日本でも徐々に従来株からの置き換わりが進んでいる(感染研2021年7月17日)インド(デルタ)株に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果に関して、英国の研究が7月21日にNEJMに発表されました(NEJM published July 21, 2021. DOI: 10.1056/NEJMoa2108891)。以前の記事(くすり×リテラシー2021年6月19日)で紹介したプレプリントが約2カ月で論文化されました。

 

メインの分析は、デルタ株が流行している時期に、「検査陰性症例対照デザイン」(BMJ. 2021; 373: n1088.)で行われました。このデザインについてはまだよく理解できてません(!)が、症例は何らかの症状により医療機関を受診してコロナ検査陽性が判明した人、対照は同じ状況で受診して検査陰性だった人です。症例と対照の両方のワクチン接種歴を調べ、ワクチン接種済みの人では検査陽性の割合が低かったことを示し、そこからワクチンの有効率を推定するという考え方のようです。

 

結果は以下です。インド株に対する有効率は、2回接種の場合、BNT162b2は88.0%、ChAdOx1 nCoV-19は67.0%で、アルファ株よりは少し下がりますが効果はあるという結果でした。プレプリント段階の結果と数値が少しずれていますが、だいたい同じです。

 

(論文Table2)        英国(アルファ)株            インド(デルタ)株

            対照  症例 症例/対照比 有効率(%)  症例 症例/対照比  有効率(%)

ワクチン非接種   96371 7313 0.076    Reference    4043  0.042     Reference

 

BNT162b2(Pfizer)

1回接種       8641  450  0.052   47.5(41.6-52.8)  137  0.016  35.6(22.7-46.4) 

2回接種       15749  49  0.003   93.7(91.6-95.3)  122  0.008  88.0(85.3-90.1)

 

ChAdOx1 nCoV-19

(AstraZeneca)

1回接種       42829 1776  0.041  48.7(45.2-51.9)  1356  0.032  30.0(24.3-35.3)

2回接種       8244   94  0.011  74.5(68.4-79.4)  218  0.026  67.0(61.3-71.8)

     

この論文に関するエディトリアル(NEJM published July 21, 2021. DOI: 10.1056/NEJMe2110605)では、検査陰性症例対照研究は、人々の受療行動によるバイアスの影響は少なくないが「2種類のワクチンは使用方法、使用状況、使用する年齢層、使用時期が異なっており、比較を困難にしている(the two vaccines were used in different ways over time and were available in different health care settings and in different age groups at different times, thus making valid comparison difficult.)」と述べており、単純に結果の数値でもって比較するのは慎重にした方がよさそうです。