9月に入って、厚生労働省は2020-2021シーズンのインフルエンザの発生状況の発表を始めました。令和2年第36週(8月31日~9月6日)(厚生労働省2020年9月11日)の報告数は3(岐阜、大阪、沖縄で各1、昨年同期は3818)、定点当たり報告数は0.00(昨年同期は0.77)、令和2年第37週(9月7日~9月13日)(厚生労働省2020年9月18日)の報告数は4(千葉2、京都1、兵庫1、昨年同期は5738)、定点当たり報告数は0.00(昨年同期は1.17)でした。ちなみに定点当たり報告数とは、全国約5000のインフルエンザ定点医療機関を受診した患者数を定点医療機関数で割った数値で、1.00を超えると流行入りとされます(塩野義製薬「インフルエンザのヘルプナビ」)。

 

 あくまで現時点での話ではありますが、インフルエンザは昨年に比べて1000分の1以下と激減しています。報道(日経2020年9月15日)ではその理由について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で人々が感染対策をしたり外出を自粛したりしていることや、インバウンドが激減したことを挙げていました。そりゃそうでしょう。外出時は必ずマスクを着け、店に入るときは必ず手をアルコール消毒しているのですから。

 

 一方、COVID-19に関しては発生状況が毎日発表され、NHKでも毎日のようにアナウンサーが減ったとか増えたとか言っています(例、「(東京都で)1日の感染の確認が100人を下回るのは2日連続」NHK2020年9月22日)。しかし、毎週日曜日にPCR検査数が少なく、月曜日に検査陽性者数が少ないことを考えると、日ごとの変化を報道することに特段の意味はありません(PCR検査をたくさんすれば陽性の人も出てくる)。連日の報道には、人々の関心をCOVID-19からそらさない“効果”(?)があるように思えます。厚労省の発表が「検査陽性者数」であり「患者数」ではないことも、人々の恐怖感を高める“効果”がありそうです。

 

 今シーズンはCOVID-19とインフルエンザの同時流行が想定されており(厚労省事務連絡2020年9月4日)、COVID-19とインフルエンザを「正しく恐れる」(くすり×リテラシー2020年9月19日)ためにも、今後はCOVID-19もインフルエンザと同じ形式で(くすり×リテラシー2020年9月11日)週当たりの患者数を公表し、インフルエンザと比較できるようにすればよいのでは?

 

(2020年9月28日追記)

 令和2年第38週(9月14日~9月20日)(厚生労働省2020年9月28日)の報告数は4(大阪、沖縄で各2、昨年同期は5716)、定点当たり報告数は0.00(昨年同期は1.16)でした。

 

(2020年10月12日追記)

 2020/2021シーズンのインフルエンザの発生状況は、厚労省が毎週発表しています。10月9日時点で流行のきざしはありません。