人を好きになる、嫌いになるという事は裏腹なものだと思う。
本当に簡単に、感情というものはもてあそばれる。
私の場合は両親ともさほど介護の手間はかからなかったが、利用者でこんな人がいた。
86歳の女性。
病気と言えば高血圧くらいなものだったが、歩行が大変になってきた。家が二階で、私が訪問する時は一階で対応した。
ある日、定期訪問した。
ここ数か月階段から降りるのが大変だとか言いながらも足取りはしっかりしていたのでそのままにしていたが、虫の居所が悪い日が増えてきた。
その日も、案の定、私に食って掛かり「本当に大変なのよ!」とずーっと話す。
最初の頃は黙って聞いていたが、私もイラっとして「この訪問は義務付けられているもので、その話は何度もしてあなたも家族も了承している。今日もあなたが指定した日だから調整してきた。それでこんなこと言われるんならどうしたらいいんですか?」と言い返したら、途端に態度を変え「あなたは言いやすいから、つい言っちゃうのよ。」
私は「言わんとすることは理解はするが、いわれのないない罵倒をされるこちらの身にもなってほしい。」と言いました。
介護に携わるものとしては賛否のある言動だとは思う。
でも言い過ぎたとは今でも思っていない。
体が動かなる辛さ、やり場のない怒りがあることは重々承知しているが、介護職員がサンドバックのように受け止めなければならないとは全く思わない。
おそらくこれが私の限界なのだと思う。
だから、そんな姿勢では高齢者に失礼だからやめろという意見もあるだろう。
ご安心を。あと数年でやめるから。
ただ、この仕事をしていると高齢者は絶対善で、何か問題があるとこちらの対応のせいにされたりもする。
怒りをぶつけて来る高齢者に笑顔で返すことのできる人はどれだけいるだろうか。
おそらく、介護職が敬遠される一つの理由がここにあると思う。