東京オリンピックを1週間後(!)に控え、東京都を中心に新型コロナウイルスの感染者(正確には検査陽性者数です!)が増えていることから、早くも「第五波」(朝日2021年7月14日)が来つつあると恐れられています。

 

でもそれは「正しく恐れる」(くすり×リテラシー2020年9月19日9月23日2021年5月19日)とはちょっと違うんじゃないかと思います。直近のデータ(東洋経済のがいちばん見やすい)を見ると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症者数や死亡者数(=COVID-19の真のアウトカム)はともに、5月末くらいからずっと減り続けているのです。重症化・死亡リスクの高い高齢者の発症が減っていることが大きいのではないかと思います。

 

ちなみに国の発表(内閣官房新型コロナワクチンについて2021年7月15日閲覧)によると、COVID-19ワクチンはこれまでに約6500万回接種され、65歳以上の高齢者に限れば、1回以上接種した人が79.3%、2回接種を完了した人が52.2%に上ります(全体ではそれぞれ31.6%、19.7%)。米国や英国に比べれば確かに遅れているけれど、当初の予想よりは進んでいるといえます。もっとも、そのためワクチンの供給が間に合わなくなり、自治体の集団接種の予約がいったん中断されてしまいましたが…。

 

英国では足元で感染者数が増えていても、19日に市民に課していた行動規制(集会の制限や在宅勤務推奨勧告など)を大幅に緩和します。「感染者に比べ入院患者や死者の増加がはるかに緩やかで、ワクチン接種拡大の効果が如実に表れているため」(JETRO2021年7月6日)という判断です。ボリス・ジョンソン首相は声明で「われわれはウイルスと共存することを学び始めている」と指摘した上で、「今後は法律による強制より、確かな情報に基づく個人の判断が重要だ(Enable the public to make informed decisions through guidance, rather than laws)」(GOV.UK2021年7月12日 「COVID-19 Response: Summer 2021」)と発言しています。

 

(2021年7月19日追記)

19日からの規制緩和についてBBCで報道されました(BBC2021年7月19日)。記事によればこの緩和により、現状では1日5万人の感染者が、夏の終わりには20万人に達すると予測されているそうです(日本なら、この数字を見て規制緩和なんてもってのほかという意見が大半を占めるでしょう)。それでも、ワクチン接種完了者が7割に達しているため、入院、重症者、死者数は少なくなる見込みです。冬場の乾燥した時期にウイルスが飛散しやすいことを考えても、ジョンソン首相は「(夏場の)今やらないでいつやるの?(If we don't do it now we've got to ask ourselves, when will we ever do it?)」とコメントしています。もっとも、ウイルスが根絶したわけではないので、規制緩和は注意深くする必要がありますし、ジョンソン首相自身も濃厚接触者として自主隔離中です(読売2021年7月18日)。