*あくまでも個人の意見、一例の紹介です。
*総論的な「自学のススメ」の前に、まず各論的なやり方を説明することにしました。
*大学に入ってからやる専門的な数学ではなく、大学受験用の数学を想定しています。

前回までのお話


高校で学習する科目の中で、最も自習しやすいのが日本史と政治経済、その次が数学、そして物理だと自分は考えています。
日本史と政経は本邦の歴史と社会の仕組みを学ぶことが主体であり、かつ小学校から繰り返し学習するので馴染み深く、「日本人としての一般常識」に属することも多いので勉強のし易さでは群を抜いていると思います。
数学は基本的には「論理的な思考」を辿っていけば理解できるものが多く、かつ答え自体は一意に決まっているものがほとんどなので、自分の解法・解答と模範解答を比較して迷うこともほとんどありません。物理の勉強も基本的には同じです。この点が、他人に添削してもらわないと上達しにくい記述問題のある英語や国語との大きな違いであり、数学は自学で伸ばしやすい科目です。


数学の自学に必要な3要素
数学の自学・自習で最も重要なことは「自分が主体的に学ぶ意志があること」、その次が「自習できると思うこと」、3番目は「教科書が理解できること」だと思います。1つ目の「自分が主体的に学ぶ意志があること」は言うまでもないですね(笑)。これがないとどうしようもないです。
2つ目の「自習できると思うこと」も大切です。学校や塾で教えてもらうのに慣れきっていて「初見の内容を自分で学ぶことができない」と「勘違い」している人が世の中にはいっぱいいます。でも、自分でやってみたら「なんだこんなことか」と思う人も決して少なくないと思います。
3つ目の「教科書が理解できること」…新しいことを理解する為の前提となる概念の知識・理解があり、かつ日本語が読めれば、少なくとも「高校の数学の教科書に書いてある概念」を理解することはそこまで困難ではないと自分は思うのですが、これができない人が少なからずいることも分かっています。

本稿で「前提となる概念を理解しているのに、教科書に書かれている新しい概念が理解できない」現象の対処方法を説明できれば良かったのですが、今もって自分には分かりません。以前「地頭シャッフル その3」に書きましたが、根本的に「抽象的な概念を脳みそが受け付けない人」もいますし、全般的に理解する能力が低い人に「数学を自学しましょう」はムリゲーです。身も蓋もないですが綺麗事を書くブログではないので、自分で数学の学習ができない人は他人から習ってください、としか自分には言いようがありません。


自学の方法論
数学の自学の方法は、かなりシンプルだと思います。

1⃣教科書で概念を理解する
2⃣問題演習をする
3⃣志望校の過去問演習をする

数学が得意な人と不得意な人の差は、1⃣「教科書の理解の深さが違う」と2⃣「問題演習のステップ幅が違う」だと思います。以下、1️⃣〜3️⃣について説明します。

1⃣教科書で概念を理解する
方法論としては、以前、本ブログで書いた「数学「必敗」法」の逆をやればいいのです。すなわち、

①定義を正しく理解する
②定理、公式の証明を自分の手でやる
③式変形を自分の手でやる

①「定義を正しく理解する」を最初から「正しく」理解するのは凡人には難しいのですが、通り一辺の説明を読んで分かったつもりになって(笑)、練習問題を解いたり式をいじったりしているうちに「ああ、こういうことか」と「腑に落ちる」感覚がつかめれば、まあいいかと思います。天才系には最初から「数学の世界の真理」が見えているのかもしれませんが、自分にはできません(笑)。
その際、②の「定理、公式の証明を自分の手でやる」は必須です。教科書に書かれている式変形を見た時は「分かったつもり」になりますが、まず分かっていません(笑)。証明は面倒でも自分の手でやって、式変形の過程や理由(なぜそのような変形をするのか)を理解しないと、その本質が見えてこないし結局使いこなせるようにはなりません。遠回りのように見えますが、これをやるかやらないかで「数学の到達点」が大きく違う気がします。


2⃣問題演習をする
教科書や教科書レベルの解説書で練習問題や章末問題が解けるようになったら、次は参考書・問題集を使った「問題演習」をおこないます。この時「自分が楽に解ける問題より、少し難しい問題」を選ぶのがオススメです。
ただこの「少し」が人によって全然違います(笑)。数研出版の参考書で言えば、教科書の次を「赤チャート」にしても解ける人もいるし、「白」「黄色」がちょうどいい人もいます。人によって「1歩」のステップ幅は違います。ステップ幅が小さければ、ステップ数を増やせばいいのです!!(一通り問題をやったら、次は自分のレベルアップ幅に合わせ、難易度を上げた問題集に取り組む)
必要なのは、「考えれば解けるレベル」「解説を読んで理解できるレベル」の参考書・問題集に取り組んでレベルアップすることで、「見栄をはって難しい問題集に手を出す」は本当に時間の無駄です(経験者談(笑))。どういう参考書でどの幅でステップを刻んでいくかは、世間で言われている「参考書ルート」を参考にするのもいいと思います。

1⃣項③「式変形を自分の手でやる」は②と重なることですが、問題演習での式変形も必ず自分でやりましょう。「解答を見て分かったつもり」は、その後ほぼ役に立ちません。「解答を見て理解できた」のなら、解答を見ずに全部自分で再現できるし、少々変化をつけた類題でも対応できます。本ブログで同じ問題を繰り返す「周回勉強法」を毛嫌いしている理由もここにあります。問題演習のプロセスとしては、

ⅰ:自分で問題を解く(または解けない)
ⅱ:解答を見て自分の解答プロセスを確認する(解けなかった場合や間違った場合は解答からやり方を学ぶ)
ⅲ:正答以外は自力で解答を作れるようにやり直す、正答でも別解がある場合は試す

このプロセスが正しくできていれば、同じ問題をもう一度やってできないなんて、計算ミス以外発生しないはずです。なまじ「周回することを前提にする」勉強法なんかやるから、最初に問題を解いた時の「ⅱ自分の解答プロセスの確認・修正」が雑になり、「身に付かない勉強」になるのだと自分は思っています。
数学の問題演習の目的は「初見の問題で〇が付くこと」ではなく、「自分の問題に対するアプローチで必ず解けるように、自分の思考プロセスを構築・修正すること」だと自分は考えています。ここで「周回すること」「量をこなすこと」に主軸を置くと、問題演習の目的を見間違うような気がします。


3⃣志望校の過去問演習をする
アラカルトに出題される問題集と違って、入試では制限時間内に複数の問題を解いて、合格に必要な点数を取る必要があります。問題演習がある程度進んでから、一度過去問のレベルを確認して、どの程度のレベルに到達しないといけないのか、見通しを持っておく必要があります。
「問題演習がある程度進んでから」というのは、教科書の内容を理解した程度では、数学の難易度の高い問題は「何を聞いているのか理解できない」か「どう解いていいか全く見当がつかない」からです。ドラゴンボールに例えると、「戦闘力5のおじさん」が、ラディッツの強さを理解できないようなものです。

過去問の使い方については、ここに書いているのでご参照ください。中学受験も大学受験も、過去問演習の本質は同じです。


以上が、「高校数学を自習する方法」になります。1⃣を手を抜かずにやること、2⃣を適切なステップ幅と質・量でやること、を心がけていれば、そんなに失敗するものではないと自分は考えています。