(1)要支援と要介護の報酬が一緒だった頃
介護保険が始まった時、要支援というのはさほど意識はしなかったと思う。単位の制限はあったが、ヘルパーやデイサービスの回数制限も無く、自由に使えたものだった。
ところが確か平成18年の改定だったと思うが、それまでの要支援が要支援1と2に分かれた。今までは要支援であろうが要介護であろうが居宅介護支援事業所が直接契約して介護サービスを調整していたのだが、これにより契約はお住いの圏域の地域包括支援センターが行い、居宅介護支援事業所に委託するという形になるとなった。
更に要支援者にはヘルパーとデイサービスで回数制限が設けられた。これにはケアマネも利用者も大混乱した。
今まで週に3回も4回もヘルパーに来てもらっていたのが、1回か2回になる。利用者の実感としては、自分は良くなっているわけでも無いのに、ヘルパーの回数を減らされたという事で、ケアマネがそのクレームを一身に受けた。
古くからのケアマネは紺時の混乱を忘れていないだろうと思う。そしてこの改定が良いものだと思った人はいないだろう。
(2)介護予防という都合の良い給付制限
この改定というのは今まで要介護1.2くらいの判定が出ていた人も要支援と判定される事が出てきた事だ。
つまり「要支援」とか「介護予防」という言葉を都合よく使えば、この今言われている「軽度者」である要介護1.2の人も「介護が必要無くなるように頑張りましょう」という括りに入る事になる。
そもそもであるが、高齢者は「頑張って」リハビリをしましょうとか言っても響く人は少ない。動かなくなってきている身体、老いていく恐怖と戦いながら、余生を如何に何も問題なく穏やかに暮らそうと思っているのに、「頑張らなかったら寝たきりになる」とばかりに尻を叩かれる。自分で出来るなら自分でやるが、自分で出来ないから人に頼むんだという人は、「頑張れば自分で出来るようになる」と言われても、「ふざけんな」としか思わない。
そしてこれは何よりも介護保険の給付制限につながった。ケアマネへの報酬も減った。そして何より書類が煩雑になり、「地域包括にケアプランをチェックされる」という嫌な気持ちになった。
そこで出てきたのは「要支援は受けない」という居宅介護支援事業所が増えた事だ。これにより地域包括支援センターの業務は爆増した。
個人的にはケアプランをチェックされるのは悪いことだとは思わない。むしろ、地域包括がチェックしてくれるおかげでお墨付きをもらうようなものだからだ。
しかし地域包括支援センターが指摘しすぎると、居宅介護支援事業所がへそを曲げて要支援を受けてくれないという事もありうる。だから地域包括支援センターのチェックも随分と気を使っているんだなと思うコメントもたくさん見て来た。
(3)軽度者の総合事業移管を見据えて
そして2024年の改定で介護予防も居宅介護支援事業所が指定を受けた上で直接契約が出来るようになった。しかしこのような経緯を知っているものからすると、いまさら介護予防の人を居宅介護支援事業所が直接出来るようになったからといってバンザイというわけにはいかない。
これぞ笛吹けど踊らずというやつだ。
これは今後、要介護1.2という人が軽度者として、要支援がそうであったように、地域包括支援センターが契約して行う、いわゆる「総合事業」への含みを持たせているのだろうと思う。
要介護1.2の人まで契約し、となると地域包括支援センターの仕事は更に増える。そうならない為にも、居宅介護支援事業所が直接申し込みをするような形を今から作っておくという事だろうと思う。
そういう目論見に対して、職能団体がどのように反発するかは見ものだが、今までの活動を見てみると、そこまで疑いの目を向けているとは思えない。
まあ、今後どうなるかは分からないが、制度を作る側も大変だなと思う次第である。
