マイナス思考が生きる危機管理 | ケアマネ時々卓球、時々その他

ケアマネ時々卓球、時々その他

仕事は介護、プライベートでは卓球を中心に、その他もろもろ思いつくままに書いてみます。テキトーな独り言です。

 

(1)介護という苦痛

介護保険が始まって25年たつというのに、このような事件を目にすることが多くなった。だからといって介護保険制度がおかしいというわけでは無い。一つは老老夫婦が増え、どちらかの介護負担が大きくなって支えきれなくなってやむにやまれず行動に出てしまうという事。ケアマネを始めとする在宅の介護職は、このようなセンシティブな問題にまで解決能力や権限が無いという、やはり「限界突破」の事例なのだと思う。

 

この担当ケアマネもこのようなことになるとは思っていなかったはずだ。

 

しかもケアマネの証言では奥様の施設入所を進めていたという。そこで旦那の方が奥様がいなくなった後の自分の心配もしていたとの事だともいう。

 

つまり問題のツボはまさにこれだ。介護保険はまさに利用者一人に対してのサービスである。その家族の事までは口も手も出せない。そう見ると、世帯ごとにどういう支援が必要かという大きな視点も必要なのだ。

 

(2)利用者介護、家族生活が苦しい

私のケースを紹介する。

数年前に亡くなったが、利用者(女性)と息子の同居のケース。息子は少ししか働かず、利用者の年金に依存している。環境は悪く、家にクーラーも無い状況だ。

 

単純にお金も無いから、介護サービスはほぼ使わない。更に医者にもかからない。それは「医者は信用できない」とは言うものの、お金を使いたくないというのは見え見えだった。

 

そこで必要な医療を受けさせないというのは虐待に当たり、通報義務があると話したところ、渋々訪問診療を受け入れた。1カ月もたたないうちに身体状況は悪化し、入院先の病院で亡くなったというケースだ。

 

この場合、私が提案したのは生活保護の申請だった。やはり完全なる生活苦では受けるべきサービスも受けられない。しかし息子は完全に拒否した。それは息子が借金をしていたという事もあるだろう。

 

本来、もっと介護サービスを使えば良くなるのに、と思っても家族のそういう経済的事情を含む考え方で折り合わない事は多い。それで状態が悪くなってもケアマネの責任では無いが、説得しきれなかったと考えれば残念に思う時はある。

 

(3)周りを巻き込む

このケースに限らず、虐待ケースや虐待疑いのケースを何件も見て来た。実際に虐待ケースとして認定され、保護されるには相当な時間と労力が必要になる。

 

おそらくケアマネとすれば「まだ地域包括に通報しなくても大丈夫」という思いもあっただろう。それにそこまでするとは夢にも思わなかったかもしれない。

 

だから本来は複数サービスでの視点が必要なのだろうが、大体は事件が起こった後に「そういえば…」という事が多いだろうと思う。

 

私は介護というのは本人だけでは無く、家族も苦しいものだという事を原則としている。だから「多分、無理だろう」という立場に立つから、利用者や家族が「大丈夫」といってもその先の事を提案する。それは利用者や家族にすれば大きなお世話であり、場合によっては失礼にあたるかもしれない。

 

私は根本、マイナス思考である。しかし「なんとかなる」というプラス思考では無くマイナス思考の発想というのは、実はこういう所で生きている。