高校での密室殺人。移動させられた机。青春小説。[???]

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



いつものように一番乗りしようと、高校生・梶川笙子は教室の扉に手を掛けた。引き違い戸は開かなかった。

いくら引いても開かぬ扉をガタガタさせていると、担任・大神龍彦がやって来た。事情を聞いた大神が力任せにこじ開けると、中には中町圭介の死体があった。乾いた血の海の中心に倒れたクラスメートを見た笙子は気を失った。

教室は、窓には鍵が掛かっており、中町の遺書らしきものも残されていた。そして、扉は内側からガムテープで固定されていたようであった。遺書がコピーされた紙であるのは少々不自然ではあるが、状況的には自殺と見てもさほど不思議はない。ただし、一つだけどうしても奇妙な点があった。教室内の机と椅子がすべてなくなっていた。



…という謎の解明よりも何よりも、とにかく文章が読みづらい。段落ごとに副題が付けられてる(文庫版の約350ページで150近くある)が、これが単なる意匠とはつゆ知らず、謎解きのための何らかの意味があるのだろうと意識しつつ読んでたら、非常に疲れ、それが無駄な努力と知り、さらに疲れた。(読了後には、目次を見るだけでお目当ての内容が見つけやすいので、このような雑文を書く際には便利。すべてのミステリがこうなってるなら、結構良いかも)

そして、登場人物の言動がやたらと芝居掛かっている。机と椅子は外界の象徴である、云々などと、奇妙な教室の状況についての推論を、普段とは異なる大仰な言葉遣いで大真面目に披露する場面などは、その最たるもの。ほかにも、意味ありげで、結局何の意味もない喩えとか、赤い靴症候群とか、もううんざり。そんなのも相まって、文章が演劇の台本みたいに見えてくる。

物語は主に、そのクラスの生徒・工藤順也の視点から描かれる。彼は探偵役で、捜査に訪れた森警部に協力しつつ、独自にも調査を進めていくのだが、警部への対抗心を燃やし、相手にすべての情報は明かさない。だいたい、初対面のいち高校生に自由に調べさせてるってところからして、不自然すぎる。

そんなふうに、大量におかしなところがあるので、どこかの段落に劇中劇でも紛れ込ませてるんじゃないかとか、一人称の人物が別人になってるんじゃないかとか、そこに何らかの読者へ向けられたトリックがあるのかと警戒しつつ読んだから、本当に疲れた。

本作は、未完の状態での江戸川乱歩賞応募作が編集者の目に留まり、その後に手を入れ、完成したものらしいが、それでもまだかなり荒い。最後の、多重解決も処理の仕方が稚拙と言わざるを得ないし、いまいちすっきりせず、カタルシスも得られない。作者の志向からして、このモヤモヤ感はおそらく狙ってのものじゃないだろう。

消えた机という状況は謎めいてるし、その真相も悪くない。アレの裏が繋がっているというのは、ちょっと卑怯だが。(トリックを実行する際のマズい点に後から気づいて、作者が辻褄合わせたんじゃないかなぁ) あと、時間的に可能なのかということと、元々は同じ物とはいえ、使用環境の違いから、視認できるくらいの差は出てしまうんじゃないだろうか。

教室の扉が開かなかった場面には無理があるような。硬い鉄骨じゃあるまいし、さすがに気づくでしょ。そもそも、見張りすらしないとは…。

あまりにも偶然が絡み合いすぎでもある。結局、何名がこの犯行に関わってるんだ?という感じ。
“チャーリー・チャン”シリーズ。三重失踪事件が絡む殺人事件。(「・ω・)「にゃおー [??]

チャーリー・チャン:ホノルル警察の部長刑事
ジューン・V・マロー:サンフランシスコの次席検事
トム・フラネリー:サンフランシスコ警察本部の警部
フレデリック・ブルース卿:元ロンドン警視庁の副総監
バリー・カーク:カーク財団の若い当主
パラダイス:バリーの執事
ドースン・カーク夫人:バリーの祖母
タッパーブロック夫人:ドースンの秘書
キャリック・エンダビー:旅行会社社員
アイリーン・エンダビー:キャリックの妻
グロリア・ガーランド:舞台女優
ジョン・ビーサム大佐:アジア探検家
リー・グン:ビーサム大佐の助手
イヴ・デュランド:15年前にインドで失踪
エリック・デュランド:イヴの夫
マリー・ランテルム:11年前にニースで失踪した女優
ジェニー・ジェローム:7年前にニューヨークで失踪したモデル女優
グレイス・レーン:カーク・ビルのエレベーター係
ビル・ランキン:グローブ紙の記者
ダフ:ロンドン警視庁警部

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



米国はサンフランシスコのビルの一室で、フレデリック・ブルース卿が殺された。倒れていた故人の肘の辺りには、クラブの年鑑が置かれていた。かつては英国で多くの捜査陣を率いていた彼は既に現役を退いていたが、英国軍人・エリック・デュランドの妻であるイヴが15年前に消え失せた事件は未だ独自に調査しており、その大きな手がかりを掴んでいたように思われた。

奇妙な点があった。彼は殺される直前に、異国風のビロードのスリッパを履いていたのだが、なぜか死体は靴下しか履いていなかった。それは彼が語っていた、ロンドンでの未解決事件の一つ、ビロードのチャイナ靴を履いた姿で発見された、ヒラリー・ゴルト殺害事件を暗示させた。

次席検事・ジューン・V・マローに強く懇願され、結局ブルース卿殺害事件を捜査することとなった、ホノルル警察のチャーリー・チャン。その過程で、イヴ・デュランド失踪事件だけではなく、別の失踪事件も捜査線上に浮かんでくる。マリー・ランテルムとジェニー・ジェロームの失踪は、それぞれの場所こそ異なれど、何らかの符号を匂わせていた。



派手なトリックが仕掛けられているわけでもなく、ビロード靴という小道具も効果的に使われているとは言いがたい。クラブの年鑑は、ダイイング・メッセージと言うのもためらわれるほど、材料としては弱い。普通なら真っ先にそのクラブへ行って、被害者との繋がりくらいは調べそうなものだが、それを行なうのは終盤も終盤。しかもちょっと訪問しただけで、その年鑑が置かれていた意味があっさりと解明されるのだ。名探偵であるはずのチャンが、なぜこんな終盤までそれに気づかず、放置してるのかと問いたい。

そんなこんなで、分量の割には、ミステリとしては物足りなさもあるが、物語は、序盤こそもたつきも感じられつつも、中盤からは細かい謎が解明されていき、動きが感じられるので、どんどんページが進んでいく。だがそのようなネタの小出しによって、最後のカタルシスは弱まっている。

「推理作家お手のものの精巧な科学機器」などは、実際の事件解決にはあまり役立たず、「英知と努力と幸運」こそ重要というくだりは、本作が発表された1928年という時代の空気を感じさせる。今の推理小説のイメージは、その科学によるデータを重視する警察をむしろあざ笑うかのように、己の頭脳を重視した探偵が事件を解決するものだもの。科学知識偏重の作品を志向する作者なんて少ないどころか、ホンカク推理なんてものの多くは、そのような小難しい科学捜査をいかに排除するかに腐心してる部分も大きいように思える。(犯人が犯罪現場において自身の痕跡を、現在の科学捜査に捉えられないようにすることがいかに難しくなったか)

解決編で語られる、イヴの身の上話や、ジョン・ビーサム大佐の言動なんてのも、まるでホームズ物にありそうなロマンスで、これもまた当時の空気だろうw

チャンは、「虎は蝿にも身を屈める」「象が蝶々に不賛成を唱える」といった、へりくだっているのか、無礼なのか、判断が微妙な言い回しを含め、シナの格言らしきものをやたらと使う。慣れ親しんだ者ならいざ知らず、本作中では大半が初対面に近い人物ばかりなのに、誰もツッコんだり、いらついたりしないのが不思議w

事件の捜査をする気はないと、帰郷しようとするチャンに、マローが必死に翻意を迫る場面は違和感がある。いくら高名なチャンであろうとも、まだ出逢ったばかりで、その実力を直接知るわけでもないマローが、しかもまだ捜査が始まったばかり、行き詰まってるわけでもない段階で、そこまで固執するのはどうも不自然。

謎の計算式は、解決編の前にもう少し掘り下げてほしかった。何のヒントも与えられず、いきなり解答を出される。この計算式について、読者が正解を導くのはまず無理だろう。

後にデュランド少佐と平然と対面するグレイス・レーンが、彼との対面を避けるかのように強引に逃亡したのはちょっと腑に落ちない。単に、焦りからの行動なのだろうか。

警察の手落ちが目立つかな。警戒して、周囲を固めていたはずなのに、レーンには一度は逃亡されている。そしてこれまた警戒していたであろうに、一旦は取り押さえていたはずの犯人に隙を突かれ、屋上から飛び降りさせてしまう始末。
“ジョーダン・ポティート”シリーズ。土地開発を巡る争い。連続爆発事件。[?]

ジョーダン・ポティート:ミラボー図書館館長
アン:ジョーダンの母
アーリーン:ジョーダンの姉
マーク:アーリーンの息子
キャンディス・タリー:ジョーダンの助手
ボブ・ドン・ガーツ:ジョーダンの実父
グレッチェン:ボブの妻
ビッドウィル・ポティート:ジョーダンの叔父, 弁護士
クロー・バターフィールド:アンの付き添い看護婦
パーカー・ラウダーミルク:ミラボー町長
ディー:パーカーの妻
ジェニー:パーカーの娘
トゥワイラ・オデル:元高校教師
ユーラ・メイ・クリフ:ロマンス小説作家
チェット・ブラントン:ホテルのオーナー
タイニー・パーマリー:ジョーダンの小学生時代の同級生
フレディ・ジャックシル:不動産業者
グレッグ・キャラハン:土地開発業者
ローナ・ウィアシンスキー:グレッグの部下, ジョーダンの元恋人
ニーナ・エルナンデス:環境保護活動家
ビリー・レイ・バメル:地方検事補
ジューンバッグ・モンクリーフ:警察署長

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



ミラボーは退屈な田舎町。道具小屋や犬小屋が爆弾で吹っ飛ばされる事件はとても珍しいものだった。そんな町だから、ミラボー図書館館長・ジョーダン・ポティートが新聞を取りに行ったときに、視界に入る郵便受けが次々と爆発していく光景も、とても珍しいものであったことも間違いない。

その事件とはまた別に、町には騒動が持ち上がっていた。大規模な土地開発の話だった。町にやって来たのは、開発を進めているイントラグローバル開発のグレッグ・キャラハンと、それを阻止せんとする、環境保護活動家・ニーナ・エルナンデス。当然のことながら、町の住人の中には開発に賛成する者も、反対する者もあり、簡単に決着しそうもなかった。

しかし、意外な形で、その騒動も収束へと向かい始めた。グレッグが町のホテルの一室にて殺害されたことによって。そして、さらにそのホテルでの不運は続く。連続爆破事件が、そのホテルにも及んだのだ。それは、それまでの爆破事件とは違い、もはや愉快犯として片付けられるものではなかった。爆発の中心部に近い所には、バラバラに吹っ飛ばされた死体があった。



ジョーダン・ポティート・シリーズの第二作。前作は、被害者を恐喝者と設定することで、嘘つきだらけの関係者の秘密をひたすら暴くことに筆を費やすという、分量を水増ししたミステリだったが、その傾向は本作でも同様。本筋とは無関係に、登場人物は怪しげに振舞い、それが事件とは無関係であることを知るためだけに、読者はページを何度もめくらねばならず、特に意味もなく、ロマンスに付き合わされる。やはり今回もジョーダンは犯人に銃を突きつけられるまでは真相に辿りつけず、と言うか、事件の解明に彼のそれまでの行動は必要だったの? ミステリとして分類されるには違いないだろうが、どちらかと言えば、その印象は冒険小説に近い。

ミステリとしてのツッコミを入れること自体が意味ないと思うけど、とりあえずその視点で真っ先に引っ掛かりを感じてしまうのが、イントラグローバル開発が、これまでにもいくつかひどい開発を行なっており、ニーナはその反対活動して、毎回負けているという話。この件について調べた形跡がまったくない。いくらなんでも、町の住人も警察も無邪気すぎる。

グレッグが殺された直後に、ある人物(a)が部屋を訪れ、その死体を見て逃げた、となっているが、そのときに犯人はどこに居たのか? その後、偶然にも目を覚まし、部屋を訪れた、ローナ・ウィアシンスキーは犯人に襲われ、クローゼットに押し込まれている。殺害直後に立ち去った犯人が、なぜかまた現場に戻っていたのだろうか。しかし彼女は、ドアが少し開いていて、部屋の明かりが点いていなかったことを確認している。仮にaが立ち去った後に犯人が部屋に戻り、証拠隠滅や偽装工作を行なっていたとすると、ドアが開いていたのは、単に犯人の不注意だったと片付けるには抵抗がある。

となると、犯人は部屋に隠れていて、aはそれに気づかなかった、という可能性が高い。もしそうなら、第一の訪問者・aに対しては、おとなしく身を潜めるのみだった犯人が、第二の訪問者・ローナに対しては、即座に行動に出たことは、あり得ないことではないが、違和感を覚える。これはあくまでも偶発的・突発的な状況であり、計画されたものではないからだ。

この犯人は、「姿を消すのはお手のもの」で、今回も姿を消すつもりでいる。しかし、姿を消せば、この殺人事件についての容疑は濃くなるだろう。他人を犯人に見せかけようと工作してるが、それは一時凌ぎを想定していると見るほかない。犯人がこの件で得た額は、決して一生遊んで暮らせるほどのものではなく、この後もこれまでと同様の犯罪に手を染めるつもりだったと推察される。しかし、これだけの大事件の容疑者とされてしまったら、もはやそれは厳しい。どうも犯人の考え方の軸が、しっかりと設定できていないように思える。

グレッグのちょっとした“小遣い稼ぎ”もなぁ。ビッグ・ビジネスの最中に、そのような、トラブルを負いかねない行動するかなぁ?