(1)ヘルパー訴訟は「乱」か?
ヘルパーが国を相手にした訴訟の件、これはヘルパーが起こした「乱」なのだろうか。普通「乱」といえば「反乱」とか「混乱」とか、場を乱すことを言う。もしこれを「乱」というのであれば、お上に楯突く「乱」ということなのだろう。
介護保険開始当初、特に訪問介護は「集約型労働」と言われてきた。仕事に必要なヘルパー講習は主婦で溢れ、所によっては抽選でないと受講できないありさまだった。
訪問介護は忙しい時間は重なるもの。
例えば食事の時間は、Aさんは12時に、Bさんは13時、Cさんは14時というわけにはいかない。当然だが一人のヘルパーでは対応できない。そうするとその忙しい時間だけ稼働してくれる人が欲しい。そして主婦もフルタイムでは働けない。そこで「登録型ヘルパー」というのはある意味利害が一致したものであった。
(2)訪問介護の問題、一例
しかし働いているうちに問題は発生する。
①移動、待機時間。
記事のようにAさん宅からBさん宅までの移動時間は時給が出ない。またデイサービスの送迎で、送り出しが9時で迎えが16時で、その間は全く仕事が無いが待機はしていないといけない。
②急なキャンセル。
例えば癌末期の利用者。
おむつ交換や何やらで、一日数回毎日入ることになったとする。ヘルパーの方はスケジュールを開けておく。当然だろうが入るであろう給料も計算しているだろう。しかし数日で亡くなってし待った時は、空けておいてたスケジュールはパーになる。
又高齢者の急変時。行ってみたら倒れていたという事もある。それでヘルパーが救急対応してかなりの時間拘束される。場合によっては入院準備までする場合もあるだろう。これら一連の事は無給である。
③あまりにぞんざいな扱われ方
それに新型インフルエンザ、コロナ禍ではウィルスの媒介としてぞんざいに扱われてきた。場合によっては消毒液を吹きかけられた人もいたという。
(3)プライドを持てと言われ、プライドを傷つけられる
我々が目指すべきは高齢者を在宅で生活できるよう支援する事を「業」とする身近な専門家である。これは国は目指す在宅介護の方向性として間違いではない。ヘルパー講習でも法の順守をはじめ、様々な知識を学ぶのはそのためである。
しかしその扱いはというと、家政婦の域を出るものではない。中には便利屋のようにあれもこれもと要求するやつもいる。ひどいのになるとヘルパーを替えるぞ、事業所を替えるぞと脅して来る。
ヘルパーの中にはこれだけの事をしているのに、こんな待遇なのかと愕然とした人もいるだろう。他に良い条件の仕事があれば辞めてやる!という多くの蓄積が、今の状況を作ってしまった。
「福祉は慈善事業、ボランティア」といった前時代的な考えからの脱却を図る過渡期なのかもしれない。
(4)この活動はもっと評価されるべき
このヘルパーたちの活動は決して「乱」ではない。その証拠に彼女たちは自分たちが働いていた事業所訴えたわけではないからだ。これは仕事を引退する前に、少しでも介護の現状を世に示すための活動である。
これを全国の訪問介護事業者連絡会が支援しないというのも介護の現状である。