囁きシリーズ。山深い地の屋敷に住む美しい兄弟の少年。何か秘密を隠した一家。妙な細工を施された死体。正体不明の“あっちゃん” [??]

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



大学生・悠木拓也は卒論を書くために、山里にある伯父の別荘に滞在することとなった。その土地は開発も未だ進んでおらず、幼き日に訪れた頃のまま、変わらぬ様子を示していた。

拓也が久しぶりに訪れた地で知り合った二人の少年、実矢と麻堵はとても美しく、とてもよく似ていた。訊けば兄弟ではあるが、双子ではないという。彼らは、拓也が滞在する別荘の近くの屋敷で暮らしていて、その屋敷の主はとても厳格な父親だった。彼らがふと漏らした「あっちゃん」なる人物については、なぜか彼らの口は重かった。

それがどうしても気になっていた拓也は、調べるうちに、自分がかつて“亜希”という少年に出逢ったことがあると思い出す。ひょっとしたら、その“亜希”こそが“あっちゃん”で、屋敷の屋根裏部屋に幽閉されているのではないか。

ある日、屋敷の住人・雅代がバルコニーから転落死する。そして、いつの間にか死体からはなぜか右手の中指の爪が剥がされていた。

その後、数日前から姿を消していた雅代の息子、克之の死体が発見されるが、なぜか片目が失われていた。それは数ヶ月前に命を落とした家庭教師の髪が切り取られ、持ち去られれていたことと、どこか符合していた。



囁きシリーズ・第二作。トマス・トライオンの恐怖小説で、映画化もされた「悪を呼ぶ少年」を意識して書いたとのこと。作中に登場する“魔法の本”と、スケッチブックに書かれた絵本は、それぞれエラリー・クイーンの「第八の日」と、「Yの悲劇」を想起させるが、それについては、作者は意識しただろうか。

パズラーではないサスペンスながらも、“前作”と同様に、きちんと伏線は張り巡らされ、推理小説として読むこともできる。真相に至る手がかりは、むしろ出しすぎじゃないかというほどに提示されてる。(パズラーではないので、推理というよりは、あくまでも推測に留まるが)

作中で語られ、未解決のままとなっている、双葉山での惨殺事件は、作者がこの後に書く別の作品のネタである。