(1)介護保険は24歳。人で言えば成人。
令和9年4月からは居宅介護支援事業者の管理者になるには「主任ケアマネ」という資格が義務付けられる。介護保険が始まってから24年、介護認定者の増加に伴いケアマネの数も増え、覚えるべき知識を増えた今、ケアマネには上位資格を取ってもらってというのは理解しないでもない。
今までも各ケアマネは利用者に向き合ってきたと思うが、ケアプラン作成も今はより「自分らしく」という事が言われている。逆に言えば画一的なプランで、というのがツッコミどころなのだろう。それが主任ケアマネを管理者に義務付けることにより、「自分らしく」を促進するという事だろうから、分からないでもない。
(2)主任ケアマネの役割とは何か。
厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」で中間整理の素案(たたき台)が発表されたので見てみる。
「○ 主任ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターといった場に依らず、引き続き、他のケアマネジャーを指導・助言する立場として重要な役割を担いつつ、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターそれぞれの役割に応じた専門性を発揮できるようにしていくことが重要。」
ん?
「○ 具体的には、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーは、保健師及び社会福祉士とともに、居宅介護支援事業所との連携を深めながら、他の関係機関や関係者と地域包括支援ネットワークの構築を行うこと、生活支援コーディネーター等と連携し、地域の現状を把握・分析し、将来像やニーズに合わせた社会資源の掘り起こしを行うこと、地域ケア会議を通して、他の専門職や関係者と連携しながら、地域における課題を解決するための方策を検討すること等の役割が期待。」
んん?
「○ また、個々の居宅介護支援事業所内においては、主任ケアマネジャーが事務的な管理業務に時間を費やし、現場のケアマネジャーの指導が十分にできていない状況があるとの指摘。主任ケアマネジャーは、独居高齢者、認知症高齢者、成年被後見人といった対応が難しい事例への様々な支援や、当該事例に対応するケアマネジャーの指導・育成といった役割に重きを置いていくことにより、地域におけるケアマネジャー全体の質の向上に貢献することが求められる。
○ このように、主任ケアマネジャーは、地域や居宅介護支援事業所内における比較的経験の浅いケアマネジャーへの指導・育成の役割があることを踏まえ、国は、制度的位置付けを明確化することを検討するとともに、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのそれぞれでの役割に応じた評価の在り方についても検討することが適当か。」
主任ケアマネが一般ケアマネの指導者の位置づけというのだけは一応分かった。
しかし、「ケアマネージャー」という仕事と「地域のコーディネーター」という仕事が混在している。
要するに何がおかしいかといえば、個々の事例に対する対応の他に地域の仕事もやれという、本来行政が行わなければいけない仕事も押し付けている事だ。
さらに言えば、一般の居宅介護支援事業所と地域包括支援センターでは連携は必要なものの、業務は別物。
地域包括のやらなければならないものに協力はすれども、協働するものではない。
つまり、主任ケアマネとして働くという事、居宅介護支援事業所の管理者は勿論、地域包括や行政の仕事もタダでやることを義務付けるという事と解釈している。
それは果たして正しいのだろうか?
(3)本質を見て欲しい
主任ケアマネというより、今はケアマネの試験に合格したら、どこかの事業所で実習が義務付けられている。
実習の謝礼が出るところもあるが、出ない所もあるようだ。
実習では何が義務付けられているのか、受けたことが無いから分からないが、ケアプラン作成、モニタリング、担当者会議など一連の業務に同行するとなると、利用者の調整を含めて膨大な作業になる。当たり前だが、こんな事は受けたくないだろう。
「○ 主任ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターといった場に依らず、引き続き、他のケアマネジャーを指導・助言する立場として重要な役割を担いつつ、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターそれぞれの役割に応じた専門性を発揮できるようにしていくことが重要。」という趣旨は分かるが、「このくらいいいだろう」という行政の押しには本当に辟易としている事業所も多い。
しかし、下手に断ると実地指導が来るのではという恐怖もあるから受けるしかない。
おそらく貢献したいという気持ちはあろうが、それよりも行政に目を付けられたくないという恐怖の方が勝っていると思う。
様々語ってきたが、居宅介護支援事業所の管理者要件に主任ケアマネはいらない。個人的にそう思うから、令和9年3月をもって我が事業所は閉鎖するという事をここに記しておく。