(1)訪問介護事業者数が過去最多という記事
今年度、介護報酬引き下げの影響もあり訪問介護事業者の倒産件数が過去最多という記事を何度か書いた。それは実数として表れているものだ。しかし今回の記事はそれに対をなすかのような事業者数が過去最多という記事である。果たしてその実態はいかなるものか。
記事のもあるように、サービス付き高齢者住宅、住宅型有料老人ホームの増加に伴う事業者数の増加という事が要因である。
なるほど、と思う。
これからの介護ビジネスの中心はこれらの住宅型施設という事なのだろうと思う。つまり介護保険開始当初の「住み慣れた地域で暮らす」という事は、「住み慣れた自宅」ではない、という事になっていくという事だ。
まあ、制度というのは形を変えてでも維持していくものだからさもありなんという気はする。しかしケアマネの立場で言えばちょっと違うのではないかという気持ちも一方である。
(2)訪問介護事業所の維持によって支えられている
我が区の状況であるが、訪問介護の事業者数は62事業所。これは過去数年見ても増加傾向である。その中には当然、住宅型有料老人ホームの者も入っているが、我が国はそういう施設はあまりないので、実際に利用者宅に訪問する訪問介護事業者が殆どという事でもある。
これは我が区が商業地域というよりは住宅地域が多いことも理由であるだろうが、全体的に見て少人数で行っているところが目立つ。
という事は家賃が安いとか、自宅で行っているとか必要経費ギリギリのところで踏ん張っているという印象を持つ。
おそらく多くの利用者宅で仕事をする訪問介護事業所はそんな感じなのだろう。起業したこと、事業を続けたいという意地、倒産させたくないという気持ちで踏ん張っているのだろう。
方や住宅型の訪問介護は移動も少なく炎天下に晒されることも無く仕事が出来る。
だから本来であれば、施設をきちんと分けて対応すべきなのだが、報酬削減の理由にできるためか、そうはしない。
このままでは訪問介護とは名ばかりで、住宅型有料老人ホームに派遣するヘルパーの事を訪問介護と呼ぶ日が来るのかもしれない。
(3)我々の頃には
この事は今後、「要介護になったらどこで暮らすか?」という問いに対する答えにもつながってくる。
在宅に派遣する事業が充実していれば、「住み慣れた家で死ぬまで暮らせますよ」と言う事が出来る。例え家族の介護力が無くても、制度で死ぬまで安心して暮らせますよという提案が出来る。
しかし事業所が充実していなければ、「やはり施設に入った方が安心ですよ」という事になる。
結局、住み慣れた家で死ぬまで生活できるという理想は届かないものだったのだろうかと思う時がある。
我々、第二次ベビーブームの頃の介護はどうなっているのだろうか?そのことを考えることは杞憂だろうが、このような介護の移り変わりは把握しておきたいものだ。