思い出した出来事(2) | 梢の先に・・・ 

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  美しいものは、あなたの中に。
  マンダラアートからのメッセージをどうぞ♪

その出来事は、思い出してみると「確かにあった」のに

ずっと、すっかり、忘れていたものでした。



私が幼稚園の年中(5歳)だった頃です。


2年保育だったので、入園してようやく環境にも慣れ、

お友達も増え、楽しく過ごしていたある日のことでした。


お昼休み、園庭は

遊びまわる年中と年長の園児でいっぱいです。


私は、友達と一緒に砂遊びをしていました。


何か足りないモノがあり、私は

「じゃあ、取りに行って来るね!!」と立ち上がり

駈け出しました。


そのとき、横から勢いよく走ってきた男の子と

激しくぶつかったのです。


余程速く走っていたのでしょう。

ガツン!!という強い衝撃とともに、

私もその男の子も吹っ飛びました。


尻もちをついて、手にすり傷が出来た私が

ふと顔を上げると、そこには鼻血を出して、

ものすごい顔で怒っている男の子がいました。


名札を見ると、年長の、大柄な男の子でした。



「お前のせいで、血ぃ出たやんか!!

 先生に言いつけてやる!!

 こんなことをして、ただで済むと思うな!!

 お前が悪いんやぞ!!!

 わかったな!!」



私を指さしてそう叫ぶと、友達と去って行きました。


(細かくは覚えていませんが、だいだいこういう内容でしたあせる


それからどうしたのかは、覚えていません。


ですが、次の日から私は、

お昼休みに園庭へ、一歩も出られなくなりました。



   クローバー



「自分はどれ程、先生から叱られるのだろう」


「次にあの男の子に会ったら、

 どんな酷いことをされるのだろう」


そう思うと、心が震えました。


毎日、先生から何か言われるのではないかと

怯えました。


年長と年中、両方の園児が一緒になって

園庭で遊ぶお昼休みには、

私は教室で、本を読むようになりました。


クラスの子がみんな外に出て、

たった1人になったときでさえ、そうしていました。


担任の先生が優しく「外で遊ばないの?」と

尋ねて下さっても、首を振って、本に目を落としていました。



そんな毎日は、男の子が卒園するまで続きました。


(結局、先生から叱られることはありませんでした)


年長さんの卒園式の日の、

晴々した気持ちは忘れられません。


「あぁ、やっとこれで、外で遊べる!!キラキラ


園庭へ向けて駈け出したあの瞬間の、

靴の裏のじゃりの感覚まで、はっきり覚えています。



  クローバー



私はこの出来事を、親にも先生にも話せませんでした。


「悪いことをしたのは自分だから、

 責められるのも、酷い目に遭うのも自分なんだ」


と思い込んでいたため、恐くて誰にも言えなかったのです。



大人になった今なら、いや、小学生に成長した私なら、

6歳の男の子の脅し文句など屁とも思わないでしょう。

それどころか、

「そっちもすごい勢いで走ってたやんか!」

「自分より小さい女の子に、何言ってんの!!」

と叱り飛ばしているかもしれません。


ですが、幼稚園というたくさんの子どもの集団に

入ったばかりの5歳の私にとって、

あの男の子の恫喝は

身動きをとらせなくするには十分だったのです。



幼稚園の、年中のときの先生からのお便りには


「本を読むのが好きなお子さんですね」


と書かれていました。


・・・でも本当は、好きでもなんでもなかったのです。





(次の記事では、

 そんな5歳の私に向き合ったお話を書きますね音譜







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