文化庁文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、1月15日開催の令和5年度第6回で「AIと著作権に関する考え方について(素案)」(資料1-1,資料1-2)を了承しました。今後、パブコメを実施した上で、2月下旬に最終案をとりまとめる段取りです(参考資料5、日経電子版[共同]2024年1月15日)。
小委員会は昨年7月より議論を続けてきました。主要な論点(2023年7月26日開催令和5年度第1回小委員会、資料3)は以下です。
1 学習用データとして用いられた元の著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する基本的な考え方(類似性・依拠性の考え方や事例研究)
2 AI(学習済みモデル)を作成するために著作物を利用する際の基本的な考え方(「非享受目的」に該当する場合、著作権者の利益を不当に害することとなる場合)
3 AI生成物が著作物と認められるための基本的な考え方(利用者の創作意図や創作的寄与に関する考え方や事例研究)
素案の内容は、著作権法をよく理解していることが前提のようで筆者には難しいのですが、なんとか理解できる範囲では、
・特定のクリエイターの著作物のみを学習データとして追加することで、そのクリエイターの「作風」に似せた生成物を作らせる場合は「享受目的が併存する」と考えられ、著作権法第30条の4(著作物の権利を害さない行為、スター綜合法律事務所2018年11月19日の解説)は適用されない(p17)
・作風や画風といったアイデアが似ているといった程度で、既存の著作物との類似性が認められなければ、著作権侵害とはならない。ただし、アイデアと創作的表現との区別はケースバイケース(p20)
・著作権者が(学習データとして使用されることに)反対の意思を示していることだけで、著作権法上の権利制限規定(著作権者の許諾なく著作物を利用できること)の対象から除外されると解釈することは困難(p22)
他にも色々勉強すべきことがありそうです。ただその一方で、ChatGPT(くすり×リテラシー2023年2月5日、2月8日、2月16日、2月20日、3月12日、3月26日、3月30日、4月5日、4月7日、4月14日、4月16日、4月23日、5月9日、5月29日、6月27日、6月30日、7月5日、7月13日、7月20日、2023年5月)やPerplexity.ai(くすり×リテラシー2023年2月5日、2月6日、3月12日、3月27日、5月9日)の利用の広がりはすさまじく、AIのガバナンス(くすり×リテラシー2024年1月9日)が整備されるより遥かに速く現実が進むような気も……。
(2024年1月24日追記)
パブコメ募集になりました。締切は2月12日(文化庁2024年1月23日、e-gov2024年1月23日)。