻むぞ」


木庭は武藤の耳にナイフをあてる。


「もう一度聞く。伊藤にシャブ流したのはお前か?」


目を逸らしたまま何度も頷く武藤。


「安西も共犯だな」


武藤は顔を上げ木庭を見据える。


「安西も共犯なんだろ。どうなんだ?」


力なく頷く武藤。




「よし、安西引っ張ってこい!」


取り巻き達は勢いよく事務所を出ていった。




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