名義貸し、それとも兼務? | ケアマネ時々卓球、時々その他

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仕事は介護、プライベートでは卓球を中心に、その他もろもろ思いつくままに書いてみます。テキトーな独り言です。

 

 

(1)居宅介護支援事業所の管理者要件

まず、管理者要件をおさらいしようと思う。

 

「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について

第1 (略) 第1 (略) 第2 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

⑵ 管理者

指定居宅介護支援事業所に置くべき管理者は、主任介護支援専門員で あって、専ら管理者の職務に従事する常勤の者でなければならないが、 当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の職務に従事する場合及 び管理者が他の事業所の職務に従事する場合(その管理する指定居宅介 護支援事業所の管理に支障がない場合に限る。)は必ずしも専ら管理者の 職務に従事する常勤の者でなくても差し支えないこととされている。こ の場合、他の事業所とは、必ずしも指定居宅サービス事業を行う事業所 に限るものではなく、例えば、介護保険施設、病院、診療所、薬局等の業務に従事する場合も、当該指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない 限り認められるものである。 指定居宅介護支援事業所の管理者は、指定居宅介護支援事業所の営業時間中は、常に利用者からの利用申込等に対応できる体制を整えている 必要があるものであり、管理者が介護支援専門員を兼務していて、その 業務上の必要性から当該事業所に不在となる場合であっても、その他の 従業者等を通じ、利用者が適切に管理者に連絡が取れる体制としておく必要がある。 また、例えば、訪問系サービスの事業所において訪問サービスそのものに従事する従業者と兼務する場合(当該訪問系サービス事業所における勤務時間が極めて限られている場合を除く。)及び事故発生時や災害発生等の緊急時において管理者自身が速やかに当該指定居宅介護支援事業所又は利用者の居宅に駆け付けることができない体制となっている場合は管理者の業務に支障があると考えられる。また、併設する事業所に原則として常駐する老人介護支援センターの職員、訪問介護、訪問看護等 の管理者等との兼務は可能と考えられる。なお、介護保険施設の常勤専従の介護支援専門員との兼務は認められないものである。 なお、以下のような、主任介護支援専門員の確保が著しく困難である 等やむを得ない理由がある場合については、管理者を介護支援専門員と する取扱いを可能とする。 

・ 本人の死亡、長期療養など健康上の問題の発生、急な退職や転居等 不測の事態により、主任介護支援専門員を管理者とできなくなってしまった場合であって、主任介護支援専門員を管理者とできなくなった理由と、今後の管理者確保のための計画書を保険者に届け出た場合。 なお、この場合、管理者を主任介護支援専門員とする要件の適用を1 年間猶予するとともに、当該地域に他に居宅介護支援事業所がない場 合など、利用者保護の観点から特に必要と認められる場合には、保険 者の判断により、この猶予期間を延長することができることとする。 

・ 特別地域居宅介護支援加算又は中山間地域等における小規模事業所加算を取得できる場合 また、令和9年3月31日までの間は、令和3年3月31日時点で主任 介護支援専門員でない者が管理者である居宅介護支援事業所については、当該管理者が管理者である限り、管理者を主任介護支援専門員とする要件の適用を猶予することとしているが、指定居宅介護支援事業所における業務管理や人材育成の取組を促進する観点から、経過措置期間の 終了を待たず、管理者として主任介護支援専門員を配置することが望ま しい。」

 

つまり簡単に言えば、居宅介護支援事業所の管理者は必ずしも常勤である必要はなく、他の事業所の職務と兼務が可能ですよという事。ただし、他の事業所の常勤ケアマネとは兼務は出来ない。それはそこの事業所の人員基準で一人として換算されるから、他の事業所の仕事は労働時間の関係からも出来ないという事である。

 

だから、主任ケアマネの資格を持っている人がいれば、別に正規雇用しなくても居宅介護支援事業所としての管理者要件を満たすことになる。

だから記事のように実際に仕事をしていない、仕事をする気も無い人を管理者に据えて事業を行う事も現実的に可能である。これを名義貸しと言って、それを行う事業所は少なからずあるだろうと思う。

 

(2)ヘンな人員基準

人員基準を設けるのは、その事業を行うのに最低限の確保という事だからそれはそうだと思う。しかしイチから事業を立ち上げるとなると、例えば訪問介護だと2.5人という人員基準があり、その人件費をカバーできるまでは赤字になる。それは経営者にとっても痛い。

ましてや居宅介護支援事業、ケアマネは併設されたサービスに利用者を呼び込むためにも必要な事業だから、どうしても欲しい事業の一つである。しかし管理者要件に主任ケアマネが必要となった今、どうやって確保するかは色々と考える。名義貸しはその中で出した答えの一つだ。

 

記事には「昨年8月、事業所としての指定を受けた際、他事業所の職員として勤務しており、実働が期待できない主任ケアマネジャーを管理者として申請。その際、勤務予定のない人の雇用契約書や秘密保持誓約書、辞令を偽造するなど不正な手段によって人員基準を満たしているかのように偽装してもいた。」とあるが、好意的に見れば、名義貸しした人もそのうちにこの事業所に来るという口約束があって、今は前の事業所を辞められないから、とりあえず名前だけは使って良いよ、みたいな話だったのかもしれない。それが退職の意思表示をしたが慰留されたりで状況が変わり、そのままになってしまったというケース。

 

それにこの経営者は、主任ケアマネをどうやって確保しようか悩みぬいただろうと思う。

 

そもそも居宅介護支援事業所の管理者要件に主任ケアマネが必要か否かの議論はあるが、介護事業所というのは運営側が「?」と思う基準も無いわけではない。

 

例えばデイサービスの機能訓練指導員だが、極端な話、1か月に1時間でもいればよい。(今は違うかもしれないが)

 

そういう基準を次々と作られ、ただでさえ儲からない介護事業所の経営者としてはどうやって無駄な出費を抑えて事業を継続するかを考えるのは当然だ。名義貸しはなるべくしてなったといっても良い。

 

もっとも介護事業を行うなら、基準を満たすのは最低条件であるというのは言うまでもない。しかしその法解釈がどこまで許されるのか、という曖昧な所の勝負なのだという事である。

 

(3)儲からない事業だからこそ

こういう隙間をつくような事は儲かる儲からない関係なく起こる事だと思う。しかし事業を継続しがたいほど儲からない事業であるからこそ、どこに抜け道があるのかを考えるのは当然だ。

 

そんなに儲からなくてとか言って愚痴を言うなら辞めればよいじゃないかというかもしれないが、事業を始めるというのは、事業を撤退することを前提として始めるわけではない。やはり一旦始めたのであれば引くに引けない「弱さ」が出て来るものだ。やはり何かものを持つという事は、それを失う恐怖を背負うという事だ。だからその覚悟が無ければそもそもやらない方が良い、というのがセオリーだろうと思う。

 

それでもやったもん勝ちという考えもある。

最初は色々と怪しいかもしれないが、状況が整うにつれて、環境整備も出来るだろうという考えだ。

 

介護事業というのは、儲かる仕事ではないし、福祉という特質上、必要以上に倫理観が求められる。どんなに利用者に大変な目に合わされて疲弊しても、書類に一文が無いだけで、その仕事がパーになるなんてことがザラにあるのだ。

 

この名義貸しの事業所に同情する気は無いが、多くの事業所がもがきながら頑張っているんだな、と思う。