居宅介護支援事業所の根本的な問題とは? | ケアマネ時々卓球、時々その他

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仕事は介護、プライベートでは卓球を中心に、その他もろもろ思いつくままに書いてみます。テキトーな独り言です。

 

 

(1)主任ケアマネをざっくりいうと

令和9年3月までは経過措置で以前よりあった居宅介護支援事業所の管理者は介護支援専門員の資格でできるが、4月からはその経過措置が無くなり、全事業所で管理者が主任介護支援専門員(主任ケアマネ)になる。その為に今研修が行われているし、自治体からもアンケートが送られてくる。

 

主任ケアマネとは「他の保健医療サービス⼜は福祉サービスを提供する者との連絡調整、他の介護⽀援専⾨員に対する助⾔、指導その 他の介護⽀援サービスを適切かつ円滑に提供するために必要な業務に関する知識及び技術を修得することを⽬的とし て⾏われる研修を修了した者。【施⾏規則第140条の66第1号、第140の68第1項第1・2号】」と定義されている。(第143回社会保障審議会介護給付費分科会資料より)

 

つまり普通のケアマネと何が違うのかと言えば「他の介護支援専門員に対する助言」、定義からすればそれだけという事になる。

 

しかし拡大解釈をすれば、無くなるとはいえ区の推薦要件として、以下のような条件が挙げられている。

 

受講を希望する介護支援専門員の必須要件 

①推薦する区市村町内での実務経験が2年程度以上あること。 

②地域包括支援センター又は関係機関と連携し、虐待など困難事例等のケア マネジメントを担当したことがあること。又はケアプラン質の向上検討会 に事例を提供したことがあること。

 ③地域包括支援センター等が主催する研修会、事例検討会、ネットワーク作 りのための情報交換会、地域連携会議等に概ね7割程度以上出席する等、 積極的に参加していること。 

④当該研修終了後、最低1年間は、引き続き区で働く予定があること。 

⑤過去2年間の区の研修に50%以上参加していること。

 ⑥所属する事業所が〇〇区介護サービス事業所連絡会に加入し、介護支援 専門部会の会議や研修会等の活動に積極的に参加していること。 

⑦勤務する事業所において、一定以上の実務経験年数があり、かつ指導的 な立場にあること

 

研修修了後の協力

(1)区市町村が行う事業に派遣依頼があった場合は協力をすること。 

(2)区市町村及び地域包括支援センター等からの支援困難事例の受け入れに積極的に取り組むこと。 

(3)地域貢献や他の事業所の介護支援専門員に対する指導・助言などの役割 を担うこと。(研修修了者の名簿を〇〇区内の居宅介護支援事業所に周知し ます。) 

(4)上記(1)から(3)を法人代表者と研修受講希望者は十分に協議し、 受講終了後の取組について、別紙の同意書に具体的に記載すること。 

(5)勤務先の変更・退職時には、区市町村主任介護支援専門員担当まで、そ の旨を連絡すること

 

これは区の推薦が必要無くなるとはいえ、区が主任ケアマネ、すなわち居宅介護支援事業所に求める事になるだろう。区の推薦が無くなったり、誓約書を書かなくても、これらのことはこれからの居宅介護支援事業所は行わなければならないことになると予想する。

 

(2)噴飯極まりない論調

記事には昔は主任ケアマネは人気資格だったとか云々あるが、何のことはない。一般のケアマネはそもそも興味すらなかったものだ。要するに地域包括支援センターに勤めるとか目的があれば資格を取るだろうし、とりあえず「偉くなりたい」奴は受講するだろう。

 

それと噴飯極まりないのは「「質」の悪いケアマネ受講者をふるい落とすために設けられた、という理由もあった。」(文中より)という下り。

「特に訪問介護やデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などの系列の事業所に従事しているケアマネの一部には、中立・公正性に反し、自前の介護事業所のサービス利用を促すケアマネも少なくなかった。いわゆる「囲い込み」と言われる行動である。なかには、ケアマネが「セールスマン」然とした役割を果たしている例すらあった。

このようなケアマネに主任ケアマネの研修受講を控えてもらうため、市区町村による推薦という要件が課されたという背景もあったのだ。市区町村は実地指導などを通し、「セールスマン」的なケアマネの情報は、かなり把握していたから、「推薦」の存在は、中立・公正性という「質」を保つ上では、一定の効果があったといえるかもしれない。」(文中より)

 

そもそもの話だが、居宅介護支援事業所の経営はほぼすべての事業所が赤字経営と報告されていた。介護保険設立当時は独立した居宅介護支援事業所は皆無に等しかったと言って良い。ではどうするかと言えば、ほかの収入から居宅介護支援事業所にお金を回さざるを得なかったのだ。

ほぼすべての事業所が併設サービスを持っていたから、当然自社のサービスを使わせるような仕事になる。営利法人なら当たり前のことで、なんでほかの会社の利益になるようなことをするのか意味が分からない。

 

それを良くない事とか、「質」が悪いというのであれば、最初から、そして今も居宅介護支援事業所は併設サービスを認めないという形で設置するべきではないか。

 

それと「囲い込み」と批判するのであれば、なぜ集中減算は80%なのか。そんな批判するのであれば、「自社へのサービス誘導は行わない。自社のサービスを利用するのであれば区に報告する」という事を義務付ければよいではないか。

 

そもそもの制度の欠陥を居宅介護支援事業所のせいにする大学教授って、結局対岸の火事という程度のものなんだなって、思う。

 

(3)すべての居宅介護支援事業所が独立すれば問題は解決する。

 

ではなぜ今になって独立した居宅介護支援事業所が増えてきたのか。

それは併設サービス側が居宅介護支援支援事業所を必要としなくなったからだ。

訪問介護でもヘルパーの不足により受け入れられるキャパが以前より少なくなってきた。今後の事業展開として、これ以上拡大しないとか店じまいをするという考えもあるのだろう。つまりケアマネが営業マンとして雇う意味が併設サービス側に無くなってきたという事だ。

 

つまりは介護保険制度全体の衰退で、これ以上経営の伸びを期待できないから規模を縮小しているにすぎないのだ。

 

居宅介護支援事業所は公平中立な立場というのは賛同する。しかしそれは非営利なら分かるが、赤字事業だからと営利法人に押し付け、その結果事業所の中で軋轢が起きてケアマネが疲弊し辞めていくという構造を理解できない大学教授。

 

居宅介護支援事業所は、我が社のように併設サービスを持たない独立した形でこそ成り立つ。

 

そもそもそこに行きつかない時点で、ろくな論説ではないと批判しておこうと思う。

 

後、そもそもの話だが、ハードルを上げれば上げるほど事業は難しくなるから、弱肉強食は加速していく。

ただでさえ人不足と言われているのに、さらにハードルを上げるというのは自殺行為だと思うのだが、国は自分のメンツさえ保てれば、人のことなんてどうでも良いんだろう。

 

つまりは居宅介護支援事業所が営利法人であるうちは望みがないという事である。