(1)鼻先人参ぶら下げ作戦は上手くいかない
ケアマネジメントオンラインのページに「学会副理事長「このやり方は人手不足に悩む居宅に効果的」」とあったので、さぞかし名案が聞けるのかと思ったら「パート採用」という事でずっこけてしまった。
これは以前、訪問介護によく見られた失敗例だ。
介護保険が始まった当初、訪問介護の中心は登録ヘルパーだった。仕事がある時だけ働くという、いわゆる集約型労働である。確かに食事など業務が集中する時間帯はある。その時だけ働いてくれるという人は雇う方も雇われる方も都合が良いというものだった。
しかしこのモデルは崩壊した。理由は簡単。「介護は稼げない」として他の業界に行ってしまったからだ。特に訪問介護は利用者の状況によって急に仕事が無くなることもある。それであれば安定した仕事を求めるのは当然の事。
訪問介護の側も「頑張れば正社員と用もありうる」というのは打ち出していたが、雇われる側とすれば何をどう頑張れば正社員になれ得るのか分からないまま仕事をしていたことになる。
働く側は生活がある。その為に働くのであって、それは安定した給料を稼げるというのは大きな要因になるのだ。
(2)潰された人は戻らない
このような最初は修行のつもりで不自由かもしれないけど、段々出世していって、大成を目指すというモデルは、芸能人やスーパーサラリーマンという高給取りや有名人になる事が期待できる業界ならありうるかもしれないが、ケアマネ、特に一度辞めたケアマネが慣らし運転で、なんていう事は絶対にならない。
そもそもだが、まずケアマネは仕事である。何のために仕事をするかと言えば生活の為である。生活をするには、それなりの給料を得なければならない。
パートで慣らし運転なんてしている暇はないのである。
おそらくケアマネをしたことがある人は、それなりの条件や仕事の立ち位置などにやりがいを感じて飛び込んだ人が多かっただろうと思う。それが今人不足という事は、まず飛び込んでみたものの給料と見合わないという焦燥感や、実際やっている人を見て怖気づいて、今のままの方が良いと割り切った人が増えた事。要はケアマネという仕事自体が避けられているという事だ。
だから一度やって業界を離れた人はもう戻らないで、他の業界で生きていくことを決めた人だ。それがこの業界で通じなかったとしても、他の道で生きていけるのなら、生活できるのならそれで良い。
おそらくこういう案を出す人は、こういうこの業界で潰された人の気持ちを考えられない人なのだろうと思う。
(3)潜在ケアマネとは
この業界を長く見てきたが、色々な事で潰された人を多く見てきた。
それは利用者が理由の人もいれば、職場が理由な人も、制度が理由な人もいる。いずれにしても「もうこの業界とは関わりたくない」と見限って去っていった人だ。だから潜在ケアマネとか聞こえは良いけど、ただ資格を持っているだけで心はここに無い。
この業界で働く意思のない人、心のない人がパート職という慣らし運転でいかがですか?と言われても生活があるし結構です、となるのは当然だと思う。
制度も会社も「質の問題」としてついていけない人は切り捨ててきた。それはこの仕事を希望する人が沢山いて、多少辞めても大丈夫と言うなら良い。芸能人だってアナウンサーだってそうだろう。
しかし介護という仕事はそもそも「誰もやりたがらない」仕事である。だからこの仕事をしてくれる人は貴重な存在として守らなければならない。
おそらくそういう発想はこの人たちにはない。それはこの人たちは、自分が困っていないからだ。
やはり人の痛みを分かる人が発信して欲しい。