囁きシリーズ。次々と殺される幼馴染たち。幼き日の過ちが引き起こす惨劇。その素性が思い出せない遊び仲間“ノリちゃん”。[??]

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



津久見伸一の転落死は事故として処理された。それを不審に思った弟・翔二はその件を調べ始るうちに、漠然とした不安を伴う、ある記憶が蘇り始める。それは幼き日の兄と、その友人たちが遊んでいる光景。伸一、志郎、克巳、史雄、そしてもう一人。その五人のうち、一人だけどうしても誰なのかわからない人物がいる。その人物は“ノリちゃん”と呼ばれていた。

翔二の記憶の中にある、今では顔も思い出せないノリちゃんは、赤い野球帽を被って、痩せっぽちで、のっぽで、なんとなく動きがぎくしゃくして、兄を含む四人にいじめられていたような印象だった。さらに記憶を辿り、翔二は思い出す。皆で遊んでいた時に、ノリちゃんはトラックに轢かれ、残った子供たちは、その場から逃げ出したのだ。ノリちゃんの生死は思い出せなかった。

伸一に続いて、志郎、克巳、史雄にも死が訪れた。事故でも自殺でもない。間違いなく殺害されたのだった。これはノリちゃんの復讐なのだろうか。



囁きシリーズ・第三作。一応、これで一区切りとのこと。「緋色~」「暗闇~」と同様に、主人公の回想を軸に物語は進んでいく。ミステリ作家らしい、伏線を張り巡らせたサスペンスという点も、これまた同様。ただし、前二作は登場人物や舞台設定がかなり作り物めいた、非日常的で幻想的な物語だったが、それに比べると、本作はごく普通の日常を土台にした事件を描いた物語となっており、眩いばかりの美少女や美少年も、怪しげな儀式や奇妙な死体も出てこない。

「いじめっ子への復讐」というのが、見方によって正しくもあり、誤ってもいる構図。そして最後の犯行、翔二への襲撃は、直接的には他の四人とは異なる動機であるのに、根本的にはどちらも同じ「ノリちゃんの事故」に基づくものであり、どちらも同じく自己保身という動機を伴っているという構造。「ノリちゃん」の正体の意外性と、それを暗示する数々の手がかり。そこらの「本格推理」よりはよほど“フェア”だろうw

とは言え、たとえば「スクーターがなかった」というのはシンプルで、ミステリらしい手がかりではあるのだが、それに読者が気づくのはちょっと厳しいような。(“円盤”にスポットライトがしっかり当たっているのに、その点の注意を怠った僕の言い訳…w) ロジック・パズルとしては、やはり少々緩いか。

ともかく、この三部作はどれも良い出来。異色作であることを予め念頭に置いているなら、館シリーズのファンもあまり不満はないんじゃないだろうか。
囁きシリーズ。山深い地の屋敷に住む美しい兄弟の少年。何か秘密を隠した一家。妙な細工を施された死体。正体不明の“あっちゃん” [??]

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大学生・悠木拓也は卒論を書くために、山里にある伯父の別荘に滞在することとなった。その土地は開発も未だ進んでおらず、幼き日に訪れた頃のまま、変わらぬ様子を示していた。

拓也が久しぶりに訪れた地で知り合った二人の少年、実矢と麻堵はとても美しく、とてもよく似ていた。訊けば兄弟ではあるが、双子ではないという。彼らは、拓也が滞在する別荘の近くの屋敷で暮らしていて、その屋敷の主はとても厳格な父親だった。彼らがふと漏らした「あっちゃん」なる人物については、なぜか彼らの口は重かった。

それがどうしても気になっていた拓也は、調べるうちに、自分がかつて“亜希”という少年に出逢ったことがあると思い出す。ひょっとしたら、その“亜希”こそが“あっちゃん”で、屋敷の屋根裏部屋に幽閉されているのではないか。

ある日、屋敷の住人・雅代がバルコニーから転落死する。そして、いつの間にか死体からはなぜか右手の中指の爪が剥がされていた。

その後、数日前から姿を消していた雅代の息子、克之の死体が発見されるが、なぜか片目が失われていた。それは数ヶ月前に命を落とした家庭教師の髪が切り取られ、持ち去られれていたことと、どこか符合していた。



囁きシリーズ・第二作。トマス・トライオンの恐怖小説で、映画化もされた「悪を呼ぶ少年」を意識して書いたとのこと。作中に登場する“魔法の本”と、スケッチブックに書かれた絵本は、それぞれエラリー・クイーンの「第八の日」と、「Yの悲劇」を想起させるが、それについては、作者は意識しただろうか。

パズラーではないサスペンスながらも、“前作”と同様に、きちんと伏線は張り巡らされ、推理小説として読むこともできる。真相に至る手がかりは、むしろ出しすぎじゃないかというほどに提示されてる。(パズラーではないので、推理というよりは、あくまでも推測に留まるが)

作中で語られ、未解決のままとなっている、双葉山での惨殺事件は、作者がこの後に書く別の作品のネタである。
囁きシリーズ。名門女学園での連続殺人。“魔女”を自称した少女の謎の焼死。主人公の記憶の欠落。学園に広がる恐怖。(「・ω・)「にゃおー [??]

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ある日突然、両親から自分が実の子ではないと知らされた和泉冴子は、伯母に引き取られ、彼女が校長を務める、全寮制の厳格な名門女学園に転校することとなった。編入したクラスでは、圧倒的な存在感を持つ美少女・城崎綾がが大きな影響力を及ぼしているのか、クラスメイトの多くも彼女の振る舞いを模倣しているのではないかと、冴子には感じられた。

高取恵はなんとなく違っていた。「そのクラスでは浮いていた」と言えるのかも知れない。冴子と同室になった彼女は言った。「あたしはね、魔女なのよ」 そんな彼女が、過去にも生徒が焼死したという曰くつきの「開かずの間」で焼死した。まるで火刑に処された魔女のように。

そしてさらに死体は次々と増えることとなった。冴子は不安だった。連続殺人犯がここに潜んでいるかも知れないことも怖ろしかったが、それ以上に怖ろしいこと。己の記憶が一部欠落しているのだ。もしや自分が…?



ゴシック・ホラー・テイストを感じさせるサスペンス。陰惨な事件ながらも、どこか美しく描かれている。ホラー映画の「サスペリア」を意識して書いたという。

本作を含む囁きシリーズは、同作者の館シリーズとは異質なものとして割と知られているが、もしそれを知らず、同傾向のパズラーを期待してしまうと、落胆もあるだろう。

論理的に謎を推理・解明していく物語ではないが、伏線はしっかり張り巡らされている。焼死した恵を発見する場面や、何度も挿入される「姉妹」の回想などは、いかにも綾辻行人らしい。叙述トリックとまでは言えないが、それに近い記述が見られる。

ただし、伯母が冴子をこの学園に編入させる危険性を認識した上で、おそらく大丈夫だろうと最終判断を下したのは、やはり無理があるんじゃないだろうか。何せ一日二日のことではなく、何年間も延々と警戒せねばならなくなるのだ。別の学校に編入させれば、そんなことを思い悩む必要もないのだから、多少の支障があろうとも、こちらを選択するほうが自然だろう。これを説明する部分は、どうも作者の言い訳めいたもののように思えてならない。