(1)現場の声は役人に届かない理由
もう、随分前の事になる。
私が勤めていた老人ホームで研修があった。講師は元厚生省の人で、何でも研修をやらせろと法人本部に言ってきたらしい。役人の天下りと言うのはよくあるが、こうした研修講師とかでも稼ぎに走っている連中というわけだ。
研修の後、接待の席があり、私も同席させられたが、福祉の現場の苦労などは鼻にもかけない様子だった。「ちゃんとやっているところもあるんだから」という事で、問題がある施設はやり方が悪いとしか認識していない。
(2)現場の苦しさより制度の成功
おそらく今後訪問介護で倒産や事業廃止をするところは増えるだろうと思う。しかし同時に今の事業所がそのシェアを奪い合う構図になるだろう。だから結局は変わらない。
そして現場でいくら声をあげても改善されることは無い。抜け駆けするやつがいるからだ。ヘルパーでも「やる気がなえた」と言って退場する人もいれば、チャンスとばかりに進出する人だっている。
今回の訪問介護の報酬減も、役人にしてみれば「ちゃんとやっているところもある」という理屈で通すのだろう。彼らにしてみれば制度が成功すれば良いのだから。いや、失敗しても自分の天下り先があって食い扶持が確保できればそれでもいいのか。
(3)もっとだらしない議員
議員も「問題は認識している」「危機感を感じている」と耳障りの良いことは言う。でもそれは何十年前から言っている。つまり改善する気は無いのだ。
議員も役人も世の中が上手くいくかどうか、制度が成功するか否かなんて考えていない。考えることは保身だ。
議員の裏金問題だって「書類は無いが、適切に使われていると認識している」という理屈が通るのであれば、税金を真面目に払う方だってバカバカしくなる。
(4)負け犬の遠吠え
「議員や公務員は介護の苦労を分かっていない」「一日でも研修にきたら良い」「我々がボイコットしたら大変なことになる」とか言う声もあろうが、ハッキリ言えば負け犬の遠吠えと理解したほうが良い。
今回訴えを起こしたヘルパーさんたちには本当に敬意を表する。しかし結果を見れば圧力団体が無い事、選挙の票田になりえない存在は弱いという事を認識させられた結果とも言える。
更に結果としてサービスを受ける高齢者は「やる気がなえた」職員のサービスを受けなくてはならない。
これだけでも不幸な気がするのだが。