新型コロナウイルスの変異株は、WHOの決定(BBC日本版2021年6月1日)により、ギリシャ文字で区別されることになりました。WHOのまとめによると以下です。

中国or武漢株(元の株) →特に呼称なし

英国株(B.1.1.7 )    →α(アルファ)株(くすり×リテラシー2020年12月27日2021年4月7日

南アフリカ株(B.1.351 ) →β(ベータ)株

ブラジル株(P.1)     →γ(ガンマ)株

インド株(B.1.617.2 )   →δ(デルタ)株

 

ベトナムでは既に、英国(α)株とインド(δ)株が組み合わさった新しい変異株が出現している(BBC日本版2021年5月30日)ので、今後もこのギリシャ文字は増えていくでしょう。こうした名称変更は、「名前による偏見を取り除く」ためだそうです。インド料理店が風評被害にあっている(時事2021年6月16日)という報道もあるので、確かに偏見はあるのでしょうが、発生(報告)された地点で呼ぶほうが格段に分かりやすいとは思います。元のウイルスは武漢株(くすり×リテラシー2020年3月2日7月8日)でしょう。
 

目下の懸念は、インド株改めδ株が世界的に広がっていることです。ただし、英国政府は、δ株に対してもCOVID-19ワクチンの2回接種が有効と発表しました(GOV.UK2021年6月14日)。根拠となる論文はMedrxivに5月にプレプリント(DOI:10.1101/2021.05.22.21257658)として発表されています。結果は以下で、著者は(1回だけではなく)2回接種が重要と指摘しています。

 

・BNT162b2(Pfizer/BioNTech製、コミナティ)の2回接種の有効性

英国(α)株 93.4%(95%CI:90.4-95.5)

インド(δ)株 87.9%(95%CI:78.2-93.2)

・ChAdOx1(AstraZeneca製)の2回接種の有効性

英国(α)株 66.1%(95%CI:54.0-75.0)

インド(δ)株 59.8%(95%CI:28.9-77.3)

 

日本の集団接種ではコミナティとモデルナの2種類のワクチンが使われていますが(くすり×リテラシー2021年6月18日)、モデルナのインド(δ)株に対する効果については情報がまだありません。ただ、NIAIDのファウチ所長はワシントンポストの取材に「モデルナ製ワクチンはファイザー製と同様に有効だと思う(he believes the Moderna’s vaccine would be as effective as the Pfizer shot.)」と語ったそうです(WebMD2021年6月10日)。

 

(2021年6月20日追記)

Medical Letter誌のCOVID-19ワクチンの一覧表(2021年6月17日時点)です。モデルナのワクチンのδ株に対する臨床効果のデータは出ていませんでした。

 

(2021年6月24日追記)

6月23日に開催された厚労省の第40回新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策アドバイザリーボードで、変異株に対するワクチンの効果に関する一覧表が公表されていました(資料5-1①)。δ株への効果に関しては、Pfizer/BioNTech製は発症で87.9%(95%CI 78.2-93.2)、AstraZeneca製は発症で59.8%(95%CI 28.9-77.3)と書かれていました(引用文献は前の記事(くすり×リテラシー2021年6月19日)で紹介したmedRxiv. 2021.05.22.21257658)。Moderna製は「不明」でした。