もう1年以上、毎日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規陽性者数や死亡者数が報道されています。最新(2021年5月18日時点)の集計では死亡者数は1万1591名(厚生労働省)です。COVID-19による死亡が最初に報告(東洋経済の新型コロナサイトでは2020年2月21日に1例目がカウントされている)されてからの累計ですから、約15カ月間の死亡者数になります。

 

COVID-19の死亡者については、昨年6月の厚労省の事務連絡(厚生労働省2020年6月18日)に「厳密な死因を問いません。新型コロナウイルス感染症の陽性者であって、入院中や療養中に亡くなった方については、都道府県等において公表するとともに、厚生労働省への報告を行うようお願いいたします」と書かれており、必ずしもCOVID-19を原因とする死亡とは限りません。がんや心臓病の悪化で死亡した人でも、その人が新型コロナの検査陽性者なら、COVID-19の死亡者としてカウントされる仕組みです。そのため、上記の1万1591名という数字は、期間(15カ月→12カ月)の点でも死因の点でも、ある程度(どの程度かは分かりませんが)差し引いて考える必要があります。

 

一方で、今のところの最新である令和元年(2019年)人口動態統計(確定数)の概況(2019年1月1日から12月31日、つまりCOVID-19前)によると、1年間の死亡者数は138万1093人。死因トップ10は順に、悪性新生物(腫瘍)37万6425人、心疾患20万7714人、老衰12万1863人、脳血管疾患10万6552人、肺炎9万5518人、誤嚥性肺炎4万385人、不慮の事故3万9184人、腎不全2万6644人、血管性等の認知症2万1394人、アルツハイマー病2万730人でした(第6表)。また、COVID-19が流行した2020年1年間の自殺者数は2万1081人(厚労省・警察庁「令和2年の自殺の現況」くすり×リテラシー2021年3月19日)と発表されています。単純に比較すると、COVID-19の死亡者は、がんや心臓病による死亡者と比べればとても少なく、自殺者と比べても半数程度にすぎません。

 

また、厚労省の研究班が提供する「日本の超過および過少死亡数ダッシュボード」によれば、日本ではCOVID-19が流行した2020年に超過死亡は見られていません(予測の上限を1度も超えていない)。

 

COVID-19を“正しく恐れる”(くすり×リテラシー2020年9月19日9月23日11月12日)意味でも、死因別の死亡者数(≒その死因のインパクト)を比較して捉えることが大事だと思います。