(1)要介護認定というのは実に厄介
要介護度には要支援1.2の2段階+要介護1~5までの5段階で評価される。それぞれに給付限度額が設定されており、要介護度が重くなれば重くなる程使える単位は増える。逆に軽くなれば使える単位は減る。
制度的に考えれば、要介護度が軽くなったという事は身体状況が改善したという事であり、それだけ介護サービスも使わなくなるだろうという前提に成り立つ理論である。これが記事のような問題をはじめ、大きな波紋を呼ぶ事になり、ケアマネとしても頭の痛い問題の一つである。
(2)利用者にすれば要介護度が軽くなるのは「損」
介護サービスを利用する高齢者にとって、最初に組んだケアプラン、週間予定は重要だ。
ヘルパーの入る回数やデイサービスにどのくらい行けるか、ある程度利用すればその生活にも慣れる。上手くいけば身体状況の改善にもつながるだろう。しかし更新して要介護度が軽くなったら、今まで利用していた回数程は使えないという事がよくある。すると、せっかく友達が出来て楽しかったデイサービスもやめなければならないという事も出て来る。
利用者からよく言われるのは「年を取って身体が弱くなっているのに何で軽く判定されるのか?」という文句を言われたケアマネは多いはず。本来であれば、要介護認定が軽くなって介護サービスを使わずに自立した生活が出来るようになっておめでとうございますという所を、要介護度が軽くなって介護サービスが減って残念ですね、という事になる。
だから人によっては、調査の時に調子が悪いふりをしたり、下手をすると調査員に「要介護〇になるように書類を書け」と脅したりするという事も起こり得る。
(3)介護保険制度の根本的な問題は
そのあたりを考えれば、要介護認定で給付制限をかけるという事は問題も多い。介護サービスの量は、家族の介護力如何で軽度者と言われる要支援~要介護2くらいの人でも相当量を入れなければならない場合もあるし、要介護3~5までの人でもさほど使わない人もいる。つまり個別の問題なのである。
ケアマネが公務員、もしくは他のサービスを行わない独自事業のみだったら、もう少し違っただろう。しかしケアマネはほぼ全員が民間であり、何がしかのサービス事業所を併設している。自分の会社のサービスに呼び込む営業マンとしての性格もある。
そのあたりから要介護度の給付制限、一つの事業所のみを使わせない集中減算などの制約が加えられるのだ。
根本的に介護保険制度というのはつぎはぎだらけの制度に思っている。記事のようなことは許されないが、その根っこにはこのような介護保険制度の問題がある事は介護に携わるものであれば分かると思う。
