ANZAC Dayだし軍用動物について語る | とある獣医の豪州生活(オージーライフ)

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オーストラリア在住の獣医学生であるAKIが熱帯魚の飼育日記をはじめ、
ワンコ、麻雀、アニメ、日々の生活などなど・・・
日本とは少し違った世界観をUPするブログです。

※コメントしていただくと、ブログ主が泣いて喜びます。

テーマ:
やぁやぁ。
4月25日ですね、Anzac DayのオーストラリアからAKIですよ。

ANZAC Dayとは「Australian and New Zealand Army Corps」の略。
第一次世界大戦中の1915年4月25日、豪州とニュージーランドのANZAC連合軍は、
オスマン帝国が鉄壁の守りを固めるガリポリ半島に上陸作戦を決行、
多数の犠牲を出しつつ何とかこの自然の要塞を落とした戦いの記念日ですね。
オーストラリアとニュージーランド、2つの真新しい国にとっては初めての本格的な戦争で、
最終的には8700人に及ぶ戦死者を出した「壮絶な戦い」を忘れてはいけない!という日。

日本の戦争の歴史を齧っていると「たった8700人で壮絶・・・」という感覚になってしまうが、
豪州の歴史上では物凄い激戦、そして悲劇なのです。

まぁ日本でいうところの終戦記念日に近く、
元々はこの第一次世界大戦に関する日だったんだけど、現在では戦争全体の日。
日本人の立場としては、うーん、第一次大戦では味方、
第二次では実際に豪州の一部を攻撃しているくらいガッツリと敵側なんで、
なんとも言えない日、なのかねぇ。
いやまぁ別に暮らしていて何も問題ないんですけどねw
日本に住んでるアメリカ人が終戦記念日に迫害されたりしないじゃん?それと同じよ。


でもじゃあブログで何を語ればいいんだよ!オーストラリアの戦史とかほとんど知らないよ!
だからって戦争から無理矢理「艦これ」の話をするのはさすがに違うだろ!
春イベもうすぐだね!!

って悩んだ結果、そういやこのブログは獣医学生のブログだったという、
なんとも根本といいますか、当たり前な部分を思い出したので、
ここは「軍用動物」についてちょっと書いてみようかなと思い立ったわけです。
久しぶりに前置きが長ぇ!!



戦争ってのは人間の外交の最終手段として発生するモンですが、
この人間様の都合に巻き込まれる、というかガッツリと参加してしまう動物ってのは多く、
軍も多数の動物を所有、運用しています。
イギリスにはディッキン・メダルと呼ばれる、動物専用の名誉勲章まであるんですよ!
軍と動物は切っても切れない関係なのだ。




っつーことで、一体どんな動物が戦争で使われていたのか、
それをちょっとずつ見てみよう。今日は面白歴史の授業だ!





まずは軍馬です。まぁ一番定番ですね。人間の歴史は馬の歴史です。
家畜化が容易かった馬は大昔から戦争に使われているのは皆さんもご存じ。
エンジンとモーターがその仕事を引き継ぐまで、非常に重要な存在でした。

仕事は大きく分けて二つ。

一つは人を乗せるという仕事。馬の俊足が人間の足代わりになります。
大昔から割と近代にいたるまで、どこの国でも騎兵の存在は見られましたね。
その圧倒的な機動性は歩兵のそれと比べ物にならず、戦況を大きく動かす存在でした。
伝令馬はその俊足で情報を行き来させる重要な存在。

また、騎兵として以外にも騎乗は単純に歩く必要が無くなるので疲労軽減になり、
上官が騎乗して楽をする、という使い方も多かったです。これは軍事目的ではないけどねー。
火器の発達により、剣を違える機会が減り遠くから狙い撃ちされる戦場になるにつれ、

騎兵はその姿をどんどん消していき、人を乗せるのは主に移動目的になっていき、
これもまた自動車や通信機の発達に仕事を引き継がれていきました。

もう一つの仕事は運搬目的。
馬に物資の運搬などの力仕事をさせていました。馬力を使ったわけですな。
馬車に大砲を積んで動かしたのは戦車の発祥ですね。
単純な軍事物資の運搬はかなり近代まで馬の仕事で、
第二次世界大戦でも多くが使われました。

ガソリンは草で良いし、早いし強いし、最終的には兵の食糧にもなる。
馬ってのは昔から素晴らしい兵器なのです。
今でも一部の山岳地域、つまり車では太刀打ちできない場所で軍馬は現役なのだ。スゴイ!


ラクダ

ラクダもまた軍馬と同じ要領で使われました。違いは地域にあります。
乾燥地帯、山岳地帯、寒冷地等では馬よりも適した存在だったわけですな。
古くは駱駝騎兵が騎乗して槍などで直接戦っていたし、
砂漠等の環境での物資の運搬は馬よりもラクダのほうが圧倒的に適しています。
日本陸軍も一時期使用していたらしいですよ、ラクダさん。

こいつもまた現役で、砂漠地帯の哨戒等で人が乗って使用している軍用動物。


ロバ

またしても軍馬のお友達。
基本的には馬のほうが早くて力強いので、ロバの上位互換ですが、
ロバのほうが粗食に耐えるという大きな利点があったりします。これ大事!
あとはまぁ、土地によってはロバのほうが多く流用しやすかったりしますからね。





こちらもやはり運搬目的に使われた動物。軍用に育てられてるというより、徴用ですね。
やはり力が強いので物資運搬には便利。そして何よりも利用後の食糧化が美味い!
昔は尻尾に火をつけて敵陣に突進させていたという記述もあったりする。怖い。





アジアゾウは比較的人間に懐きやすかったため、アジアの一部では軍用として使われました。
その運用方法は騎兵ともまた違う、どちらかというと初期の戦車のような動き。
象の皮膚は硬く並大抵の刃物は寄せ付けない他、その背の高さは敵の攻撃が届かず、
象の上に槍兵を乗せたり、櫓を立てて弓兵を乗せたりして敵陣に突進してました。
唯一の弱点は皮膚が柔らかく繊細な足部分で、攻撃されないように歩兵を同伴していたんだけど、
これ、まさしく現代戦闘における歩兵戦車と同じ運用方法なんですよねー。

しかし火器の進歩とともに、象の背の高さは逆に大きな的になってしまうという弱点になってしまい、
銃器が発達していくとともに前線から戦象は消えていきました。
その後は物資の運搬目的に一時期使われたものの、
そのコストの高さ(換えが効かずよく食う)から「馬で良くね?」となり、
軍用としての象さんは結構早々にいらなくなってしまった。





現代で「軍用動物」と聞くと一番最初にこれを想像する人も多いのではなかろうか。
人にとっての一番の友、それがイヌ。
圧倒的な調教のし易さと優れた嗅覚、そして俊敏性が主な武器で、仕事は多彩。

まず直接戦闘。敵兵に噛み付いて殺傷するタイプ。「軍用犬」というとこれを想像しますね。
ルーツをたどり切れないほど大昔から犬を使って侵入者等を襲う調教はある、典型。
その俊敏性と的の小ささが突撃に向く他、吠えるだけでも敵の士気を下げます。
現代では戦闘目的だけのために調教することはほとんどないです。
やはり弾幕の発達、有効射程の長距離化は「突撃」という戦法を消しつつありますね。

次に歩哨任務。要は番犬ですね。その鋭い嗅覚と聴覚を使って危険を察知します。
いち早く危険を察知して知らせるそれは敵の奇襲を失敗に終わらせ反撃を優位にし、
電子機器だけの情報ではなく生体情報の有効性は現代でも高く評価されています。

嗅覚を使った探知もまた、軍用では欠かせません。
爆発物の臭いをおって地雷やブービートラップを探知することが主な仕事で、
ベトナム戦争におけるトラップの被害から発達してきました。
現在でも中東では毎日爆発物を探してお仕事をしている、現代軍用犬の要。

輸送任務も犬が行っていた時期がありました。
馬よりも小型で、それでいて早く、そして頭が良く調教がしやすかったので、
伝令や弾薬などの物資輸送を、背中にバッグを背負わせる形で行っていました。
また、いわゆる犬ソリの要領で物資輸送もしていた時期もありましたが、
これは第二次世界大戦で塹壕戦になるとともに衰退。
旧ソビエト等が雪上運搬に使い続けた程度で、そのうちにすたれてしまいました。

他に「対戦車犬」という生物兵器も存在していました。
ドイツの戦車部隊に攻められていたソビエト軍が開発したもので、
犬を戦車の下に潜り込むように調教した後、犬の背中に爆弾を積んでドイツ軍に突撃させ、
犬がドイツ戦車の下に潜り込んだとき、背中の爆弾が戦車にあたって起爆、
ドイツ戦車を吹っ飛ばすぜヒャッハー!!という戦法だった。
が、実際にやってみると
 ・ソビエト側の戦車で刷り込みを行っていたので味方の戦車に突撃しちゃった
 ・敵戦車の砲撃に怯えて自陣に帰ってきて、味方を爆破しちゃった

等と、もう散々な結果になったのですぐに廃止してしまう。自爆兵器は難しいですね・・・。





三大「え、お前って軍用動物なの!?」って思われがちな動物、第三位。
今でこそポケットの中にはスマホがあり目の前にはパソコンがある時代ですが、
昔は何よりも一番早い情報伝達手段と言えば、それは伝書鳩だったわけです。

無線技術や電信技術の進歩によって伝書鳩の仕事はどんどん減っていくわけですが、
それでも無線の故障等、機械に頼れない状態になった場合には重宝され、
なんと第二次世界大戦でもガッツリ現役だった軍用動物です。英国はこの時25万羽使ってます。
包囲戦における防衛側が電源等を奪われた状態で外部と連絡を取ったり、
墜落したパイロットが救援要請をしたりするときに使用されました。

先に紹介したディッキン・メダル(動物専用の名誉勲章)ですが、
これ、今のところ一番受賞しているのは犬でも馬でもなく、鳩なんですね(犬18、馬3、鳩32)
戦争とは情報戦であり、空を制するものが戦争を制す。鳩はとても大事な軍用動物だった。
流石に現代は鳩使うよりも電子戦の準備をしろ、ってことで鳩は退役してますが、
平和の象徴である鳩さんは戦争でも大活躍していたことを憶えておこう。




軍鳩のついでに書いておきたい。タカも軍用動物として利用されていました。
さっき、伝書鳩は重要な役割を持っていたという話をしましたが、
相手に協力な軍事兵器があれば、それの対策をするのが戦争です。
ということで、タカは対伝書鳩用動物兵器として使用された例があります。鷹匠の転用ですな。
要は相手の伝書鳩をタカに襲わせて殺し、敵の情報寸断と傍受が目的でした。
第二次世界大戦中にドイツがイギリスに対して実践しています。
ヨーロッパ戦線は鳥同士の熱い戦いがあったんですねー。



イルカ

三大「え、お前って軍用動物なの!?」って思われがちな動物、第二位。
その知能の高さから調教がしやすく、海中における機動性を買われた動物兵器です。

イルカに毒矢の発射装置を仕込んでいるのは?みたいな憶測もありますが、
根拠がないこと、それに仕組み等を考えると効率や有効性が悪すぎることからデマでしょう。

軍用イルカの主な仕事は機雷探知任務で、
海中に敷かれた機雷を発見すると、その周りをグルグルと周るように調教されているそうな。
イルカの腕には発信機が付けてあり、これを受信することでイルカが旋回した場所、
つまりは機雷の場所を特定、機雷撤去を人間の手で行えるというもの。

実際にイラク戦争でも投入されている、現役の軍用動物です。





三大「え、お前って軍用動物なの!?」って思われがちな動物、第一位。
もはやこいつを軍用動物と呼んでいいのか分かりませんが、軍事に関わる猫は多いです。

海軍の軍艦に猫を同乗させる軍ってのは結構あります。
昔から船にはネズミ駆除のためのネコを乗せる習慣がありましたからね、その名残です。
が、このネコちゃんの存在が長い航海生活における水兵の心の支えになったりと、
士気の面では十分に活躍をしていると言っていいでしょう。
要は軍マスコットとしての仕事ですね。

ディッキン・メダル(動物専用の名誉勲章)を獲得した猫も存在します。
アメジスト事件において、英国軍艦アメジストは突然の砲撃によって多数の死傷者を出し、猫も負傷。
しかしこのサイモンという名の猫、負傷から立ち直ってまた元気にネズミを追いかけるようになり、
これが船員の士気を大いに向上させたと言います。この栄誉に勲章が送られました。
この話が本国や世界の新聞を賑わし、英雄となったのは英国軍としても広報上で役に立ってます。



ペンギン

三大「え、お前って軍用動物なの!?」って思われがちな動物、もはや第ゼロ位。

広報としての役割や、兵士の精神的安らぎを与える「軍マスコット」にはほかにも、
ノルウェー陸軍のマスコットにペンギンがいるのが有名。
このペンギンさん、立派に階級を持ってまして、なんと大佐。
ほとんどの兵士の上官にあたります。みんなペンギンに敬礼しなければいけない。
すげぇ。




ニルス・オーラヴ大佐(キングペンギン)に敬礼。