(1)原告敗訴
以前からこのブログでも取り上げていた訪問介護ヘルパーの損害賠償訴訟は原告の敗訴で終わった。
原告の主たる訴えは「訪問介護ヘルパーが低賃金で労働条件も劣悪なのは、国が規制権限を適切に行使しなかったため」とあった。「事業所が職員に十分な給与を支払える介護報酬ではないため、利用者宅への移動や待機時間などの一部賃金の支払いを受けられず、介護保険制度に問題がある」と主張するも、一審二審ともに「未払い賃金は事業所が是正すべきだ」などとして退けたという形になった。
(2)判決として
法的解釈とすればその通りなんだろうと思う。
そもそもどんな事業であれ、見込みの収入があり、それで賃金がどれくらいと決まる。応募する側はそれを分かって応募して働くわけだし、移動や待機時間の給与未払いはあくまで事業所側の問題である、という事だろう。
これはよく待遇改善を訴える場面や仕事の愚痴でよく聞かれる論法である。色々文句はあるだろうが、それは最初から分かっていたことで嫌なら辞めればいい、職業選択の自由は労働者にあるという事で帰結してしまう。
それがこれからの業界の没落とか危機感後いうのは関係ない。そういうことを勘案しながら政策を作るのは立法・行政の側で、司法というのは関係ない。
だから裁判所側は制度の課題がある事は認めつつも、このような判決を出したのはその通りだと思う。
(3)ヘルパーの置き土産
このヘルパーたちはこうした判決を予想しながらも戦ってくれたのだと思う。しかもかなりの高齢。自分たちの置き土産としてこの裁判を提起してくれたのだと思う。
今までの現場の姿勢はどうだっただろうか。ハッキリ言えば人任せだったのではないだろうか。自分たちは仕事で忙しいのだから、そうした環境整備は経営者の責任だ、とばかりに他責志向になっていたのではないだろうか。
だからこの判例をもって、これからの人たちがどう戦うか、という事だと思う。3/13にはデモも行われたようだが、小さなことでも声を上げなければ話は進まない。
このヘルパーさんたちには心からお疲れさまとねぎらいたい。