オリンピックで盛り上がる(くすり×リテラシー2021年7月24日7月27日)一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は第五波(くすり×リテラシー2021年7月16日)に入っていて、特に東京では28日の新規の検査陽性者数が3177人と過去最多になりました(NHK2021年7月28日)。ただしその内訳は、30代以下が約7割を占め、60代以上は5%と、これまでより高齢者の割合が少なくなっています。高齢者のワクチン接種が進んでいることに加えて、外があまりに暑いので熱中症対策もあって外出を控えている人が多いことも関係しているのではないかと推測します。

 

第五波の流行は、感染力を増したインド発のデルタ株(B.1.617.2、くすり×リテラシー2021年6月19日)への置き換えが進んでいるためです。7月28日開催の厚労省第45回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出された変異株への対応(資料4)によれば、デルタ株の割合が増加中です(資料4の③)。

 

その中で、少数ながらワクチン接種済みの人でも再び感染してしまう例があることが問題となっており、ブレイクスルー感染と呼ばれています。その定義は「COVID-19ワクチンを規定通りに接種して14日以後に、呼吸器検体から新型コロナウイルスのRNAまたは抗原が発見されること(the detection of SARS-CoV-2 RNA or antigen in a respiratory specimen collected from a person ≥14 days after receipt of all recommended doses of an FDA-authorized COVID-19 vaccine)」(MMWR2021年5月28日)です。

 

イスラエルのSheba医療センターの医療従事者におけるブレイクスルー感染について、7月28日にNEJMに論文が発表されました(NEJM published July 28, 2021. DOI: 10.1056/NEJMoa2109072)。同センターには1万2586人(!)もの医療従事者(ボランティア、学生含む)がいて、2020年12月19日から2021年4月28日までの間に91%(1万1453人)がワクチン(Pfizer製BNT162b2)を接種しました。最初の人が2回目接種を受けた11日後からブレイクスルー感染の調査を開始し、4月28日までに39例がブレイクスルー感染と同定されました。多くは軽症または無症状でしたが、19%は症状が6カ月以上続きました(いわゆるロングCOVID)。

 

さらに、この39例を症例、ワクチン接種前の中和抗体のデータがあり、年齢、性、2回目接種から抗体検査までの期間、および免疫抑制の程度で調整した104例を対照とする症例対照研究を行いました。その結果、症例では再感染前の中和抗体のレベルが低かった (症例/対照比 0.361、95%CI 0.165-0.787)ことが分かりました。

 

デルタ株ではBNT162b2の効果がやや下がる(くすり×リテラシー2021年7月23日)という報告もあるので、ブレイクスルー感染が増えるかもしれません。インフルエンザでも異なる株に再感染することがあるのと同じと理解しました。